物価や株の相場などが、何かをきっかけに急速に上昇して行く場合などに、その急速さを比喩するのに使用する慣用句である。

(例)今年の夏は猛暑で毎日気温は鰻登りだ。

この言葉、あるいは慣用句は、ある特定の状況に対してだけ使用される表現だということが分かる。
それは、何かを契機に上昇が始まり、急速に上昇が進むということであるが、この場合、特殊な条件が付いていることが用法から理解される。

まず、アップダウンに、人間が非常に関心を持ち、上がりや下がりに一喜一憂するような事態である。
次に、このような事態は、その発生があらかじめ予期されていることが一般である。
また、発生に反復性のある事態について使われる。
さらに、上昇が始まっても、実は、いつ上昇が止むのか、先行きはどうなるのか、不安定要素が絡み、単純に上昇するのではなく、急速に上がると、少し下がり、再度急速に上昇するというように、上昇や下降に「くねり」が存在するような事態に使われる。
また、上昇でも下降でもない、横這い状態が存在し得るような事態について使用される。

海で産卵し、稚魚が川に入り、上流を目指す。
そのような魚の例は他にいくらでもあるが、登るという能力において、鰻は飛び抜けている。
多くの魚は流れに沿って上流へと向かうだけである。
途中に滝があれば、大抵の魚はそれ以上登ることが出来ないが、鰻はその際に、滝を登る事も出来る。
急流を遡る遊泳力はないものの、長い体で石の間に入り、あるいは濡れた石の面を這うようにして上流へと移動する。
日光中禅寺湖に生息する鰻は、華厳ノ滝を遡って来たものと推定されている。

さらに雨が降った時には陸に登り、草の間を這い進む事もある。
従って、鰻は河川の上流域水流で繋がっていない池にも侵入する。
かつて天然鰻がまだ多数生息していた頃には、雨の後には、水田に大物が見つかることもあったと伝えられる。

上記のような躍動的な生態から、鰻が川を昇るが如き勢いで上昇していく様を「うなぎのぼり」と呼ぶようになったという説がある。