目が覚めたら、
私は違う空間に居た。


透き通った色をしている宙。

それに、やけに心地良い風が頬を撫でる。

くすぐったい、という迄はないが
何かふんわりとしたモノに包まれてるような感覚だった。


正直それが何なのか、今となっては覚えていない。



かねて、漂流してた時の事すら思い出せない。


 なぜだろう・・・




ようやく目を覚ましたみたいだな…



聞き覚えのある声がする。

でも、姿は見えない。


 なぜだろう・・・




ここが自室ではない。

わかったのはそれだけで…


あの声の主も
今、私が居るこの場所も
不明なままだった。




そう・・・何故ならば
生と死の狭間を彷徨っていたからだ。



私はあの日ぼんやりと考え事をしながら、
自宅の中を歩き回っていた。


そんな事に気を取られてる隙に
階段を踏み外し、上から下まで転げ落ちた・・・
というのである。


しかも、運悪く
打ち所が急所あたりだったという事もあり
人生に於ける約半数の記憶が消えてしまった。

脳内のハードディスクがクラッシュしたようなものである。



ところが、医者から奇跡と称されたのは他でもなかった。

 消えた記憶は全て悪いモノで
 良いモノが全て残った。




確証は何ひとつとして存在しないが、
以前のようなトラウマや好き嫌いによる極端な偏食がなくなったのは
とても良い兆候である。



おかげで私は狩人復帰も果たした。


ランクは駆け出しだが、
この勢いでG級まで一直線だ。


そう信じ込んで
やまない日々を私は過ごしている。






         ~おしまい~