第19回 説明会で気付かされたこと
説明会では、利用者の母親たちから辛辣な言葉を吐きかけられ、今回の事故の余波が大きく、彼女たちとその子供である利用者にも、余波が大きな影を落としている事を実感した。
子供を信頼して長年預けて来たのに、今回の事故の発生でその状況が一変するかも知れないのだから、当人たちにとっても、ただ事ではないのだ。辛辣に刺々しくなるのも頷けるというものだ。
この痛烈なバッシングが、改めて事故全体を見直す大変良いきっかけとなった。
彼女たちが語るS施設看護師は、親切丁寧できめ細やかな対応をする優秀な看護師である。
この事からすると、S施設看護師が低体温を軽視したとは考え難い。
そうならば、Hクリニックへの搬送は、高いリスクを伴った行動だと言うことを、施設看護師は十分に理解出来たはずで、したがって、そのリスクを彼女は敢えて甘受したと考える方が妥当だ。
しかも同時に、搬送先のHクリニックが低体温を回復させるような救急病院ではないことも、彼女は前年の同院への搬送で十分に承知していた。
救急搬送すれば、その段階で施設として免責され、何でもなかった筈なのに、端から治療出来ないことがわかっているHクリニックへわざわざリスクを冒して搬送している。これは、一体何を意味しているのだろうか。
Hクリニックへの搬送指示は、区役所にいるU課長から午前11時に出ている。この間違った決定によって施設側が振り回されただけというのが発作当日の状況の理解として合理的だろう。
もちろん、この理解は、今手元にあるU課長作成の資料に基づいた理解だ。
一部未開示の状態の下で、事故全体を見渡してみて、つくづく何とも理解し難い不思議な事故だと思う。
なので、余程おかしなことが起きた事は間違いないだろう。