(第二景)
⒐
⑴
小学三年生・藍
浅香家の執事・信濃
藍の姉・ゆう
藍とゆうのボディーガードで、ゆうの元彼氏・太田
4名。
ロビー下手から太田、少し離れてゆう・藍・信濃の順に並ぶ。
太田「すみません」
太田が頭を下げて謝ると、『プー』とオナラの音がする。
太田「すみません、まさかヘロナに感染しているとは…」
ゆう「私の方こそ、さっきはごめんなさい」
ゆうたちは医者を呼んだようで、
ゆう「お医者さんが来てくれるから」
信濃「ヘロナ用の注射を持ってきてくれるみたいですよ」
太田「(オナラをしないようお尻に力を入れておきます。すみません」
太田が頭を下げて謝ると、また『プー』とオナラの音がする。
すると、藍が太田に対し冷たい言い方で、
あい「帰れよ!屁こき」
信濃「言い方!」
⑵
太田を診察するために花月病院の医師・辻本(辻本茂雄)が現れ、自己紹介する。
辻本「手術に失敗するので、ニックネームは殺人鬼です」
信濃「ダメじゃないですか!」
辻本「嘘です」
辻本「仲間からは『J』って呼ばれています」
信濃「J?」
辻本「ジェイソンのJです」
信濃「殺人鬼じゃないですか!」
辻本「冗談です」
医師・辻本は変わり者キャラのよう。
⑶
辻本「で、どなたが?」
太田「私です」
と太田が辻本に近づくと、辻本が手のひらを前に出し、
ヘロナ感染している太田から距離を取る。
辻本「あまり近づかないでください」
①
辻本「では診察しましょう」
辻本が診察用のクリップボードとペンを手にする
辻本「ソファに体育座りしてください」
客席から横向きに見えるように、太田が長ソファで体育座りする。
辻本「前に屈んでください」
太田が丸くなる。
辻本「もっと」
太田が更に丸くなる。
辻本「もっと!」
太田が一層丸くなる。
辻本「分かりました」
クリップボードに筆記しながら、
辻本「引き篭もりです」
太田「あなたがやれ言うたんでしょ!」
②
辻本「上着を脱いでください」
太田「…?」
太田が上着を脱ぐ。
辻本「上着を着てください」
太田「…?」
太田が上着を着る。
何回が繰り返すうち、
太田「さっきから何させられてるんですか!」
辻本「分かりました」
クリップボードに筆記しながら、
辻本「反抗期」
太田「なんでですか!」
③
辻本「笑って」
辻本「泣いて」
辻本「怒って」
これを何度も繰り返させる、辻本。
辻本がクリップボードに筆記しながら、
辻本「情緒不安定」
信濃「さっきから何してるんですか!、ちゃんと診てください!」
辻本「冗談です」
辻本「診察時は緊張される方が多いので、緊張を解きほぐしているんです」
⑷
辻本「四つん這いになって、オナラをしてください」
太田がソファで四つん這いになり、辻本が聴診器を太田の肛門に当てる。
『ブー!』
辻本「ほほほっ!」
太田のオナラになぜか歓喜し、テンションが上がる、辻本。
『ブー!』
辻本「ほほほっ!」
『ブー!』
辻本「ほほほっ!」
辻本が聴診器を下げ、
辻本「、ヘロナです」
信濃「そりゃそうでしょ」
辻本「いえ、普通のオナラとは音が違います」
⑸
辻本が太田に対し、
辻本「注射を打つので手を出してください」
太田は袖のボタンを止めたまま。
辻本「なんで次の段取りしてないんですか?(苦笑)」
太田「…」
緩めでにこやかなダメ出しも、太田が慌てて袖を捲る。
⑹
辻本は舞台と客席両方に話すように、
辻本「ワクチンにはヘデルナとヘイザー、二種類あって、」
辻本「ヘイザーはすぐ埋まるんですけど、ヘデルナは警戒されがちです」
辻本「でも、どちらでも大丈夫です。打つことが大事です」
信濃「先生、注射は?」
辻本「忘れました」
信濃「えっ?」
辻本「直ぐ取ってきます!」
辻本がポケットから薬瓶を取り出し、太田に渡す。
辻本「注射を取ってくるまで、これでお願いします」
辻本「一時的に屁を止める薬です。屁が出なければ感染しませんので」
辻本「ただ、短時間しか効かないので注意してください」
辻本が急ぎ足で注射を取りに向かった。
⑺
信濃「全く、なんちゅう医者や!」
すると、辻本が下手袖から現れ、
辻本「辻本や!」
信濃「びっくりしたっ!」
辻本が去っていった。
その7に続く