磁気ネックレス、
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磁気ネックレス

■生体内部の世界にも磁場の脈動が満ちている

磁気療法を行った18世紀のメスマーは晩年、ペテン師扱いされて不遇をかこったといわれる。しかし、彼は潮の干満のように繰り返される生体リズムが乱れると、さまざまな病変が起きると考えていた。これは病気を気の流れの滞りとする東洋医学の考え方にも通ずるものである。現代人は、この病気にはこの薬というように、病気と薬を対応させて考えることが多い。しかし、そのような対症療法的な薬の処方は東洋医学においては好ましくないとされている。人体には本来、たえず健康バランスを維持する機能が備わっているのであり、薬はその引き金の役割を果たすだけとみなすのである。もっとも、これは東洋医学だけの考え方ではなく、西洋医学でも人体にはホメオスタシス(恒常性)を維持する機能があると考えられている。これは磁気と生体との関わりについて考えるときにも通じるものである。生体には本来、バランス維持機能が備わっているとするならば、磁気治療とは、まさにこのバランス機能を刺激する外部からの引き金効果ということになる。生物にとって磁気とは何か? これをひとくちで答えることは難しい。しかし、宇宙空間にも生体内部の世界にも磁気の脈動が満ち満ちている。生物にとって磁場環境とは、外的環境であるとともに内的環境でもあり、そして生命そのものと密接な関わりをもつようだ。磁場環境とは、それとの調和なしに生物が存続し得ないところの重要な環境要素である。そして、生体は自ら磁場を発生しつつ、宇宙の磁場のゆらぎと相互作用を行っている。この相互作用の詳細は未解明だが、個体が宇宙全体に主体的に関わりうることのひとつの証左である。生物は外部磁場の変動に追随するだけの受動的存在ではないのだ。木々や草花に日々、励ましの言葉をかけると、成長の度合いが増してくるという。生命どうしの関係とは物質やエネルギーの単純な交換にとどまるものではなく、双方が一体になった創造的なプロセスである。磁気と生体との関わりの科学的解明には、おそらく主体性・創造性・自由といった人間学的なアプローチも求められるだろう。

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磁気療法を行った18世紀のメスマーは晩年、ペテン師扱いされて不遇をかこったといわれる。しかし、彼は潮の干満のように繰り返される生体リズムが乱れると、さまざまな病変が起きると考えていた。これは病気を気の流れの滞りとする東洋医学の考え方にも通ずるものである。現代人は、この病気にはこの薬というように、病気と薬を対応させて考えることが多い。しかし、そのような対症療法的な薬の処方は東洋医学においては好ましくないとされている。人体には本来、たえず健康バランスを維持する機能が備わっているのであり、薬はその引き金の役割を果たすだけとみなすのである。もっとも、これは東洋医学だけの考え方ではなく、西洋医学でも人体にはホメオスタシス(恒常性)を維持する機能があると考えられている。これは磁気と生体との関わりについて考えるときにも通じるものである。生体には本来、バランス維持機能が備わっているとするならば、磁気治療とは、まさにこのバランス機能を刺激する外部からの引き金効果ということになる。生物にとって磁気とは何か? これをひとくちで答えることは難しい。しかし、宇宙空間にも生体内部の世界にも磁気の脈動が満ち満ちている。生物にとって磁場環境とは、外的環境であるとともに内的環境でもあり、そして生命そのものと密接な関わりをもつようだ。磁場環境とは、それとの調和なしに生物が存続し得ないところの重要な環境要素である。そして、生体は自ら磁場を発生しつつ、宇宙の磁場のゆらぎと相互作用を行っている。この相互作用の詳細は未解明だが、個体が宇宙全体に主体的に関わりうることのひとつの証左である。生物は外部磁場の変動に追随するだけの受動的存在ではないのだ。木々や草花に日々、励ましの言葉をかけると、成長の度合いが増してくるという。生命どうしの関係とは物質やエネルギーの単純な交換にとどまるものではなく、双方が一体になった創造的なプロセスである。磁気と生体との関わりの科学的解明には、おそらく主体性・創造性・自由といった人間学的なアプローチも求められるだろう。

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■宇宙時代の幕が開き、再評価された磁気治療

磁気治療の歴史は紀元前にまでさかのぼる。2世紀、古代ギリシアの医学者ガレノスは、天然磁石を下剤として用いていたと記録されており、16世紀の医師パラケルススは、水腫や黄疸の治療にも磁石を用いていたという。また、古代中国医学においても、磁石は薬石のひとつとして登録されている。内服薬としてばかりでなく、金属を誘引する磁気の性質を応用した磁気治療も古くから行われてきた。動物磁気説を提唱した18世紀ドイツのメスマーは、驚異的な治療実績によって一時期ヨーロッパで大評判となったことで知られる。もっとも、これは一種の催眠療法であったとみられ、磁気の効果というよりも、患者自身の心理的効果のほうが大きかったようだ。生体と磁気との関わりが、科学テーマとして研究されるようになったのは、1960年代以降のことである。地球の磁気圏には、地軸に直交して取り巻くヴァン・アレン帯と呼ばれる放射線帯が存在する。ここにはきわめて高エネルギーの陽子や電子が多量に存在するため、宇宙飛行士への影響が心配され、人工磁場による放射線のシールドが施された。しかし、強力な磁場が人体に与える影響については未解明であったため、この方面の研究を急速に進めることになったといういきさつもある。ともかく、こうして19世紀以降の電磁気学の成果と、20世紀の宇宙時代の幕開けによって、磁気治療にまつわる古くからの迷信や誤解の多くが一掃された。また、その一方で、客観的な実験や統計的な事実から、外部磁場が生体にさまざまな影響を与えることは疑い得ない事実として再確認された。

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「エピローグ 磁気と生体」 -生物にとって磁気とは何か?-

■銀河の回転とともに脈動する宇宙磁場

宇宙空間には10-9ガウス(1ガウスは約10-4テスラ)ほどの不均一な磁場と、ほぼ同強度の一様な磁場とが重なり合った微弱な宇宙磁場が存在するという。太陽のような恒星はイオン化したガスからなり、その運動によって磁場が発生することは、電磁流体力学の理論によって明らかにされている。われわれの銀河はおびただしい数の恒星からなる渦巻星雲のひとつである。宇宙磁場の起源は詳しく解明されていないが、恒星と高密度の星間物質の複雑な運動に原因することは確かなようだ。地球の生命を取り巻く磁場環境は、宇宙磁場や太陽磁場、地磁気、そして人工磁場などが合成されたものである。このうち宇宙磁場は、地磁気や太陽磁場の数億~数10億分の1ほどの微弱なものである。しかし、さまざまな実験が明らかにしているように、磁気が生体に与える影響は、その強度と相関しない。人間の聴覚は騒音の中で人声だけを聞き分けるように、生体は微弱な磁場に選択的に反応するところがあるようだ。ある時代を生きる生体にとって影響が大きいのは、磁場環境の永年変化よりもむしろ短期的な磁場変動である。そして、人工磁場を除けば、磁場環境における短期的な磁場変動の多くは、地球外からもたらされるという。磁場環境の変化が血液循環や神経系、生体の化学反応などに影響を与えていることは、本シリーズでたびたび紹介してきた。つまり、磁気を感知できないとはいえ、われわれは宇宙全体の磁場の脈動と深く関わりながら生きているわけである。たとえば、植物の発芽や根の成長は自然界の磁場変動の影響を受ける。また人工磁場を加えてみると、磁場の強度や時間によって、成長が促進される場合もあれば阻害される場合もあることが実験的に明らかにされている。これは植物の成長リズムとの同調具合に関係があるとみられる。しかし、どのような磁場変動が成長にプラスに作用するかは未解明である。生体と磁気の理論の確立を困難にしている理由もここにある。

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■血液や細胞膜、神経系は磁場変動のアンテナ?

生命のはたらきは、ある安定系から別の安定系への移行過程である不安定系をバネとして発現するようだ。さかんな成長期というのも、生物自身にとってはカタストロフィックな過程である。たとえてみれば、生命とは磁場の大海に漂う小船のような心もとない存在である。しかし、かといって針路を失った漂流船のようなものではない。めまぐるしく変動する磁場環境の大波小波に揺られながらも、生体は必死に健康バランスの維持に努める。磁気あらしのように短期的な地磁気撹乱は、いきなり襲ってくる横波のようなものだが、生体は一時的に影響を受けても、本来のバランス回復機能によって安定状態を取り戻す。もとより、健康と病気には明確な境目などなく、生体は健康と病気の間で、たえず微妙にゆらいでいる存在である。重力と同様の環境要素でありながら、人間が感覚でキャッチできないのが磁気である。とはいえ、血液や細胞膜、神経系などは、こうした短期的な磁場変動に対してアンテナのような役割を果たし、さまざまな磁場変動の影響を受けていることが明らかにされている。しかし、生体という複雑系に対しては、同じ外部磁場も個体によって作用が異なってくる。これがともすれば磁気治療が怪しげな民間医療と同類視される理由にもなっている。

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■生体にとって磁気は一種の「引き金」<br>

人体におよぼす磁気作用のメカニズムについては未解明な部分が多い。しかし、人体のホメオスタシスという考え方に立てば、磁気治療の有効性は苦もなく理解できる。磁気と生体についての研究において、わが国の第一人者であり、磁気治療の医学的有効性を立証したことで知られる中川恭一博士は、磁気の治療効果は「物理的触媒様作用」であるという説を提唱している。電解質溶液の流れが磁場を横切るとき電磁誘導によって起電力が発生するが、この現象は血流と地磁気あるいは人工的な磁場環境との間にも起きており、外部から加わる磁気エネルギーは、血液の電解質解離などに影響を与えていることも明らかにされている。かといって、外部から加えられる磁気エネルギーがあたかも養分のように体内に摂取されるとみなすのは、磁気を霊力のようにコジツケる非科学的な解釈である。そうではなく、磁気エネルギーは人体の内部環境である血液系のホメオスタシスを維持するように作用する。それは体内を巡る血液が運動エネルギーをもち、磁気は血液の電解質成分に作用して、運動エネルギーの一部を電気エネルギーに変換するためと考えられている。細胞の化学反応は電気現象でもあるため、間接的に細胞の代謝に影響を与えるというのである。血液バランスの微妙な変化が体調に大きく関係するにもかかわらず、それがあまり重要視されないことから、現代病といわれるものが登場することになる。細胞や内臓などに異変がみられないうちは、なかなか病気として認められない。しかし、ホメオスタシスはたえず揺れ動いているものであり、だれでも多かれ少なかれ病気の状態にある。病気は撲滅すべきものではなく、病気という状態を正常に戻すという考え方が健康維持には不欠なのである。あらゆる薬というものは人体に対して引き金のような効果をもつだけであり、病気は人体に本来備わった自己治癒力によって治るものだという説がある。人体の免疫というのもそのような自己治癒力のことである。外部から加わる磁気エネルギーの影響、いわば磁気による血液のマッサージといえる磁気治療も、人体に対して、健康への一種の引き金となるといえよう。<br>

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血液の働きにこそ生命は発現する <br>

生体と磁気の関係に血液が深く関与している。人体は内臓や筋肉組織のみで成り立つものではなく、また、血液のはたらきは酸素や養分の補給にとどまるものでもない。一部の内臓を手術で切除しても生命は維持できるが、血液なくして生命はありえない。血液こそ生命の根幹をなすものであり、その活動の乱れはさまざまな病気のもとになる。ところで、17世紀にハーベーが血液循環説を提唱するまで、ヨーロッパ医学では血液は人体で生産されて使い捨てにされているものと考えられていた。また、病気は悪い血の滞留によって起きるものとみなされていたから、それを人為的に放出させる瀉血療法(しゃけつりょうほう)が中世ヨーロッパでさかんに行われていた。これに対して、19世紀のベルナールは生体の組織液を内部環境と呼び、20世紀にはいってからはキャノンが血液系をはじめとする生体の恒常性のことを「ホメオスタシス」と名づけて、その重要性を指摘した。血液は生命という超越的な存在を支える下僕のようなものではなく、血液系をはじめとする生体のホメオスタシスにこそ生命は発現しているとみなす。これは東洋医学ではあたりまえの考え方であるが、ヨーロッパにおいては医学のコペルニクス的転回ともいうべき革命的な意味をもっていた。現在でもなお、病原体を薬でたたいたり、病変部位を手術で除去してしまうという考え方がヨーロッパ医学の主流であるからだ。 <br>

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■磁気治療は心理療法ではない

<br>宝石に霊力が宿るとみなすのは科学的ではないが、かといって、宝石療法を単なる迷信として片づけるのも偏見である。ヒルデガルトの宝石療法は、心身の調和を回復するための一種の主体的な心理療法とみなせる。薬効のないプラシーボ(偽薬)が、しばしば作用を現すのは本人の「思い込み」による心理的効果だが、宝石療法は本人の心と宝石との「共感」なしに効果は現れないからだ。服用もしない宝石に薬効があるわけではない。しかし、自分の心と共感できる宝石を見つけ、そのルーツに思いをはせたり、神秘的な輝きに魅せられることで心身の調和が取り戻され、結果として病気が癒されることもあるのだろう。ストレスのような心身不調和ならなおさらである。これは自律訓練法とかバイオフィードバックといった現代のストレスコントロールと似たところがある。現代人が宝石療法に関心を示すのも、心から共感できるものを失っていることの現れかもしれない。宝石療法と似て非なるものが磁気治療である。もちろん、磁気の不思議な作用や人体という宇宙に思いをはせることは、磁気治療の効果を高めることに寄与するかもしれない。しかし、磁気は霊力のようなものではなく、機器によって測定できる物質の根源的な作用であるし、肩こりなどにきわめて有効であるという医学的なデータも多くある。早い話が磁気の効果を信じる信じないに関係なく、磁気治療は効果を示す。これが宝石療法との決定的な違いである。 <br>

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<br>「血液と磁気」-磁気は血液をマッサージする- <br>

■ヒルデガルトの宝石療法

<br>宝石療法(ストーン・ヒーリング)」と呼ばれるものがある。昔から宝石には神秘的な力があり、身につければ災厄を防いだり、幸福を招くと伝えられてきた。誕生石をお守りにするのはその名残りであるし、現在でも、ラピスラズリ(青金石)や水晶といった天然石が、おまじないグッズとして売られていたりする。こうしたバビロニア起源といわれるヨーロッパの占星術とは無関係に、天然石が病気の治療に役立つことを発見したのは12世紀ドイツの女性神秘家ヒルデガルトである。幼少時のころから特異な直観力をもっていたヒルデガルトは、植物や金属、鉱物といった自然の被造物に潜む不思議なはたらきを知っていたようで、その主著『自然学(フィジカ)』には、ハーブ療法や宝石治療のことが詳細に語られており、実際、天然石による病気治療も行っていたようである。正式な学問を修めていたわけでもなく、学会と無縁な修道女であったため、宗教的啓示書のように扱われてきたが、その内容はきわめて鋭い自然観察力によることが明らかにされ、近年、各方面から高く評価されるようになっている。いわばヒルデガルトは、百草をなめて医薬をつくったといわれる中国古伝説上の帝王、「神農」にも比肩すべき偉大な博物学者・薬学者であったわけだ。 <br>

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■生体情報は体液系で、波紋のように伝わる?

生体と磁気との関わりを考えるうえでも、体液の働きは無視できない。磁気ネックレスなどの磁気治療器が、肩こりなどに有効なことは実証されている。体液中の電解質の流れは電流とみなすことができるので、これが磁場を横切ると起電力が発生する。この起電カが電解質を解離させ肩こりなどのストレスを解消させると説明されている。また、磁気ネックレスから発生するのは強力な定常磁場だが、人体が動き回ることによって変動磁場としても機能する。変動磁場が体温を上昇させることは確認されており、これは血液の循環を促進させるためといわれる。肩こりに効果があるのもこのためだろう。ところで、人体を包んでいる地磁気変化によって生ずる起電力も、人体に微妙に影響するという。この地磁気は現在、減少傾向にあるうえ、さまざまな電気機器や設備から発生する磁場によって、現代人は極端に乱れた磁場環境の中で生活しているらしいのである。磁気がツボや経絡にどのように作用するかは定かではないが、最近の研究では、生体情報の伝達において、神経系とともに体液系が車の両輪のように機能していると考えられはじめている。人体重量の大半は水であり、われわれは水につかって生きているともいえる。水分子は電気的な極性をもっていて、水素結合と呼ばれる弱い結合でネットワークを張り巡らせている。ツボヘの刺激が経絡を通じて速やかに人体に広がるのも、あたかも水面に広がる波紋のように、生体情報が伝達されるからなのかもしれない。乱れた磁場環境に身をさらし続ければ、体液の生体情報ネットワークに通信障害を起こすかもしれない。人体はさまざまな悪環境にもよく順応するから、身体に徐々に蓄積されるダメージにも気づきにくい。磁気治療は現代人にとってはまさにツボを心得た健康法といえよう。

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