活字に溺れて

活字に溺れて

活字と物語の海に溺れる日々。
思ったことを徒然なるままに綴る自己の記録用ブログ。

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梅雨が明けたと思ったら連日の酷暑続き
夏は始まったばかりだと言うのに既に音をあげてしまいそうです

今回はメルヘンで悪夢なミステリーを


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小林泰三『アリス殺し』

あらすじ:

ある日ふと毎日不思議な夢を見ていることに気付いた主人公、栗栖川亜理。

その夢とは彼女が不思議の国にいて、そこでは自分がアリスとなっている、というもの。

ある時の夢でハンプティダンプティが塀から転げ落ちて死んでしまう。
そして目が覚めて大学へ向かうと、そこでは"玉子"と呼ばれていた学生が屋上から転落して死亡したという事件が起こっていた。

夢と現実で似たような事件が起こっていることに違和感を覚えた亜理は同じような夢を見ているという学生井森と出会った。

不思議の国では芋虫のビルとして登場する彼が言うことには夢の死と現実の死はリンクしているらしく、二つの世界の登場人物は繋がっているということ。

つまり、ビル=井森、アリス=亜理、のように向こうの登場人物は同様に現実側にも存在するということであった。

そして夢の中で起きたハンプティダンプティ転落事件は事故ではなく殺人だ、と不思議の国の住人たちは言う。

そしてどういう訳かアリスはその殺人事件の容疑者となってしまう。

このままアリスが犯人だと決まれば彼女は死刑となり、現実世界の亜理にも死が訪れてしまう。

自身の死を防ぐため、真犯人を見つけるため、彼らは現実世界と不思議の国でそれぞれ捜査を進めるが…。


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感想:

アリス殺し、タイトルからして不穏。
そして想像通りになかなか暗い重い怖いの三拍子。

殺され方も終盤に近づくにつれて想像したくないようなスタイルになっていくので、苦手な人にはなかなかしんどいかもしれません。

ただ設定がとても面白い。 

夢の中と現実世界の死のリンク。

不思議の国での登場人物が現実世界では一体誰なのか。
ミステリーにおける犯人当ては楽しいものですが、この作品ではキャラクター当ても楽しめる。
という一度で二度美味しい作りになっています。

そしてこのキャラクター当てがなかなか難しい。
現実世界と不思議の国では必ずしも性別・体型・性格が同じになるという訳ではないようです。

だからこそ騙されてしまうのです。

意外な人物が予想とは全く違うキャラだということが判明した時には私も「騙された…」と頭を抱えてしまいました。


また不思議の国の住人たちの遠回りで噛み合わない会話も面白いところの一つです。

頭のおかしな帽子屋、白うさぎ、ドードーにチェシャ猫。
融通のきかない彼らとの会話も見ていて愉快でとても楽しいと私は感じました。

ただ、私は原作の『不思議の国のアリス』をきちんと読んだことがないので、独特の言い回しや登場する生き物たちにピンとこない部分が度々あった所が少し残念でした。

原作の知識があると細かい会話まで一層楽しめるかもしれませんね。


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『アリス殺し』に始まる○○殺しシリーズ。
一度読んでみたいと思っていた作品で、想像以上に楽しめたので良かったです。

クララ、ドロシィ と続くこのシリーズ、次はどんな事件が起こるのか恐ろしいようで次を手に取るのが楽しみですね。

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暑くて眠れないと思って書き始めた今回のブログですが、気付けば時間は深夜3時半。
時間は潰れたけれど暑いことに変わりはありません(笑)

そろそろ眠ろうと思いますが、私は殺人など起こらない楽しい夢が見られますように。

もう眠っている人も、まだ起きている人も、今から寝ようという人も、みんな素敵な夢が見れるといいですね。

おやすみなさい。