⒍
⑴
売店アルバイト・茂造
売店店長・大島
売店アルバイト・永田
院長・高井
医師・北代
看護師・幸恵、花子
七人。
診察室通路から、看護師の悠花(小井塚悠花)が慌ててロビーに出てくる。
悠花は高井に対し、
悠花「院長!、手島組の組長が襲撃されて頭を負傷したとの電話がありました!」
悠花「車で病院に向かっているそうです!」
高井「手島組…?」
茂造「手島組言うたら、ここ一帯を仕切ってるヤクザやないか!」
高井「小井塚さんは病室の準備をお願いします!」
高井「幸恵さんはMRIの連絡を!」
高井「北代先生は手術の準備をお願いします!」
悠花が下手奥通路に、北代と幸恵が下手端中央通路に消える。
⑵
手島組の組長・手島(手島英治)が
若頭の吉田(吉田佳)に脇を抱えられながら現れる。
手島は右頭部を押さえ、痛そうにしている。
吉田「手島組のもんや!」
手島は赤のシャツを着て、髭を生やし、野生的に見える。
吉田は黒スーツに白ネクタイ姿。高身長で、精悍な顔つきをしている。
吉田が手島を中央の椅子に座らせ、状況説明する。
吉田「ドスで襲撃されて、ドスはかわしたが転んで頭を打ちつけてしまった」
吉田「あのっボケ、一体、どこの組のもんや!」
手島「返り討ちにしてやったわ!、ワッハッハ!」
手島が高笑いしていると、茂造が手島の頭を叩く。
手島「痛っ!」
手島が茂造を睨み付け、
吉田が茂造に詰め寄ろうとすると、
茂造「病院のロビーなんで、大きな声で笑うのはダメです」
吉田「…っ」
吉田が引き下がる。
⑶
高井が手島に検査入院を促す。
吉田「襲撃場所が近いから、ここはバレるかもしれません!」
吉田「落ち着いたら、別のところにした方が…」
手島「大丈夫や!」
吉田「ドスやったから良かったものの、ピストルならどうなっていたか…!」
すると、茂造が杖で壁を強く叩き、
『ドンッ!』
と、(ピストルの音に見立てた)大きな音を立てる。
その瞬間、手島が心臓発作を起こし、
心臓を押さえながら、苦しい顔をする。
高井「心臓発作や!」
高井「気を失って、身体が硬直してる!」
高井「横に寝かせましょう!」
四角の椅子を四つ、横一列に並べて、手島を仰向けに寝かせる。
高井「花子さん、AEDをお願いします!」
花子「分かりました!」
花子が下手端中央通路に消える。
⑷
茂造「硬直してるかどうか、椅子を取って試してみよう」
茂造と大島が、手島が仰向けになった横一列の椅子四つのうち真ん中の椅子を二つ取り、
手島の頭と膝から下だけが椅子に乗った状態にする。
必死で耐える、手島。
茂造が観客に対し、
茂造「組長の声が聞こえてないと思うんで、説明します」
茂造「『コココココ』、言うてます。(苦笑)」
茂造「大丈夫か?」
杖で手島の腹を押さえつけ、床に落とそうとする、茂造。
茂造「もう、止めとこか。(苦笑)」
皆で急いで椅子二つを元に戻し、手島を楽にさせる。
高井「遊んでる場合ちゃう!」
花子と幸恵がAEDを運んできて、手島に装着する。
⑸
『ピッ ピッ…』
幸恵が心電図を見て、
幸恵「心拍、弱ってます!」
『ピーーー』
高井「手島さん!」
吉田「組長!」
その時、茂造がスマホを取り出し、
茂造「もしもしー」
高井「着メロかいっ!」
⑹
『ピッ ピッ…』
幸恵が心電図を見て、
幸恵「心拍、弱ってます!」
『ピーーー』
今度は、茂造の着メロではない様子。
高井「手島さん!」
高井が両手にパドル(アイロンのような形のもの)を持ち、
ゲルを擦り合わせ、
手島に押し当て、『ブッ!』という鈍い音をさせ電気ショックを与える。
高井「意識が戻らん!」
茂造「ワシに任せてください!」
茂造は売店に行き、バーコードリーダーを両手に持ち、戻ってくる。
バーコードリーダーの読み取り部分を擦り合わせる、茂造。
大島「意味ないやろ!」
茂造が手島の身体にバーコードリーダーを押し当てる。
『ピッ!』
すると、手島が意識を取り戻す。
大島「嘘やろ!?」
高井「心肺、再開しました!」
吉田「良かった」
⑺
吉田のスマホに着信音がし、吉田がロビー下手の方を向く。
茂造「病院のルールを守れ!、常識無い!」
大島「どの口が言うとんや!」
吉田が電話に出る。
吉田「もしもし」
吉田「花月病院です」
吉田「お待ちしております」
吉田が電話を切る。
手島が吉田に尋ねる。
手島「なんや?」
吉田「組長のお嬢様が心配して、病院に来てくださるそうです」
手島「家から出てきてくれるのか…」
茂造「『家から出てきてくれる』って…?」
吉田「お嬢様は婚約者に酷いフラれ方をした」
吉田「そのショックで塞ぎ込み、部屋から出られなくなってしまった」
手島「食事も喉を通らず、今にも折れそうなほどの体になってしまった」
手島「結婚の約束までしたのに、可愛い娘を捨てて逃げやがって!」
手島「あいつを見つけたら、許さんぞ!」
吉田「組長より前に、俺がぶち殺してやる!」
手島「吉田、頼んだで!」
⑻
悠花が(下手奥通路から)戻ってくる。
悠花「病室の準備が整いました」
茂造「病室に行くの、お手伝いします」
手島「ジジッイの世っ話っには、ならん!」
手島が台詞を噛む。
茂造「まともに喋られへんのか!(苦笑)」
茂造「命、助けてやったのに!」
茂造「こうや!」
と、パドルを両手に持ち、手島の頭に当て、電気ショックを与える。
変顔で全身を震わせる、手島。
茂造が幸恵に対し、
茂造「幸恵ちゃん、座ってくれる?」
幸恵「…えっ?」
幸恵が椅子に座り、
茂造が幸恵の頭にパドルを当て、電気ショックを与える。
大股でスパッツを見せ、変顔で全身を震わせる、幸恵。
大笑いする客席に、
茂造「ウケた、ウケた」
茂造が立っている花子の頭にパドルを当て、電気ショックを与える。
ペコちゃんのように舌を出しながら、震える、花子。
茂造「やっぱり、こいつが一番面白いな」
⑼
幸恵が手島に対し、
幸恵「病室に案内します」
と、吉田と手島を階段に誘導する。
吉田「組長、大丈夫ですか?」
手島「心配無い。先、行け」
幸恵と吉田が階段を登りきり、手島の順番になる。
途中で、茂造が壁を叩き、階段を坂に変えるが、
手島は両端を掴み、登り切る。
手島が不敵な笑みを浮かべ、消えていった。
茂造が壁を叩き、階段に戻す。
茂造は客席を見ながら、
茂造「あいつ、空気読まんの!」
茂造「腹立つわー!」
茂造「今日中にあいつを落とします!」
茂造「今日中に落とす宣言!」
と、人差し指を突き出した右腕を綺麗に(客席から見て)反時計回りに回し、
頭上で止める。
茂造「今日中に落とす宣言!」
最後は囁くように、
茂造「宣言」
⑽
高井「茂造さん、さっきの何!?」
茂造「防犯システムや」
高井「なら、いいです」
大島「いいんですか!?」
北代が処置室の通路から現れる。
北代「手術の準備ができました」
高井「一先ず、大丈夫です」
その7に続く