楽しい一日だった。
いきなり連れ出されて、引きずり込まれた店での乱痴気騒ぎ。
日頃怨霊退治等で殺伐としているからこそ、こういう時のタガのハズレ方はすごい、と思う。
まだまだ徹夜ででも飲むわよ~!と叫んでいる綾子を無理矢理直江の車に放り込んだのが数時間前。
厄介事を押しつけられたと睨む顔が、「ひとつ貸しだぞ」とつぶやいて、愛車の運転席へと滑り込んだ。
走り去る車を見送って、もう深夜にさしかかろうという空を見上げ、「さ~て」と1人つぶやく。
そして彼はこの場所に立っていた。
そこは、小高い丘の上に立つ、小さな廃病院だった。
手には小さな花束が一つ。
「こんなことしようと思うなんて、オレ様もついにヤキがまわったのかな」
皮肉に口の端を吊り上げるけれど、またすぐに元に戻る。
「ったく、大将のくせにあんな青くせぇことばっか言うヤツに影響されるなんてな」
自分が換生する前に存在していた魂。いらないならと貰ってやった生命。
その器の今日は生まれた日。
この体に換生したことを、後悔なんてしていない。
罪悪感なんて、あるはずもない。
だってそれは必要なことだから。
あいつを、あいつらの行く末を見守るために、絶対不可欠なこと。
パサリ。と小さい花束を病院の前へと置く。
それはまるで、誰かへの手向けのように。
「・・・・・・ごめんな」
謝ることなんてない、と自分の中のもののふが叱咤する。
甘いことを言うなと、それはただの自己満足だ、と。
「誕生日おめでとう、シュウヘイ君。まだもうちょっとこの体、貸しておいてくれよな」
仲間と共に未来を手に入れるために。
この闘いに勝つために。
「うっし!明日からも頑張って、景虎いじめっかな~!!」
伸びをして、そう言うとさっさと踵を返す。
そして振り向きもしないで、彼は坂を下っていった・・・・。
HAPPY HAPPY BIRTHDAY・・・。
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暗い話ですまない。
この前の千秋お祝いSSは安田殿のブログで見てくれると嬉しい。(千秋修平 のブログ)
この話は本体が勝手にお祝いSSにオマージュして、書いたものだそうだ。
とりあえず、ひさびさにUPしたんだが・・・どうだろうか・・・(汗)。