(第三景)
⒏
⑴
たこ焼き屋台の大将・清水
新人アルバイト・すち子
高校生で、土産物屋店主の息子・岳夫
高校生で、旅館主人の娘・響
四名。
(舞台中央下手寄りから、岳夫、すち子、清水、響の立ち位置で)
岳夫と響の表情から、二人ともゲームで仲良くしていた相手が誰か気付いた様子。
すち「こんなこと、ある?」
すち「顔を合わせたら喧嘩。オンラインでは友達」
すち「二人、息ぴったりやん」
響が岳夫に対し、
ひび「『ちりめんじゃこ』って、ダサッ!」
岳夫「『スーパーボム』こそセンス無い!」
岳夫が怒り、土産物屋に消えていった。
⑵
すち子が響を諭す。
すち「ニコニコしとき」
ひび「ほっといてください!」
すち「そんな長いスカートしてたら、トラブルに巻き込まれるで?」
次の瞬間、ものものしい出囃子が流れ、
吉本高校の不良・小寺(小寺真理)と花子(山田花子)が現れる。
二人も昭和のスケバン風の格好をしている。
小寺「響って、居てる?」
すち「トラブル、すぐ来た!(苦笑)」
すち子が小寺と花子を見て、
すち「スケバンとバカボンや」
花子「誰がバカボンな~のだ?」
すち「バカボンやん」
⑶
響が前に出て、小寺たちに対し、
ひび「私やけど」
小寺「吉本高校でバン張ってるもんや」
花子がスカートを上げてバンドエイドを貼った膝を見せ、
花子「膝小僧にバン貼ってるもんや」
すち「そっちのバンかいな!」
(花子→小寺→←響・すち子・清水、の立ち位置で)
小寺が響に対し、
小寺「最近調子乗ってるみたいやから、シメにきた」
すち「ちょっと。あかんで!」
ひび「大丈夫。怖くない」
①
小寺が響に対し、
小寺「あんたの50ccバイク、どこにあるか分かってる」
小寺「そのバイクを別モンに変えてやる」
小寺が花子に指図するように、
小寺「どうなるか、言うたり!」
花子「あんたの50ccバイクを250ccにしたる」
すち「ようなってるやん!」
②
小寺が響に対し、
小寺「この夏、プールで際どい水着してたやろ?」
小寺「その写真をネットに晒す」
小寺「男がいやらしい目で見るやろうな」
小寺が花子に指図するように、
小寺「どんな目で見るか、言うたり!」
花子が小芝居を始める。
花子「ピンポーン」
花子「ネットで写真を見ました」
花子「芸能事務所なんですけど、うちからデビューしませんか?」
すち「アイドルのスカウトやん!」
③
小寺が響に対し、
小寺「夜道に気ーつけや。振り返ったら誰が居るやろうな!」
すち「そういうのが一番怖い」
ひび「誰が居るのよ?」
花子「私」
ひび「あんたら、私を笑かしに来たん? 全然怖くない」
⑷
騒ぎを聞き付けた岳夫が土産物屋から出てくる。
岳夫「どうした?」
すち「響ちゃんがスケバンに絡まれてる!」
岳夫「そうか」
岳夫が響に向けてスマホを構え、小寺たちに対し、
岳夫「その生意気な女(=響)、やったってくれや」
小寺が響の胸ぐらを掴むと、響が大袈裟に謝る。
ひび「ご、ごめんなさい!」
それでも小寺が響に殴りかかろうとすると、岳夫が小寺に対し、
岳夫「この動画、ネットに流してええんかな?」
岳夫「謝ってる相手に一方的に殴りかかったら、あんたの評判はどうなるか…」
岳夫に一本取られた小寺が響から手を離し、響に吐き捨てるように、
小寺「覚えときや! 表で歩けんようにしたる!」
小寺が早足で去っていった。
花子も響に対し、
花子「裏は歩けるで」
花子がゆっくり去っていった。
すち「なんやのん?、あの子」
とにかく、岳夫と響が機転を利かし、スケバンとバカボンを追い返した。
⑸
岳夫が小寺に喧嘩を嗾け、響が大袈裟に謝り、小寺に不利な状況を作ったことについて、
すち「凄いやん! 今の何!?」
岳夫「ゲームでやってるから」
すち「えっ?」
清水「…囮作戦とか?」
清水が岳夫の言葉を補うが、
それでも、追い返したこととオンラインゲームの関連をイメージし辛い台詞。
とにかく、岳夫の中では『ゲームの経験が活きた』、ということのようだ。
⒐
⑴
岳夫が機転を利かし、スケバンを追い返したことについて、
響が岳夫に対し、
ひび「助けてなんて言ってない」
岳夫「なんやねん!」
すち「ええ加減にしなさい!」
すち「なんやの?、あんたら。 あかんで、直ぐ喧嘩して」
すち「中学校の時は卓球大会ダブルスで優勝したように、ほんまは気ー合うねん」
すち「ゲームも気が合う」
すち「今も連携プレイでスケバンを追い払った」
すち「意地張らんと、仲直りし」
⑵
清水が岳夫と響に尋ねる。
清水「そもそも、何が原因で仲が悪くなったの?」
ひび「恥を掻かされた」
ひび「仲良くなったから、バレンタインでチョコと手紙を渡して」
ひび「『お付き合いOKならNGKに来てください』って書いて」
ひび「でも、来なかった」
ひび「私のこと、揶揄ってただけやったんやって思った」
すち「それはあかんわ」
岳夫「恥掻かされたんは俺の方や!」
しかし、すち子は岳夫の声に耳を貸さず、岳夫に対し、
すち「いいならいい。ダメならダメ。はっきりせんとあかん」
すち「お前ははっきりせんと逃げたんや!」
岳夫「聞けって!」
しかし、すち子は相変わらず岳夫の声に耳を貸さず、岳夫に対し、
すち「あかんで」
すち「始まりがあれば、終わりもある」
すち「別れ方汚いん、最低や!」
すち「訴えられるぞ!」
岳夫「なんで訴えられんねん! 黙れ!」
岳夫「俺の話を聞いてくれ!」
何度かやりとりして、ようやくすち子が静かになる。
⑶
岳夫が響に対し、
岳夫「恥掻かされたんは俺の方や」
岳夫「NGK、行ったよ!」
ひび「来てなかった!」
岳夫「そっちこそ来てなかった!」
すち「あの、NGKって…」
ひび「なんばグランド花月よ」
岳夫「えっ?、日本芸者協会やろ?」
すち「あんた(=岳夫)がおかしいわ。普通はなんばグランド花月や」
不仲になった原因がNGKの取り違えだったことが判明する。
※
補足
NGKでの待ち合わせについて
京都の海辺(=若狭湾沿岸)に住む高校生が
町から一緒に大阪難波のNGKまで出かけるならまだ理解できますが、
『告白OKなら難波のNGKで待ち合わせ』する姿はイメージし難いですね。
NGK略称ネタありきで物語が進んだことが推測できます。
⑷
そこに、日本芸者協会の諸見里が首にコルセットをして現れる。
諸見「しゅいましぇん」
すち「日本芸者協会の人や」
すち「首、どないしたん?」
諸見「あんたにやられたんでしょ!」
すち「この人に聞いたら、何の略かはっきりするわ」
すち子が諸見里に尋ねる。
すち「NGKって何の略?」
しかし、諸見里の答えはなんばグランド花月でも日本芸者協会でもなく、
諸見「人間こわ~い(=NGK)」
すち「まさかの!?」
諸見里が用事を思い出す。
諸見「AKBと会う予定があるんで、もう行きましゅね」
すち「えっ、アイドルと会うの?」
諸見「いや」
すち「ほな、AKBって何の略?」
諸見「尼崎のクソババア」
諸見里が去っていった。
諸見里がこのタイミングで自分から広場を訪れた理由は何も無く、
言わば、NGKが何の略か言わせるために作り手に連れてこられた場面。
⑸
すち「やけど、NGKの取り違えしてただけで、どっちも(相手に対して)気はあったわけや」
すち「誤解も解けたことやし、仲直りしー」
岳夫と響が向かい合う。
岳夫「ごめん」
ひび「私こそ」
岳夫「響ちゃん、改めて俺と付き合ってくれ!」
ひび「うん」
すち子の尽力で、岳夫と響が仲直りすることができた。
すち子と清水が祝福の拍手をし、観客も続く。
清水「良かった」
すち「私には一銭の得にもならんけど、まあ、良かったわ」
その8に続く