1.私は子供のころから怖がりで、夜になると一人で便所に行けない

明るい居間から暗い台所まですぐそこなのに怖くて水を呑みに行けない

2.それなのに、諏訪町の場末の映画館に四谷怪談の映画が来たので見に行った.家を出て右に行き、十字路をまた右に行けば最後は越後線の「比角(ひすみ)」駅に出るが途中細い小路を左折しすぐ左にある映画館だが名前は忘れた.

「真昼の決闘」だとか「地上より永遠に」とか、ずっと後になってグレゴリーペックがエイハブ船長を演ずる「白鯨」もかかった.

この日観たのは、お恨み申しますぞ~~とか言うセリフを吐いて幽霊が出たとか人魂が泳いだとかいう映画で面白かったのだが終わって帰りには夜になっていた.これが誤算でしばらくは映画帰りの人たちと一緒に歩いていたが家の前まで来たら誰もいなくなった.門から玄関まで50メートルの石畳があり両側に松の大木が茂っていて真っ暗で,そこに今四谷怪談に出てきた亡者がいそうな気がし始めたからもう行けない.50メートル行けばすぐ右に曲がって小さい門灯がついているのだがそこに行くまでにお化けが出そうだ.

家の中は静まり返っている.本当に困って往来をうろうろしていたら飼い猫が塀の下をくぐってヒョコと出てきた.赤トラ猫だ.これを抱え上げたら気が楽になり私は生き返った.

「人魂だと?だからどうした?」という気分になり簡単に玄関にたどり着いた.

ニャゴ助が一匹一緒にいるだけでこんなに気が楽になるということは考えてみると不思議ことである.