アナツバメ類のうちジャワアナツバメなど数種の巣である。
広東料理の高級食材とされる。

人家の軒先等に一般的に見られるモノは、唾液だけでなく、泥や枯れ草によって作られるので食用には適さないが、アナツバメの巣は世界中で高い人気を誇る食材となっており、スープの具やデザートの素材・飾り付けとして用いられる。

中華料理の中でも、特に広東料理で利用される。
元末明初頃に中華世界に知られるようになり、清代になるとフカヒレや干し鮑と並ぶ高級中華食材として珍重されるようになった。燕の巣が出る宴席は「燕菜席」と呼ばれ、満漢全席に次いで格式の高い宴席となっている。
2013年、中国政府は綱紀粛正の一環として、接待の宴席に高級料理を用いることを禁じた。この際、高級食材の例としてフカヒレと共に燕の巣が挙がるなど、21世紀の現代に於いても贅沢品の代表格であることが窺える。

日本に於いても、江戸時代初期の料理書『料理物語』に、【燕巣(えんず)】という名で記載されており、吸い物や刺身の褄として用いられていた。日本では生産されておらず、交易によって輸入されたものであり、中国同様に貴重な食材である。

独特のゼリー状の食感が特徴である。
タンパク質と多糖類が結合したムチンが主成分であり、タンパク質と共に、糖質の一種であるシアル酸を多く含んでいる。また、インターロイキン-6や上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)様のサイトカインが多種含まれることが近年わかってきた。
古くから美容と健康に良いとされている漢方食材であり、清の西太后も連日食したと伝えられている。

巣によって羽毛等の巣材を比較的多く含むものから、全くと言っていいほど含まないものまで差がある。混ざり物などが少なく作られて間もない物が重宝され高値がつきやすい。
調理に際しては、湯で柔らかく戻してから、ピンセット等で丁寧に羽毛等を除去する。

見た目の立派さが価格に影響することもあり、乾燥した巣の表面に糊を塗布して外観を整える手法も広く行われている。水に溶いた巣の他、海藻・豚皮・ラード・植物樹脂等が糊として用いられるケースがある。

白さを強調する為に薬品によって漂白された燕の巣は、独特の匂いが無くなっていたり、薄くなっている。