福岡地裁・不当判決からのはじまり | トンポ・トンネ 日々イモジョモ

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福岡地裁・不当判決からのはじまり

 『朝鮮学校のある風景』54号の締め切りが迫り、表紙に「福岡・大阪地裁につづく勝訴」の仮タイトルを入れて、裁判当日、福岡入りした。
三日前の一一日、九州のウリハッキョの最寄り駅・折尾駅頭で、たくさんの警察官の前で通学する女子生徒に向かって、「朝鮮に帰れ」との暴言が浴びせられるという事件が起きている。立ちはだかる壁は厚かった。
 福岡地裁小倉支部。建物の廊下を超え、中庭にまで傍聴券を求める長い列ができた。781番から1100番までの整理券が配られ、傍聴できたのは三七人。建物の外に出て、「吉報」を待つ。新幹線で現地入りした東京の顔なじみのオモニ会のメンバーが、大きなカメラを向けて待ち構える報道陣の隣、ベストポジションにいる。「月刊イオ」の表紙を飾った大阪のオモニ会のメンバーや、東京や大阪での裁判所でも会っているソウルからの支援者たちも、日の丸がはためく裁判所の建物の入り口を、心を一つにして見つめている。試験を終えて駆け付けた広島中高生たちの姿も。英文のプリントを片手にした生徒、翌日も試験だ。

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二時の開廷から間もなく、「不当判決」の四文字。重い沈黙、声が出ない。沈黙がとても長く感じられた。
「どれだけいじめればいいのか」、「恥を知れ」、「子どもたちを泣かすな」
 第一声を発したのは、朝鮮なまりの二世の高齢男性だ。
 「最後まで戦うぞ」、「子どもたちの学ぶ権利を奪うな」
 「朝鮮学校差別反対」のパネルを掲げ、オモニ会が拳を振り上げた。
 조선학교 차별반대(朝鮮学校差別反対)」、「무상화 적용하라(無償化適用せよ)
 駐韓日本大使館前での「金曜行動」のときと同じシュプレヒコールをソウルから来た孫美姫さんらが叫ぶ。
 ♪どれだけ叫べばいいのだろう
  奪われ続けた声がある
 東京のオモニ会のメンバーが、毎週文科省前でうたっている歌をうたう。地元の同胞社会の「語り部」をしている同胞が「アリラン」をうたいだすと、大きな歌声になり、地裁の建物を覆った。
 「(解放後)何年も何年も戦ってきた。…筑豊の土にはまだ同胞の骨が…いつまでいじめるのか…」
 第一声を発した同胞が声を振り絞って、叫び続ける。怒りは収まらない。
 中高生たちが陣取る方向から「差別するな」、「奪うな」、そして「諦めない」の絶叫が聞こえる。留学同のメンバーだ。生徒たちは泣いている。抗議の強い意思からなのか、涙を拭おうともしないで、マスコミのカメラをしっかり見つめている。先ほどまで、カバンに付けた韓国の人気グループのバッジについて楽しそうに話してくれていただけに心が痛んだ。

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 記者会見につづき、夕方からの報告集会にも立ち見が出るほどの人が詰めかけた。
 担当弁護士からは「端的に不誠実…とても空虚…」、「できの悪い、ろくでもない」との評だ。各地の支援団体らの連帯のあいさつ、アピールは、「怒り」や「悔しさ」というより、ウリハッセンへ(生徒)への気遣いと励まし、ウリハッキョ(朝鮮学校)への誇りで満ち、「ウリハッキョ チョアヨ(朝鮮学校いいね)」、「チキジャ(守ろう)」の輪が着実に広まっていることを実感させる、温かいものだった。

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 翌日、九州朝鮮中高級学校に行った。在特会が女子高生に暴言を吐いたという現場は、学校の目と鼻の先だ。
 学校のホールには、報告会の公演で掲げた「朝鮮学校守ろう 最後まで未来のために」というポスターがオモニ会の「檄文」と並んで貼られていた。勝訴にも備えていたのかと思うと、やりきれなかった。
 終わりの見えない戦いが続く。諦めないで戦う、負けるはずがない。

*加筆して『風景」54号に掲載します。