昨日のこと。

職場の飲み会帰りで日付も変わろうかというお時間。

乗り過ごすこともなく、いつも通り駅から歩いて帰宅途中。



あまりに楽しすぎたために酒が過ぎた。

調子に乗って話しすぎたのを反省して凹みながら、

足元フラフラで歩いていた。


そこに横の車道から飛んできた声。

「どこ行くの~?」

そばに止まっている車の窓から

知らないにーちゃんが身を乗り出していた。

「家帰るの?」

「送ってこーか?」


アホか。

知らない人について行っちゃいけませんなんて小学生でも知っている。

まして、30分もかからない、歩き慣れた道に

知らない人の車なんて使うわけがない。


「結構です!」

視線を外して背筋を伸ばして前を見て、

きっぱりはっきり言い捨てて立ち去った。

おかげで酔いは覚めた。




そこから歩いて3分後。

「どこ行くの~?」

後ろからかけられた声に、さすがにギョッとした。

さっきのにーちゃんがついて来たのかと思った。


振り返って見ると、さっきとは違うにーちゃん。

金髪でヘラヘラした感じのザ・チャラ男君。

その時点で私の中では却下決定。

「家に帰るんです。」(だからついて来るな)


「車で送ってこーか?」

「いらない。」

「ドライブ嫌い?」

「嫌い。」 (これは事実。車酔いしやすいので。)


切り捨ててもついて来る。

なかなかしぶとい。

というか、打たれ強い。

生徒に「毒舌」と言われるSの血が騒いできた。

面白くなったので、数分遊んでみることにした。


「いくつ?」

「いくつに見える?」(これはいつも生徒にする返し)

「24、5くらい?」

その時の私の格好は、

胸元に大きなリボンを結んだシャツにカーデガン、

タイトスカートにパンプス。

髪はサイドと上部分だけをまとめて、お嬢もどき。

大学生には見えないだろうし、

若く言って機嫌を損ねないという点では妥当な答え。

「ハズレ。もう少し上。」


「真面目な仕事してるの?」

「だからチャラいの嫌いなの。」

「可愛いと思ったのになぁ」

「そりゃどうも。」

服装が良かったのか、酒のせいか、

なぜか昨日に限っては「可愛い」は

生徒からも同僚からもよく言われていた。

別の日だったら、ゆらいだかもしれない…。


「アドレス交換しない?」

「しない。」

「電話番号教えてくれない?」

「くれない。」


この間、足は止めず、顔は前だけしか見ない。

真横を歩くチャラ男君は視界に入れない。

時と場所が違うとはいえ、

懐いてくれている生徒との会話と同レベルでしかない。

おかげでこの手の切り捨ては慣れたもの。


切り捨て続けること数分。

大きな交差点にたどり着いた。

ここを越えて住宅街までついて来られると、

人通りもないので、さすがに困る。


だから、初めて立ち止まって、ニッコリ笑って最後のとどめ。

「そこのコンビニに『変質者が!』って駆け込んだらどうします?」

「勘弁してください。ごめんなさい。」



チャラ男君退散。

勝った。


実は「そこのコンビニ」、

夜はデブでオタクまっしぐらな容姿のにーちゃんしかいないんだな。

だから、本当は助けてくれるなんて期待できない。

嘘も方便。



まあ、本を読んで帰れない夜道の暇つぶしくらいにはなったかな。

出会いが欲しいとは思うけど、

平日の夜中にナンパするチャラいにーちゃんはさすがにいらない。