バニラの香りをつけたアイスクリームである。特に、北米・アジア・ヨーロッパではフレーバーとして頻繁に使用されている。他の味のアイスと同様に、かつてはクリーム・砂糖・バニラを混ぜ合わせたものを、氷と塩の入った容器の上で冷やして作られていた。味付けに使われるバニラの種類は地域によって異なる。北米やヨーロッパでは、よりスモーキーな味が人気で、アイルランドではアニスのような味が人気である。アイスを滑らかにする為には、時々かき混ぜてから氷と塩の入った容器に戻して再冷却する必要がある。多くの人はバニラをアイスクリームの「デフォルト」や「プレーン」のフレーバーだと考えているという。

バニラを初めて用いたのはメシカという民族である。
1500年代、現代のメキシコ付近を探検していたスペインのコンキスタドールは、飲み物や食べ物に使用しているメソアメリカの人々に出会い、バニラ豆をスペインに持ち帰った。スペインでは、カカオ豆・トウモロコシ・水・ハチミツを混ぜたチョコレート飲料の味付けをするのに使われた。これはやがてフランス、イギリスに広まり、1600年代初めにはヨーロッパ全土にまで普及した。1602年にエリザベス1世の薬剤師であったヒュー・モーガンは、ココア以外のものに用いることを推奨した。

アイスクリームの歴史は14世紀の元朝の時代まで遡る。ムガル帝国の宮廷でも出されていたという記録が残っている。作る過程で氷と塩を混ぜて冷却するという方法はアジアで生まれた。711年から1492年にかけてアラブ人とムーア人がスペインへと渡った際に、この方法は東洋からヨーロッパへと広まった。塩と氷を混ぜる冷却法がヨーロッパへ広まると、イタリア人が作るようになった。18世紀初頭には、フランスでもレシピが現れている。フランス人はレシピに卵や卵黄を加えることで、より滑らかでこってりした食べ物へと変えた。18世紀初頭にフランス人が記録した最初のレシピには卵黄は含まれていなかったが、18世紀半ばになると卵黄を入れるようになっている。

バニラがカカオ以外にも使われるようになると、フランスでは頻繁に使われるようになった。現在のアメリカで「フレンチ・バニラ」と呼ばれるカスタードベースのアイスクリームはこうして生まれた。トーマス・ジェファーソンがフランスでこれを知り、レシピをアメリカに持ち込んだことでアメリカにもバニラアイスクリームが伝わった。1780年代にジェファーソンは独自のレシピを書いた。
このレシピは、アメリカ議会図書館に所蔵されている。