ファーストカーとして自信を持って乗れるコンパクト。
1999年に登場した初代ヴィッツは、当時のBセグメントのベンチマークとして世界から注目されたことは記憶に新しい。しかし12年が経過して、クルマを取り巻く環境は大きく変化し、求められる性能も変わった。一番はコンパクトカーをファーストカーとして考えるダウンサイザーの増加だ。コンパクトならではの取り回し性や低燃費と、クラウン並みのスペースや内装の質感を備えたクルマを求めるこうしたユーザーに、あきらめや我慢を強いない性能が要求されるようになってきたのだ。
そこで、3代目ヴィッツはスタイリングを一新。躍動感を主張すると共に、全長を100mm、ホイールベースを50mm延長した。それでも全長を4mを切る3885mmとし、最小回転半径を4.5~4.7mに抑えており、これが取り回しの点でVWポロやプジョー207などのライバルに対するアドバンテージとなっている。室内も素材にこだわり、助手席前面のパッドを削いで緩やかな波のような曲線を作ることで情緒ある表情を出すなど、機能が最優先した従来のインテリアとは違ったアプローチが見られる。
不評のラゲッジスペースはクラストップの容量に…。
新型ヴィッツはドライビングポジションの調整幅を大きく広げた。まずシートスライドを1ノッチ15mm×16段から10mm×24段に細分化。シートリフトは下方向に15?拡大して60mmとした。そしてステアリングを3度たてた25度とした上でチルト機構を装着。あとはテレスコピックがあれば、まさにパーフェクトと言えただろう。
使う人への優しさでは3段階に開くドアや、世界初採用のUVカット率99%のフロントサイドウインドーなどが女性を意識した装備として注目できる。また、従来不評だったラゲッジスペースの小ささを解消するため、5名乗車時のラゲッジ奥行きを従来型より145mm大きい710mmとしている。この結果容量は+12Lの286Lとクラストップレベルになった。またオプションの2段式アジャスタブルデッキボードを使えばラゲッジフロアの高さを120mm移動でき、背の高い荷物にも対応するし、6:4分割可倒リアシートバックで、フラットフロアを作り出すこともできるなど、ラゲッジに関する不満は120%解消されている。
軽くスムーズな操作系で、市街地でも構えず乗れる。
エンジンは1.0、1.3、1.5Lの3機種。すべてにCVT-iが組み合わされる。しかしRSだけは5速MTが用意されるほか、CVTもステアリングパドル付き7速マニュアルセレクト式となり、スポーツ走行への強い意志を伺わせる。今回試乗したのはRSの5速MT仕様で、エンジンは従来型と同じ109ps/138Nmを発生する1.5Lの1NZ-FE型だ。
発進はとても軽快。クラッチもシフトも操作系は軽くスムーズで、RSだからと構える必要は全くない。街中を走る機会が多いクルマだけに、これはありがたい。ただ、スロットルの踏み始め1~2cmあたりまで不感性帯があり、わずかに踏み込んだ程度ではエンジン回転があがらないのが気にかかる。CVTの発進時の飛び出し感を抑える工夫かもしれないが、MTには馴染まないと思う。
一旦動き出してしまえば回転もスムーズだし、吹け上がりも気持ちいい。車体の軽さが実感できる加速感だ。今回は市街地のみの試乗だったので60km/h程度までしか判断できないが、室内の静粛性の高さに驚かされた。これもワンランク上を目指した結果だろう。






















