京都のバーDDのマスター&メガネニカナウプロデューサー&役者/上杉逸平のなんやかんや… -71ページ目

携帯の電源オフについて。

◆たまには好きに書いてもいいかな…と思いつつ、読んで気分を悪くされる方もいるかもしれません。

先にお断りしておきます。




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たまたま観に行った芝居の開演前アナウンスで

『携帯電話の電源はお切りいただくようお願いいたします』

っていうおなじみのスタッフの声に、一応スマホを出して光ってる画面をチラッと見て…

そのまま電源を切らずにポケットやカバンにしまうっていうおなじみの風景を客席側から見ていた。

※この話の対象はちゃんと切ってるかどうかの確認する動作をされてる方のことではありません



毎度の事ながらホンマに萎える。


『音は切ってあるから大丈夫』
とか
『機内モードやし電波入らへんやろ』
ってのは…


『演劇観るくらいでなんで電源切らなアカンねん』
って言うてるのと同義。



感想を読んでたら
『お客さんのバイブが震えた』
『観劇の途中にお客さんがスマホ出して画面見てた』
とかよく見かける。


そういうのを見る度に
『電源を切ってください』
っていうお願いを平気な顔でスルーできてる時点で
『小劇場』
っていう雰囲気自体がナメられてるんやなぁ…といつも思う。


グラサンかけてインカム付けた黒スーツの男が両側に並んで立ってたら電源オフにご協力してもらえるんかな…?

入口にレッドカーペット敷いてデカいシャンデリアでも吊ってたら緊張して電源オフご協力してもらえるんやろうか…?

バイブ音でも鳴った瞬間床が抜けたりするならビビって電源オフにご協力していただけるんかな?


色々考える。


ホンマに
『入口でお預かりしますシステム』
とか
『本番中は電波ジャミングさせていただきますシステム』
とかやらんと解決できひん問題やっていうのが切ない。


ちなみに…


その日たまたま見かけたのだが、前の席でキンソン(Mゼロ)が上がって暗転して芝居が始まっていくのにまだスマホゲームしてる若者がいた。

後頭部をかかとで蹴りたくなった。


やらんけど。



その若者は真っ暗になったから慌ててスマホを下に向けたけど、床の跳ね返りで周囲は明るかった。



特に役者は暗転に慣れている(鳥目な人も多いけど)ので、暗転したのを自分の目で確認して舞台に出ていく。

極端な話やけど、その若者が最前列に座っていたとしたら…

暗転と同時に舞台に出ていって芝居を始める予定の役者は、決まってたきっかけで真っ暗にならないからテクニカルなトラブルなのか!?とザワついてしまう。


『プロやったらそんなんちゃんと対応しろよ』

って意見もあるかもしれんけど、プロやからこそ暗転に備えて暗くなる前から目をつむって暗闇に慣らせている。

お客様が目が慣れるよりも先に暗闇で動けるように。

だからなおさら中途半端に明るさが残ってると幻惑されるのだ。

事実俺には暗転したと思って動いている役者の姿が見えていた。



ゲームをしていた若者は今から始まるその芝居の劇団の役者の知り合いだったのだろう。

開演前からの隣に座っている友達との会話を聞いていれば容易に想像できたが、その彼は
『知り合いがやってるから観に来てやった』
っていう雰囲気がスゴかった。


その感覚が全てをブチ壊していることには気づいていない。


少なくとも後ろに座ってた俺にとってはその芝居のオープニングは若者のスマホゲームから始まっていたからなのだ。



例えば…


数日前からサプライズパーティーを企画してる側がいかにもサプライズパーティーを企画してますよ、と仕掛けられてる側の人間の前でニヤニヤするのか?

『ドッキリなんで気ぃつけてくださいよ』
なんて仕掛けてる側が先に発言するのか?

いつもはやらへんのに記念日だからとめっちゃ仕込みに時間をかけて精魂込めて作った料理をテレビ観ながら食べられたら?

楽しみにしてた映画のあらすじを先に全部隣で話されたら?



萎えるシチュエーションはいくらでもある。



芝居は、劇場は、観劇は
『非日常』
なのだ。

そんな電源すら切らない一握りの人間の
『日常』
で、楽しみに観に来てちゃんと電源切ってる人の気持ちがブチ壊されるなんて事はあってはならない。

その若者の数秒で、彼らが稽古して積み上げてきた数ヶ月が全て水泡に帰してしまうのだ。


その役者達が毎日全力を注いできた稽古の風景を想像する頭も彼には無い。

自分の座っている周囲のお客様がどんな気持ちで劇場に来ているのかを思いやる脳みそも彼には無い。

家で寝転がってテレビを観るのと同じ感覚で劇場に来ている。



スマホの電源を切らないっていうのはそういう事なのだ。


『自分がされたら嫌なことを他人にはしない』


そんな基本的なことを分からないから
『友達ががんばってる姿を応援しに来た』
ではなく
『友達ががんばってる姿を冷やかしに来てみた』
くらいの感覚しかないのだ。


終わってから
『めっちゃがんばってたやん』
とか言うてるんやろうな。




その若者とは別の、一人で来ていた男性は、開演前アナウンス後にスマホを確認して光ったまま尻のポケットに入れた。


後から分かったのだが、その芝居で挟み込まれていた別の舞台のチラシの束の中にその彼は笑顔の写真で存在していた。

同じ舞台に立つ側だった。



観劇慣れしてるしてないの問題ではない。


『彼も自分がされたらその時はキレるんやろうな…』
と容易に想像できて鼻で笑ってしまう。



どうか開演前に電源ボタンを押してオフにしてみてほしい。


そのちょっとした手間を惜しまないだけで何人のお客様が劇場で楽しみにしていた時間を嫌な思い出にしなくて済むか。



制作スタッフは役者がいい芝居ができるように全力でサポートしてくれている。


そのサポートしてくれているスタッフの
『電源を切っていただくようにお願いいたします』
を軽く聞き流すのだけはやめてもらいたい。



哀しいかな…

そんな人達がこの文章を最後まで読んでいるとは思えないのだけれど。