その日は娘の学校が休みで、母と三人で買い物にでていた。
そして夕方、母が「おばあちゃんちに行ってくるわ」と出かけて行き、
娘と二人で家でテレビを見ていたら、携帯が鳴った。
発信者は母で、何か忘れ物でもしたのかな?と思いながら
電話にでた。
「もしもし?」
『……もしもし?』
「どないしたん?何か忘れ物でもした?」
『あのなあ……今おばあちゃんのとこに来たら、
おばあちゃんが風呂場で倒れてるねん。
……お母さん、どうしたらいい?』
一瞬、母の言葉が飲み込めなかった。
今考えたら呆然としていただけなんだと思うけど、あまりに母の声が
平坦で、聞き間違いかと思った。
それでもすぐに何とか立ち直り
「どうしたらもこうしたらもないわ!今すぐ救急車呼んで!
あたしもすぐに行くから!!」
と叫んで、電話を切るなり娘をせかして自転車でダッシュで
おばあちゃんちへ向かった。
火事場の馬鹿力とはよく言ったもので、普段の半分の時間で
駆け抜けたんだと思う。
あたしが着いたのと救急車が来たのがほぼ同時で、こぎすぎて
がくがくになった足を引きずりながら救急車に近寄った。
「たぶん、救急車呼んだのうちだと思います!」
そうして救急隊員の人を案内しておばあちゃんちに入ると、
廊下には呆然とした顔のお母さんが立っていた。
「おばあちゃんは!?」
「そこにおる……」
指差された風呂場を振り返ると、そこには仰向けで横たわる
おばあちゃんの姿があった。
