昼と夜、覚醒と睡眠、
コインの裏と表のようなもので、
両者はバラバラに分けて考えられません。
昼間元気に活動している人ほど、
夜ぐっすり眠れます。
言い方を変えると、
ぐっすり眠れないと疲労から
きちんと回復しないので、
翌日もまた元気に活動できないのです。
動物では、一般的に基礎代謝量が高い種ほど、
睡眠時間が長くなる傾向にあります。
基礎代謝量とは、
空腹時に静かに横になっている時でも
体が消費するエネルギー代謝量のことです。
ろくに動かずに一日中草を食べている牛は
基礎代謝量が低く、睡眠時間は3時間ほどです。
いつもちょこまか動き回って
エサを探しているねずみは基礎代謝量が高く、
睡眠時間は11時間前後にも達します。
人間でも基礎代謝量が高いほど、
睡眠時間は長くなります。
基礎代謝量は一日に消費する
総カロリーの70%前後を占めます。
その40%近くを担うのは筋肉で、
基礎代謝量は筋肉量に比例します。
基礎代謝量が高い=筋肉量も多いので、
「筋肉量が多いほど睡眠時間が長い」と
言い換えることも可能です。
筋肉は体を駆動するエンジンと言えます。
筋肉量が多いのは昼間に活発に動いている証だから、
それだけ長い睡眠が必要なのです。
運動不足だと30代以降は筋肉が年1%ずつ減り、
基礎代謝量も低下します。
運動で筋肉と基礎代謝量を維持することは、
質の高い睡眠の前提条件でもあるのです。
逆に、眠りは運動→筋肉増量による
基礎代謝量アップをアシストします。
入眠直後の深い眠り(徐波睡眠)の時に、
成長ホルモンが分泌され、それが日中摂取した
タンパク質から筋肉のタンパク質を合成する
過程を手助けするのです。
ただ気をつけて欲しいのが、
適度な運動は良質な睡眠へと誘いますが、
運動が安眠を妨げることもあるということです。
まず気をつけたいのは、
運動を行うタイミングです。
仕事帰りにジムに通ったり、
家に帰ってから近所をジョギングする人
も多いと思います。
しかし、夕方以降は本来眠りに備える時間帯です。
メラトニンの分泌が増えて日中高かった
体温が下がり始めます。
体温の低下は眠りを誘発しますが、
夜運動すると体温が上昇します。
入浴のように一時的な上昇なら
その後体温は低下に転じるのでプラスなのですが、
激しい運動では体温が高い状態が続いてマイナスと
なります。
また、体内環境は交感神経と副交感神経からなる
自律神経でコントロールされており、
夕方以降は心身を休息へ導く副交感神経が優位になります。
ところが、運動をすると体を活動的にセットする
交感神経が刺激されて優位になってしまいます。
運動を終えてもしばらくは交感神経が高ぶったままで
なかなか副交感神経優位に切り替わらない。
その結果、起床時刻は変わらないのに、
入眠する時間がだんだん遅くなり、
睡眠不足で日中耐えられない眠気に
悩まされるケースもあります。
運動が眠りに与える影響にも個人差があります。
寝床につく寸前まで運動しても、
すんなり眠れる人もいるかもしれませんが
夜の運動を始めてから十分な睡眠が
とれなくなったという自覚があるのなら
夕方以降の激しい運動は控えた方が賢明です。
稲葉敦志