パブ丸殺乱-basala-。


その名前にピンと来たのは言うまでもない。


逆から読むと乱殺丸。


乱殺丸は近所の峠に住んでいた代々伝わる名家の剣豪で、昔はいろいろと一悶着起こしたものだった。


「まさか乱殺丸がインスクさんと繋がっていたなんて…。
もう…無駄な血は流したくない!」


パブ丸殺乱はスナックぽぷりから歩いて30分くらいの距離になる。


海岸に位置するせいか、一見海の家かと思ってしまうような佇まい。


この店もまた、パブだと言うのにランチ営業をしているようだった。


「『17時までランチタイムビュッフェやってます。』かぁ。
とにかく入ってみよう」


昌吉が沖縄へ来てから3時間が経過していた。


マリンブルーの海、吹き抜ける潮風、打ち寄せる波。


一瞬、八千代が海岸を駆け回る姿が見えた気がして俺は一粒涙を流した。


その時だった。


後ろから刃を突き付けられたのだ。


「乱殺丸、キミだな?」


こんなことするのはやつしかいない。


「武器を持たぬ相手を殺して何が面白い?ぬしはいつから軟弱な人間になったのだ」
ウージのオフ会!!てか
同窓会!!かな…?



やりたいです(^q^)



年末とかに



やらないか???



レッツパーリィ!!!!
―ここにまた、忘れられない過去を背負った女が一人。




「わたしはキリスト教よ!
マリア様に誓って絶対にないわ。」


周りがざわつくのがわかる。


「それでもわたしはやってない、いえ、食べていないわ!断言するっ!」


わたしが勝手に食べたのは、店側が釜山品評会に出すはずだった試作品、『あんかけチャオハン』。


一口だけ…そう思ってつまむうちに箸はすすみ、我にかえると皿は空になっていたのだった。


私が犯人だというのは一目瞭然だろう。


口の周りには無数のごま粒が、人差し指と親指には"あん"がついている。


それでも自分が食べたと認めないのはわたしのプライドなのかもしれない。


わたしにはかつて燃え盛る不倫の末に別れた男がいた。


喜納昌吉。


彼はわたしを覚えているのだろうか。


焼け焦げた肌。


白いタンクトップ。


無造作になびくウェーブがかった髪。


まさにワイルドそのものだった。


その荒々しい風貌とは打って変わり、彼の描く絵は繊細で品やかなタッチ。


そんな不器用な彼が大好きだった。


でもあの頃わたしには旦那がいた。


夜の営みはいつも一方的で、一緒にいればいるほど苦痛でしかなかった。


そんな退屈な毎日に差し込んだひとつの希望…。


昌吉さん。


わたしはあなたを忘れやしません。


あなたは八千代がした、最後のいたずらに気づいているでしょうか?


八千代です。


八千代が持っています。


あなたの男根は、この八千代が持っております…。


「皆様、繰り返しますが八千代は食べておりません。
八千代は無実です。」


昌吉さん…


はやく探しにきてください。


それともまだ男根をなくしたことに気づかれていないのですか…?



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その頃俺はヨンスクさんから八千代出生の秘密を聞いていた。


八千代と付き合っているときはあまり気にしなかった彼女の額の仏ボクロが何を意味していたのか、自分の中でようやくわかった気がする。


一旦冷静になろうと、クマラスープをすすりながら俺はおもむろにヨンスクさんに尋ねた。


「それで八千代は…八千代は今どこに?!」


カットソーの脇の汗染みの臭いを嗅ぎながらヨンスクさんは答えた。


『それは…あたしの口からは言えないわ。
そのかわりここへ行くといいわ。』


ヨンスクさんが渡してくれたのはスナックぽぷりの名刺だった。


「ヨンスクさん、ふざけないでください。
俺は今ここにいるじゃないですか。
時間がないんです!」


するとヨンスクさんは無言で名刺を裏側にめくった。


"パブ 丸殺乱-basala-"


なんだ、この薄気味悪いネーミングは。


しかもぽぷりの系列店らしい。


『この店の名前には必ず覚えがあるはずよ。
自分の記憶を辿って。
よく思い出すのよ。』


丸殺乱…


「!!!!!!!!!」


『こんな気味悪い名前をつけるのはアイツしかいない!!!!
ヨンスクさん、八千代に会うには嫌でもこいつに会わなきゃいけないんですね…。
悲しいかな、自分の過去をほじくり返さなきゃいけないなんて。』


残りのクマラスープをかきこんでダッシュでスナックぽぷりを出た。


後ろからはお代を催促して追いかけてくるヨンスクさん…。


「ヨンスクすまねえ。
俺は走り続けなきゃいけないみたいだ。」