(第二景)
⒎
⑴
たこ焼き屋台の大将・清水
新人アルバイト・すち子
旅館主人・一の介
土産物屋の店主・梨奈
四名。
(舞台中央下手寄りから、梨奈、すち子、清水、一の介、の立ち位置で)
島田「上手いこといきませんね」
梨奈「やっぱり、じっくり待った方が…」
すち「こういうことは待っててもダメです」
清水「何かええ方法があれば…」
四人が思案していると、
土産物屋からヘッドセットを着け携帯ゲーム機を触る岳夫が現れる。
梨奈「岳夫、仕事手伝うて」
岳夫「今、忙しい」
梨奈「もう!」
梨奈と一の介がそれぞれの仕事に戻る。
⑵
岳夫が屋台まで来て、注文する。
岳夫「お腹空いたから…チーズのせ8個で」
すち子が岳夫に尋ねる。
すち「何のゲーム?」
すち「脱がすやつ?」
岳夫「脱衣麻雀ちゃう!」
すち「美人秘書を集めるやつ?」
岳夫「スマホゲームにあるけど!」
すち「土管繋げるやつで絶対こっちやのに、違う方繋げるやつ?」
と、YouTubeの再生前CMに出てくる謎のゲームを挙げる、すち子。
岳夫「それでもない!(苦笑)」
岳夫「バトクラや!」
すち「あんたもバトルクラウドやってんの?」
すち「プレイヤーネームは小魚?」
岳夫「違う!」
すち「稚魚?」
岳夫「違う!」
すち「ほな、何?」
岳夫「『ちりめんじゃこ』や」
すち「(っ)小魚やないかい!」
すち「(っ)小魚やないかい!」
と、わざとらしいツッコミを二度繰り返す。
岳夫「なんや、その言い方。(苦笑)」
⑶
岳夫がカウンターチェアに座り、携帯ゲームを再開する。
岳夫がバトルクラウドでプレイしているのは、
フレンド登録した仲間と二人一組で戦い勝利を目指す、タッグマッチモードらしい。
岳夫「通信、始まった」
岳夫がフレンド登録した通信相手とボイスチャットで会話する。
岳夫「今日もお願いします!、スーパーボム(orドム?)さん」
相手のプレイヤーネームはスーパーボムのよう。
岳夫「…?」
岳夫「あれ?、Wi-Fi弱いんかな?」
岳夫が慌てて土産物屋に戻る。
⑷
今度は、旅館からヘッドセットを着け携帯ゲーム機を触る響が現れる。
響もフレンド登録した通信相手とボイスチャットしているようで、
ひび「今からたこ焼きを食べますね!」
響がプレーン8個を注文し、カウンターチェアに座り、携帯ゲームを再開する。
ひび「ちなみに、『ちりめんじゃこ』さんは今日、何を食べますか?」
すち・清水「…!」
顔を合わせると喧嘩ばかりしている岳夫と響がオンラインゲームでは仲良くしていた。
岳夫が携帯ゲーム機の画面を見ながら現れる。
岳夫「僕もたこ焼きなんです」
ひび「ほんとですか!?」
お互いに携帯ゲーム機の画面を見ていて、近くで喋っていることに気付いていない。
⑸
長椅子前にいる清水・すち子を挟み、
下手側のカウンターチェアに岳夫が、上手側のカウンターチェアに響が座る。
携帯画面に目が釘付けの岳夫と響はお互いの存在に気付かないまま、
マッチングが終わり、タッグマッチのゲームスタート。
岳夫「ナイスです!」
ひび「サンキューです!」
岳夫「ナイスリカバリー!」
同じ場所に居ながら、ボイスチャットで声を掛け合う、二人。
すち・清水「…」
岳夫「敵に回り込まれてます!
ひび「囮作戦、行きますか!?」
岳夫「分かりました!、僕が行きます!」
同じ場所に居ながら、ボイスチャットで連係プレイする、二人。
すち「何で気付かへんの?」
すち子が二人の座る(ローラー付きの)椅子を動かし近付ける。
岳夫の方の椅子は荒々しく動かし、何度か転び落とすが、
岳夫はゲームに夢中で気にしていない様子。
すち子によって岳夫と響が横並びにされた状態でも、
お互いの存在に気付かずゲーム画面に夢中なままの二人。
岳夫「よし!」
ひび「囮作戦、成功ー!」
岳夫・ひび「一位、やったー!!」
と、ここで初めて二人が顔を見合わせる。(=岳夫→←
響)
流石にゲームの相手が誰か気付きそうなものだが、
次の瞬間、岳夫が客席の方を向き、
ボイスチャット中のプレイ仲間・スーパーボム(=響)に笑顔で
岳夫「スーパーボムさん!、たこ焼きのお味はいかがですか!?」
清水「なんで分からんねん!!」
暗転
※
補足
オープニングで見慣れぬカウンターチェアを下げない大将の行動に違和感を覚えましたが、
このオチのために用意されていたわけですね。
考えてみれば、日差しの強い広場で、携帯ゲーム機でオンラインゲームも違和感がありますよね。
時間までに食事を済ませ、Wi-Fi環境が整い画面も見易い屋内でプレイする方が遥かに自然です。
その7に続く