⒌
⑴
売店アルバイト・茂造
売店店長・大島
売店アルバイト・永田
院長・高井
看護師で院長の娘・幸恵
看護師・花子
六人。
松本が首を押さえながら、リハビリ室から戻ってくる。
松本「痛たた…」
花子「リハビリ、終わったんですね」
松本「はい」
⑵
ヤクザ風の出囃子が流れ、
ダダダダ…と大きな足音を立て、下手入り口通路から誰かがやってくる。
現れたのは、黄色い借金取り・アキ(アキ)。
アキ「ハァ…、ハァ…」
客席から大きな拍手が起こる
大島がアキに応対する。
アキは息を整えた後、
アキ「なに~?」
大島「急に来て『なに~?』はおかしいです!」
アキ「急に来て『なに~?』はおかしいな。緊張してたみたいや、アッハッハ」
大島「…」
アキ「何、笑とんじゃい!」
大島「笑ってませんけど…」
アキ「笑うてないんか。ややこしい顔やで」
アキ「ちゃんとしようぜー!」
大島「ちゃんとしてます」
アキ「その顔でちゃんとしてるんか?、…フフフッ」
大島「…」
⑶
アキ「ちょっと待っとけ!」
アキ「もう一人、連れてきてるから」
アキが入り口に呼び掛ける。
アキ「おーいっ!」
ダダダダ…と大きな足音を立て、下手入り口通路から誰かがやってくる。
現れたのは、緑の借金取り・森田(森田展義)。
森田「なに~?」
観客の大きな拍手が起こる
アキ「今、俺が言うた~!」
森田「えっ、アニキ、『なに~?』言うたんすか!?」
アキ「同じこと言うた~!」
森田「アニキに呼ばれたから、『なに~?』って言うたんすけど」
アキ「さっき言うた~!」
森田「さっき言うたんすか!?」
森田「むちゃくちゃ恥ずかしい」
顔を押さえる、森田。
森田の顔にポンポンと触れる、アキ。
仲睦まじく戯れ合う二人。
アキ「もう~、お前は~!」
アキが森田の腰に手を回し、抱き上げる。
森田が嬉しそうにする。
アキと森田は急にテンションを戻し、大島を睨みつけ、
アキ・森田「何、笑とんじゃい!」
大島「全く…」
⑷
(森田・アキ→←大島・松本・茂造、という立ち位置で)
アキが松本に対し、
アキ「おい、松本ーっ!」
茂造「なに~?」
茂造がアキと森田に近付く。
茂造「今、『辻本』言うたから!」
アキ「俺、『松本』言うた~」
茂造「えっ、松本言うた?」
アキ「『なに~?』も俺が言うた」
茂造「言うた?めっちゃ恥ずかしい」
三人でキャッキャウフフする。
茂造・アキ・森田は急にテンションを戻し、大島を睨みつけ、
茂造・アキ・森田「何、笑とんじゃい!」
大島「茂造さんまで加わって!」
大島「こっちに戻ってきてください」
茂造が上手に戻る。
アキ「ジジイ、勝手に入ってくんな!」
茂造「さっき、喜んどったやん!…二重人格や」
⑸
アキが松本に対し、
アキ「借金の300万、早よ返さんかい!」
松本「真面目に働いて返そうとしたんですけど、」
松本「交通事故で入院費も嵩んで」
アキ「知らんな!」
松本「もう少し待ってください!」
アキ「返されへんちゅうんかい!」
アキ「おい、森田!払わんかったらどうなるか、教えたれ」
森田「えっ…、ワシがすか?(苦笑)」
アキ「変な入り方すな(=「わかりました!」で入れや)」
森田が松本に対し、
森田「地獄を見てもらうぞ!」
松本「えっ?」
森田「自慢の拳で地獄を見せたらーっ!」
森田が拳を振り上げ、松本に殴りかかる
…と見せかけて、
森田「♪アンコ~便りはぁぁぁぁ~っ」
と、『アンコ椿は恋の花』を歌い始める、森田。
松本「そっちのコブシかい!」
松本が弱いツッコミで森田を払いのけ、
森田が倒れこみ、恥ずかしそうにする。
一人の観客だけが暫くの間、大きな拍手を続ける
茂造が森田に近付き、
茂造「お前が地獄見とるやないか!てっぺんハゲ!」
茂造「お前のたった一人の熱狂的なファンが大拍手してくれた。(苦笑)」
茂造「普通は拍手は広がるもんや」
茂造「広がらんから、熱狂的ファンも諦めて拍手を止めた。(苦笑)」
茂造「帰れ、カッパーッ!」
森田「帰りたいよ…(涙)」
⑹
騒ぎを聞きつけ、北代医師が診察室から現れる。
アキが森田に対し、
アキ「下がっとれ!、俺が行くー!」
アキが松本に対し、
アキ「返さんかったらどうなるか、きっちり教えたろやないかい!」
アキが松本に殴りかかろうとすると、『Bad』が流れ、
アキが軽快に踊り出す。
直ぐに『夢想花』に切り替わり、大島がアキをテーブルへと促す。
アキがテーブルに上がり、
大島・森田・永田・北代がテーブルの担ぎ役を務め、
『飛んで飛んで』のネタに。
観客も手拍子で盛り上げる。
アキ「一回、降ろして!」
四人が疲れてきて、茂造の方を見る。
四人とも茂造の着メロと気付いている体。
しかし、茂造は客席上方の一点を見つめ、顔を動かさない。
アキが手を叩き、大島たちが床に足を叩きつけ、音で茂造にアピールするが、
茂造は微動だにしない。
すると、観客が手拍子を強め、飛んで飛んでの継続を要望。
再びアキが宙に舞う。
アキ「降ろせって!」
アキは大島の髪の毛を掴んでバランスを取る。
大島がアキの手を離そうと頭を動かすと、
アキは大島の髪を毟り、森田の頭頂部に振りかけて植毛しようとする。
茂造はアキ達の方を見て、嬉しそうにしている
『飛んで飛んで』を何度も何度も繰り返し、
四人がアキの乗ったテーブルを持ち上げる力が無くなってくる。
ようやく、茂造がスマホを取り出し、
茂造「もしもしー」
五人が倒れこみ、肩で息を整える。
全員の頑張りに優しい顔で拍手する、茂造
⑺
大島が茂造に対し、
大島「電話やったら、早よ出ろや!」
大島「全員、死にかけたわ!」
大島は観客に対しても、
大島「おたくらも共犯ですよー!」
アキと森田が起き上がる。
アキは森田のお尻を押すように蹴り倒し、八つ当たり。
アキが茂造に対し、
アキ「お爺さん!」
茂造「はあい」
アキ「『はあい』じゃないでしょ!」
アキ「何、その、お風呂から出てくる感じ!」
アキ「どこ見てたの、ずっとーっ!」
茂造「え~…、谷さん」
アキ「音響の人やないか!」
アキ「鳴らすタイミングとか、音響室とか、今どうでもいいでしょ!」
アキ「見たかったら、プライベートで見て!」
ここから、
・下手床の×印→アキ「一ヶ月前から練習してたでしょ!」
・手首の強い地域、弱い地域
等のネタの後、
アキ「お爺さん、早よ止めなあかんやろ!」
茂造「すいません!」
アキ「いぃよぉ~」
久々の二人での『いぃよぉ~』に観客が大きく沸く。
大島「いいんですか!?」
アキ「いいよー」
アキ「お爺さんが『すいません!』って言ったら、『いいよー』って」
アキ「話を続けます」
大島「…マイペースやな」
⑻
アキ「返せっちゅうとんじゃい!」
松本「少しだけ待ってください!、知り合いにも当たりますんで!」
アキ「しゃあないな!…ちょっとだけ待ったるわ」
アキ「返済の段取りが付いたら、連絡してこい」
アキ「森田、行くぞ!」
アキが先に去る。
⑼
森田が松本に対し、
森田「返せへんかったらどうなるかわかってるやろな!?」
茂造「どうなるんですか?」
森田「えっ?(苦笑)」
逃げる森田を茂造が連れ戻す。
茂造「返せへんかったら、どうなるんですか?」
茂造「松本さんも知っときたいと思うんで」
松本「はい」
茂造「どうぞ!」
森田が松本を指差し、
森田「返せへんかったらー!、」
森田「お前の自転車のサドル、前と後ろを反対にするぞ!」
全員「…(苦笑)」
展開上スベるべき場面で絶妙にスベる、森田。
すると、アキが戻ってきて、
アキ「お笑い、苦手なん?」
茂造「あんた、お笑い、苦手なん?」
茂造が演者に促し、
茂造「あんた、お笑い、」
演者「苦手なん!」
茂造が観客にも促し、
茂造「あんた、お笑い、」
全員「苦手なん!!」
茂造が客席を見て、
茂造「めっちゃ参加するやん!()」
森田が観客に対し、
森田「苦手ですよーっ!」
と言い、逃げ去っていった。
茂造が入り口通路に対し、
茂造「次来る時は覚えとけよ!」
茂造が北代に尋ねる。
茂造「お笑い苦手なんは、お医者さんでも治せませんか?」
北代「治せません」
⑽
松本が高井たちに謝る。
松本「ご迷惑をお掛けしました」
松本「妻に相談してきます!」
松本が下手奥通路に消えた。
その6に続く