馬マルハダカ

馬マルハダカ

競馬ファン誰でも簡単に勝馬を予想する事が出来るプログラムを作りました。
馬の過去の実績をポイント化して可視化することで、今後の勝率を予測します。

TSU / 超SFミステリー大作
 

前説

ここから先は、
対話が成立しない場所で行われる「会話」である。

言葉は届かず、
理解は共有されず、
それでもなお、意味だけが交差する。

これは説得ではない。
交渉でも、告白でもない。

非対称のまま行われる、確定前最後の対話。

※ 誰の言葉が正しいかを考える必要はありません。
ここでは、正しさは発言権を持たない。

◆ 第23章:ZPF下層

https://ideelart.com/cdn/shop/articles/360_1580304548mO6pX_1_aa165156-5f3b-4779-9e1e-75dda8495709-6166259.jpg?v=1761848932&width=2048
足を踏み出した瞬間、
海斗は「重さ」を失った。

落下ではない。
浮遊でもない。
概念が剥がれ落ちる感覚だった。

そこが、ZPF下層だった。
空間は存在しているが、距離は存在しない。
時間は流れているが、順序がない。

世界が、意味の最小単位まで分解されている。

「来たか」

声ではなかった。
しかし、確かに“呼ばれた”と分かった。

海斗の前に、形の定まらない存在があった。
人型に近いが、人ではない。
光でも、影でもない。

反物質世界側の首謀者。

その存在は、海斗を観測していない。
評価も、警戒もしていない。
ただ、結果としてそこに居合わせているだけだ。

「お前は、理解していない」

それは非難ではなかった。
事実の提示ですらない。
単なる“前提条件”だった。

海斗は答えない。
答える言葉を、まだ持っていないからだ。

「理解しないまま、ここまで来た存在は初めてではない」
「だが、ここまで“壊さずに”来た存在は稀だ」

ZPF下層が、わずかに歪む。
それは警告ではない。
世界が、会話を許容してしまっている兆候だった。

海斗は、ようやく口を開いた。

「……ミラは、戻れるのか」

問いは単純だった。
しかし、この場所では最も危険な問いだった。

首謀者は、沈黙する。
沈黙が“計算”として処理される。

「戻る、という定義次第だ」

その言葉で、海斗は悟る。
ここでは、救済は形式の問題に過ぎない。

それでも、海斗は一歩進んだ。
距離はない。
だが、意味の差分が、確かに縮まった。

◆ 第24章:非対称対話

https://assets.st-note.com/production/uploads/images/205090328/7e5abc5d3ae3482a110340aba474e635.png
「君は、こちら側の論理を理解しない」
首謀者は続ける。

「我々は、世界を守っている」
「消去は選択ではない。構造だ」

海斗は頷かない。
否定もしない。
ただ、聞いている。

それが、最大の異物だった。

「理解しない存在は、通常ここで排除される」
「だが君は、まだ残っている」

ZPF下層が、再び揺れる。
0.3秒。
確定が遅れる。

首謀者は、初めて“違和感”を示した。

「……なぜだ」

海斗は答える。
理屈ではない。
思想でもない。

「分からないからだ」

その瞬間、
ZPF下層の計算が一斉に停止した。

理解されない発言。
正当化されない行動。
それは、この場所に存在しないはずのノイズ。

「私は、正しいことを言えない」
「でも、戻れないと決めた人を、置いていけない」

首謀者は、長い沈黙に入る。
それは敗北ではない。
初めての“葛藤”だった。

ZPF下層が、わずかに再構成される。
消去予定だった領域が、保留に変わる。

「……そうか」

その一言には、
肯定も否定も含まれていなかった。

だが、海斗は分かる。
世界が、初めて人間側に揺れたことを。

その瞬間、
遠くでミラのいるWorld βが、微かに応答する。

非対称の対話は、成立しなかった。
だが――

不可逆だったはずの確定が、停止した。

(つづく)