『すち子の、コンビの力で敵を撃て!』
[セット紹介]
海辺の観光地の広場
舞台中央奥…たこ焼き屋台、長椅子、長椅子の左右にローラー付きカウンターチェア
舞台下手端…土産物屋兼自宅の入り口
舞台上手端…旅館兼自宅の入り口
シンプルなセットです。
新人・咲方響さんによる演者紹介の後、暗転。
「♪ホンワカパッパ~」で開幕。
[物語]
(敬称略)
⒈
⑴
舞台は、海辺の観光地の広場。
中央奥にあるたこ焼き屋台で、大将・清水(清水けんじ)が開店準備をしている。
屋台の長椅子の位置を整え、
清水「よーし、今日も頑張ろ」
清水「厳しいご時世やけど、お客さん来てくれたらええな」
※
補足
①
屋台長椅子の左右に場違いなバー用カウンターチェアがあり、
大将は見慣れない椅子に違和感を抱いていたことが後に明かされますが、
開店準備のこの場面では「なんやろ、これ?」といった台詞は無く、
カウンターチェアを一旦奥に除けるといった行動も取りません。
②
全体を通し、登場人物の言動が非常に不自然で、
オチありきで、自分の意思に反して無理矢理動かされている印象を抱きました。
ただ、すっちー座長回はすっちーさんのアドリブが一番の見どころであって、
非の打ち所がない物語は二の次なのでしょうね。
物語説明上、理解し易くするため、私が抱いた違和感や矛盾点にその都度触れておりますが、
あまり気になさらず、すっちーさんのアドリブを中心にお楽しみください。
⑵
スーツ姿の男性・諸見里(諸見里大介)がやってくる。
諸見里は清水に対し、
諸見「しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ」
と、シャ行を捲し立てる。
清水「えっ?」
清水「あの、ごめんなさい。全く聞き取れない」
清水「もう一回、お願いできますか?」
諸見「しゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ」
と、またシャ行を捲し立てる。
清水「ちょっと、全然分からない。(苦笑)」
清水「滑舌、悪くないですか?」
諸見「かちゅじぇちゅ、いいんでしゅけど」
清水「なら、ア行から言うてもらえます?」
と、サ行を握りつぶすくだりに。
諸見里は観客が聴き取り易いよう、次第に自然なシャ行を話し始める。
※
注記
ここからは物語説明上、シャ行は省略気味に記します。
多少シャ行になっていますので、変換してお楽しみください。
⑶
諸見「しゅいましぇん、たこ焼き注文してもいいでしゅか?」
清水「あっ、お客さん?」
諸見「配達もお願いしたいんでしゅけど」
清水「わかりました」
①
屋台には、『しお、しょうゆ、ソース、プレーン』と味を印した紙が貼られている。
諸見「色々、種類があるんでしゅね」
諸見「そしたら、」
諸見里が考えながら、
諸見「ショース(=ソース)、10個」
清水「?、しょーす?」
諸見里がソースと書かれた紙を指差しながら、
諸見「ショース(=ソース)!、10!」
清水「ああ、ソース10ね」
諸見「しょうす(=そうす=そうっす=そうです)」
清水「ソース追加?」
諸見「そしたら、まとめて言うでしょ!?」
②
諸見「醤油、12個」
清水「えっ、ソース?」
諸見「醤油は分かるやん。(苦笑)」
清水「あっ、醤油! 醤油12ね」
諸見「しょうす(=そうす=そうっす=そうです)」
清水「また、ソース追加?」
諸見「だから、それやったらまとめて言いますやん!」
清水「分からんから、『そうす』の時はこうして?」
と親指と人差し指でOKサインを作る、清水。
③
諸見「塩、10個」
清水「塩10?」
諸見里がOKサインを作りながら、
諸見「しょうす(=そうす=そうっす=そうです)」
清水「ソース追加で」
諸見「終わらねえわ!(苦笑)」
諸見里は悪戦苦闘しながら、
『ソース味10個・醤油味12個・塩味10個』を清水に伝えることができた。
⑷
清水「お届け先は?」
諸見「しゃきょう区しゃんしゅう寺町しゃん丁目しゃんじゅうしゃん番」
清水はお手上げ状態で、
清水「もう書いてください!」
と、メモ帳とペンを諸見里に渡す。
諸見里が『左京区讃州寺町3丁目33番』と記し、清水に返す。
清水「お届け時間は?」
諸見「しゃん時(=3時)」
清水「瞬時は無理です」
諸見「瞬時やったら持って帰るでしょ!?」
自分の頭を人差し指で何度も差しながら、
諸見「(頭、)おかしくない?」
諸見里が親指・人差し指・中指で3を作り、
諸見「しゃん時(=3時)!」
清水「あっ、3時ね」
清水「…、独特な『3』ですね。(苦笑)」
⑸
諸見「お代は」
清水「えー、全部で二千円になります」
諸見里が五千円を渡す。
清水「すぐ、お釣りを…」
と、屋台裏に行くがお釣りが無い様子。
清水「昨日から入ったアルバイトに両替頼んだんですけど、まだ来てなくて…」
清水「昨日も今日も遅刻してるんです」
お金を扱う仕事は大将自身が行うのが一般的に思えるが、
アルバイト2日目、しかも初日から遅刻するような人間に両替を任せた、清水。
導入部では徹底して自然な設定に拘る信濃岳夫リーダーのようなケースもあるが、
基本的に、吉本新喜劇では不自然な設定・台本を気にしてはいけないのだろう。
その3に続く