俊彦の妻・幸恵と母・美由紀が険悪な雰囲気になっているところで、
下手袖から大きな足踏み音が聞こえてくる。

観客の期待通り、口髭の黄色スーツ・荒木アキ(アキ)が勢いよく登場し、
お店入り口の境で立ち止まる。
アキ「はぁ、はぁ…アセアセ

幸恵と美由紀が口喧嘩を止め、俊彦やレイと共にアキを注視する。
俊彦・幸恵・美由紀・レイ「…?キョロキョロ

アキは無言でゆっくり首を横に振り、今度はゆっくり頷き、
そして客席上方を見上げる。 笑い泣き
俊彦・幸恵・美由紀・レイ「…?キョロキョロ

引き戸にもたれ、少しの無言の時間を過ごした後、
アキ「何~?口笛」 笑い泣き


俊彦「長ない!?」
アキ「長い~い?(=長い?)キョロキョロ」 笑い泣き
俊彦「発音がおかしい。(半笑)」

俊彦「『何?』はこっちが聞きたい」
アキ「確かに、やって来て、こっちから『何?』はおかしいな」
アキ「(そっちの)『何?』泥棒したタラー」 笑い泣き
俊彦「何泥棒?(半笑)」
アキ「そや、何泥棒。…何泥棒ってなんじゃろか?キョロキョロ」 笑い泣き
俊彦「知らん! あんたが勝手に言うたんや」
アキ「しっかりしましょうよ!プンプン
俊彦「そっちがしっかりしてタラー
アキ「私がしっかりしましょうよ!ムキー」 笑い泣き
俊彦「えっ?、自分に言い聞かせてたん?(苦笑)」 笑い泣き


アキは飲食目的でお店を訪れたわけではないようで、
荒木エージェンシーの者だと俊彦に告げる。

俊彦に促され、アキがテーブル席下手側に腰掛ける。

俊彦が上手側に座る。

アキ「クライアントに依頼され、我が社が交渉に参りました」
アキ「クライアントは多数の飲食業を経営していて、」
アキ「こちらのお店のカレーうどんを全国展開したいと考えています」
アキ「そこで、スパイスのレシピを売っていただけないでしょうか?ニコニコ


俊彦「お断りします」

俊彦「この店のカレーうどんは、先代の祖父が小麦粉やバターを使わず、」
俊彦「20種類以上のスパイスを試行錯誤し、半年間寝かせて完成したものなんです」
俊彦「チェーン展開すると味が落ちるに決まってますプンプン

アキ「納得していただけるだけのお金はご用意しておりますニコニコ
俊彦「お金の問題じゃないんですプンプン

アキ「そう仰らずにニコニコ
俊彦「帰ってください」
アキ「そこをなんとかニコニコ
俊彦「帰って!えー
アキ「お願いしますニコニコ
俊彦「帰れって言ってるでしょ!プンプン
アキ「そうかーっ!!ムキー
と、手にしていたバッグを思い切りテーブルに叩きつけ、立ち上がる。
俊彦「びっくりしたーっ!びっくりアセアセ

俊彦も立ち上がる。

アキ「びっくりした?、俺もびっくりした。大きい音、苦手やから」 笑い泣き
俊彦「自分でやっといて?」
アキ「嘘じゃ、ボケ!ニヤリ
アキ「嘘じゃ!、何がじゃ!ニヤリ」 笑い泣き
俊彦「…?」
ボケの一つ一つに独特の雰囲気を醸し出す、アキ。


アキ「下手に出たら、いい気になりやがってえー
と、俊彦の胸ぐらを掴む。

すると、レイが二人の間に割り入り、アキに対し、
レイ「手荒な真似はやめてください!プンプン

レイは上手に居る俊彦に近づき、耳打ちするように、
レイ「ここは僕に任せておいてくださいウインク
俊彦「大丈夫か?」
レイ「こう見えて、昔、ヤンチャしてたんでニヤリ あんな奴、一発で倒してやりますよ」

アキとレイが対峙する。
レイ「どう仕留めてやろうかなあ!ニヤリ
ここはレイの『どうにもとまらない』替え歌ネタの場面。
レイがアキに殴り掛かるフリをする等、歌詞に合わせた動きをしながら、
レイ「♪ああ、殴ろうか それとも、蹴りか」
レイ「♪せっかくなら かーっこよく 決めたい」
レイ「♪頭突きもいいし エルボーもいいし」
レイ「♪もう、どうにもまとまらない!ガーン
最後は頭を抱えてしゃがみ込む。 笑い泣き
皆「…!?」

俊彦「迷ったんか?(呆れ)」
レイ「まとめてきますタラー」 笑い泣き
レイが後ろに下がる。

アキ「時間を返せーっ!!ムキー」 笑い泣き
俊彦「あんたや! 『何~?』のとこが一番長かったタラー」 笑い泣き笑い泣き
アキ「…フフフチュー 何笑とんじゃい!ムキー」 笑い泣き
俊彦は全く笑っておらず、
俊彦「あんたやタラー

アキ「じゃあ、巻き返すニヤリ」 笑い泣き

俊彦「巻き返す?(半笑)」 笑い泣き


アキが改めて俊彦に殴り掛かろうとする。
アキ「売らんかったらどうなるか、キッチリ教えたろやないかいっ!!ムキー

すると、マイケル・ジャクソン『Bad』が流れ、ダンスタイムに。
昨年からリアルで身体を鍛え上げていることもあり、
ムーンウォークでは感嘆の声が起こる等、
ここ数年ではベストパフォーマンスクラスのキレキレのダンスを見せるキラキラ

♪Who's bad
で舞台中央最前で客席にアピールするようにポーズを決める、アキ。

アキは演歌歌手のように声を出さず「ありがとうございますおねがい」と口を動かし、
人差し指で涙を拭うふりをした後、
アキ「めっちゃ幸せやんおねがい照れキラキラ
そう言いながら、観客に幸せを振り撒く、アキ。

俊彦がアキを現実に引き戻す。
俊彦「あの、一人で何してるんですか?タラー
アキ「着信音が鳴ったら踊ってしまうんや。マイケル・ジャクソン好きやから」
アキ「嘘じゃ!ニヤリ
俊彦「何が嘘?(半笑)」 笑い泣き

アキ「(今のダンスで)時間、巻き返したニヤリ」 笑い泣き笑い泣き
俊彦「巻き返せてはない。(苦笑)」 笑い泣き笑い泣き


アキ「ちょっとだけ時間やるえー
アキ「ワシはしつこいでっせニヤリ どないしても売ってもらうからなえー

アキが去っていく。
下手端で立ち止まり、振り返って、
アキ「あっ、そうや。大事なこと言うん忘れとった」
アキ「全員、しっかり聞いとけよ!プンプン

アキが話のたびに手で区切りながら、首を傾げ考え込むように、
アキ「8時まではお酒を飲んでもいいです、8時からはダメです

アキ「6人はダメです、3人3人に分けたらいいです…」
アキ「東京と大阪はダメです、京都はいいです…」
アキ「野球とサッカーはいいです、オリンピックはダメです…」
アキ「…」
アキ「どういう線引き!?えー」 笑い泣き
観客の日頃の鬱憤を晴らすかのようなトークに一際大きな拍手拍手拍手が起こる中、
アキが颯爽と去っていったニヤリ

 

 



アキが帰った店内。

うどん屋大将・俊彦
俊彦の妻・幸恵
俊彦の母・美由紀
アルバイト・レイ
4名。

レイ「幸恵、塩撒いとけ!プンプン」 笑い泣き
俊彦「誰が言うとんねん!タラー

みゆ「あんなの(=アキ)が来るのも、幸恵さん、全部あんたのせいよ!プンプン
幸恵「私のせい!?」
みゆ「まだ気付いてへんの!?えー
みゆ「あんたが嫁に来たせいで、我が家の運気はガタ落ちや!プンプン
幸恵「私は関係無いと思いますけどえー
みゆ「また口答えや!プンプン

みゆ「こんな嫁もらって恥ずかしいわ!プンプン
幸恵「恥ずかしいのは、お母さんの顔でしょ?ニヤリ」 笑い泣き笑い泣き
幸恵が絶対なタイミングでクールに返す。

みゆ「あんたの根性、汚いわねー!プンプンアセアセ
幸恵「汚いのは、お母さんの顔でしょ?ニヤリ」 笑い泣き笑い泣き
幸恵がまたクールに返す。

みゆ「あんた、酷いよねーっ!プンプンアセアセアセアセ
幸恵「酷いのは、お母さんの顔でしょ?ニヤリ」 笑い泣き笑い泣き
幸恵がまたクールに返す。

みゆ「全部顔に持っていくなーっ!!ムキーアセアセ」 笑い泣き

美由紀が更に幸恵に対し、
みゆ「そう言えば、今度の旅行の件やけど」
みゆ「私も一緒に行く言うたら、俊彦に断るように言うたらしいわねえー
俊彦「ちょっと!アセアセ、誰からそんなこと聞いたんや!」
みゆ「レイ君から聞いたわニヤリ

すると、レイが『何要らんこと言うてるんや!プンプン』のニュアンスで、
レイ「レイ君っ!えー
俊彦「お前や!」 笑い泣き
レイが小さく謝る。

幸恵が美由紀に対し、
幸恵「結婚記念日の旅行なのよ?、夫婦水入らずの時間も欲しいじゃないショボーンアセアセ

みゆ「やっぱり、俊彦に言うたんや!プンプン

みゆ「俊彦は私にとってはいつまで経っても子供や!プンプン
みゆ「それに、店の稼ぎで行く旅行について行って、何が悪い!プンプン

みゆ「そりゃ、孫の一人でもいれば、喜んで留守番するわよ?えーニヤリ

みゆ「でも、いつまで経っても孫ができんのは、出来の悪い嫁のせいや!プンプン
幸恵「はぁーっ!?プンプン
幸恵「性格の悪い誰かさんにイヤミばかり言われて、毎日ストレスなのよ!プンプンアセアセ
みゆ「なんやーっ!ムキー

幸恵「なんやーっ!ムキー

美由紀と幸恵が取っ組み合いになりかけると、慌ててレイが間に入る。
レイ「二人とも!プンプンアセアセ…」
レイ「、ファイト!ニヤリ」 笑い泣き

俊彦「焚き付けるな!アセアセ


みゆ「このおはぎ、しゃあないから食うたるわ!えー
美由紀が上手端通路に消えて行った。
俊彦「結局、食べるんかい!」

幸恵は苛立ちながら厨房に向かう。
幸恵「腹立つー!、もーっ!(イライラ)ムキーアセアセ

厨房前の壁を「ドンッ!」と蹴り、奥に消えていく、幸恵。
俊彦「蹴ったらあかん!アセアセ

なぜか、レイも厨房に向かいながら、
レイ「やってられへんわーっ!(イライラ)ムキーアセアセ
と、厨房前の壁を「ドンッ!」と蹴り、奥に消えていく。 笑い泣き

俊彦「なんでお前がキレてんねん!」


俊彦、一人。
俊彦「えらいことや…(トホホ)タラー

 

 

その4に続く