いよいよルビーのネックレスの謎が解かれます。めでたし、めでたし。そしてポーは……。


子ども達三人は教会の応接室にいた。
慌ただしい足音がして牧師夫人が白猫を抱いて入って来た。
白猫が女の子を見た。
すると何が起こったか。

牧師夫人の腕から、するりと、白猫は降りると、少女の足元に少しびっこを引きながら駆け寄った。

そしてニャアニャアなきながら、少女の足に体を何度も何度もこすりつけた。

、、、後は興奮の嵐。
何が起こったのか覚えていない。
外出中の牧師が夫人に呼び戻され、猫先生までも教会に呼ばれた。
やがて弁護士が女の子の母親に連絡を取った。 つまりはこういう事だ。
女の子は屋敷のなくなった女主の曾孫だったのだ。

息子夫婦を交通事故で亡くした資産家の女主は、息子夫婦の忘れ形見の孫を溺愛した。
やがて孫は、青年になり遠く離れた大学に行きそこで恋をした。
祖母には結婚は許されず、二人は駆け落ちをした。孫は名前も変え、妻に出身地も言わなかったそう。
やがてふたりは女の子を授かったが女主の孫は病死。
同じ頃、祖母である女主も高齢で亡くなった。亡くなる前に、既に孫が亡くなった事も知らず、ルビーのネックレスを孫が帰って来たら渡してくれるよう心を許した召使いに託した。
もちろん、その召使いが白猫の化身とは知らなかったであろう。

ルビーのネックレスはロケットになっていて、女の子にそっくりな、女の子の父親の写真と、孫の結婚を認め許しをこい、全財産を孫にゆずるとの遺言書が入っていたという話であった。


ある夜、猫先生の部屋で話し声が聞こえた。

「ポー、君のおかげですべてはうまくいった。…君は、どうしても行ってしまうのか」
「はい。私は時を旅しますから。ドクター、また会いましょう。」
「ポーよ。君は年も取らず老いない。だが私は年を取る。今度、君が帰って来た時、私はいないかも知れない。」
「ドクター。あなたは私の心の寄りどころです。必ずまた会いましょう。」
「あの子達には黙って行くのかね」
「 黙って行きましょう。あの子達が大人になっても、夢を持ち続ければまた会えましょうから。」

「会えるとも。」
  猫先生は力強く言った。


二学期が始まった。
少年と少女は屋敷横の階段に腰掛けていた。
「すごい夏休みだったね」
この屋敷も何だか嬉しそうに見える。
 来年には屋敷の修繕が始まるのだ。屋根は緑色、壁は白く、塀は淡いクリーム色に塗られるそうだ。
きっと、あの植木職人が鼻歌を歌いながら庭の手入れをするだろう。
来年には女の子とその母親が引っ越しして来る。

少年が言った。
「僕は勉強を頑張る。おじいさんやお父さんのような医者になるんだ。」
「私は大人になっても夢を忘れないわ。童話作家になって世界中の子どもに夢と力を届けるの。」

少年と少女はポーがなぜ自分達の所へ現れ、何をさせたかったのか
少しわかったような気がした。

あれ以来ポーは現れない。

ポーは今頃どこで何をしているのだろう。

二人には、ポーがもう現れない予感がしていたが口に出さなかった。

そよ風が少年と少女の頬を優しく撫でた。



、、、時は流れるのか、はたまた戻るのか、、、


いつの時代かの春
満開のムスカリ畑の中を、一匹の黒猫が蝶を追いかけている。

「シャッターチャンス!」通りすがりの猫好きの若い女性がカメラを構えた時、足元の小石につまずき転んだ。
「お嬢さん、お怪我はありませんか?」
若い女性が顔をあげると、目もとのきりりとした長身の美青年が、にこやかに手を差し伸べていた。

               …ポー
いつの日か
また会おう。

 ー完ー


……あとがき……ポーの物語はいかがでしたか?
実は、物語の最後の若い女性はあなたです。
あなたの下に黒猫ポーがやって来ました。
次に、このお話の続きを綴るのはあなたです。
あなたがあなた自身の物語を、ポーと一緒に綴って下さい。
きっとうまくいきます。
なにしろ、夢と希望を運ぶポーがあなたのそばにいますから。











(挿絵は仮)
原作者:S.にゃうこ
挿絵:うえむ