信濃・まりこ・安尾、三人の場面。

安尾がカメラを確認する。
安「カメラは使えそうです」
安「落とした時の衝撃で、データは消えてしまいましたが…
タラー

信「プロデューサーにバレたら、どうしよう…
アセアセ
ま「間違いなくクビですね」
ま・安「ワッハッハ
笑い泣き

信「笑い事、ちゃうって!
タラー

信「どうしよう…
アセアセ
ま「お店の方に、もう一回、同じことをやってもらいません?
口笛
信「それはヤラセになるから、あかん!
アセアセ
安「ええ方法、思い付いた!ら、よかったのに…
口笛
信「何も思い付いてないんかい!
タラー


耕一が街から戻ってくる。
烏「息子は電車に乗って、帰りました」
信「そうですか…
ショボーン

その時、耕一の携帯に電話の着信音が鳴る。
耕一が電話に出る。
烏「…えっ?今から帰ってくる!?
びっくり
烏「今更、何を言うとんや!電話、切るぞ!
プンプン
耕一は、一方的に電話を切る。

信濃が耕一に電話の相手を尋ねると、
烏「…次男の敬次郎です」
信「次男!?」
烏「一卵性で」 
信「双子ってことですか!?
びっくり

烏「うどん屋が嫌で東京に行くって言って、10年前に家を出ていった」
烏「それが、今更、会いたいって…」
烏「もし、敬次郎が来ても、私は居ないと言ってください
プンプン

耕一が奥の部屋に消えた。

 

敬介と敬次郎のシチュエーションが似ているため、

信濃は敬次郎の登場に期待を抱く。

 

安尾がカメラを構え、敬次郎の帰りを待つ。

 


ピンクのジャケットを着た、敬次郎(もりすけ)が現れる。
次「ただいま」

 

※敬次郎の台詞は『次』表記します

 

ま「顔だけじゃなくて、ハゲ方まで一緒や口笛

敬次郎が信濃達に尋ねる。
次「あなた達は?」
信「僕ら、TV番組のスタッフなんです」
信「あなたは、耕一さんの息子さんの敬次郎さん?」
次「はい」

次「父は?」
信「奥の部屋に居るんですけど、会わないって言って…」
次「そうですか…」


敬次郎が外に呼び掛けると、真希(前田真希)が現れる。
次「僕の妻です」
次「今日は結婚の報告に来たんですが…」

真希が外を見て、
真「また、あの人が来たわ!
びっくり


白スーツのヤクザ風の男・帯谷(帯谷孝史)が現れる。
帯「邪魔すんでー!
ニヤリ

次「また、借金の催促ですか?」
信「借金!?
びっくり

安尾は敬介のシチュエーションの再現を願い、
安「100万円で!
お願い笑い泣き

帯「100万円…貸してください!お願い
信「えっ?
キョロキョロ

 

真希が信濃に説明する。
真「主人の知り合いで、せびりに来るんです」
信「ご主人に借金は?」
真「無いです。事業で成功したんで」
信「事業というのは、ラーメン屋とか?」
真「うどん屋が嫌で家出をしたのに、ラーメン屋をするわけがないじゃないですか」

信「ラーメン屋、やっとけよ!
プンプン
信濃が敬次郎の頭をしばく。 笑い泣き
次「えっ?キョロキョロアセアセ


まりこが信濃を呼んで、ヒソヒソと話し始める。
ま「ハゲは10年ぶりの帰省で、嫁に、ヤクザっぽいのも居ます」
ま「協力させて、さっきと同じようなVTR、作れません?
キョロキョロ
信「ヤラセやん!
アセアセ
ま「やっぱり、不味いですよね…
タラー
信「やる。…背に腹は変えられん!
プンプン


真希が帯谷を追い払おうとしている。
真「あなたにはお貸ししませんから、帰ってください!
プンプン
帯「そんなこと言わんと、貸してーな
お願いアセアセ

信濃が敬次郎・真希・帯谷に話し掛ける。
信「ちょっと、いいですか?」
信「このままやったら、耕一さんは敬次郎さんに会ってくれないと思うんです」
信「だから、同情を引くような演技をしませんか?」
次「元々、俳優になりたくて東京に行ったんで、演技なら出来ます」

信「帯谷さんには、ギャラもお支払いしますんで」
帯「分かりました」


信濃は、敬介の場面を再現するため、三人に以下の設定に変更してもらう。
・敬次郎…努力の末、ラーメン屋を開店した
・真希…敬次郎を昔から支え続けた、良き妻
・帯谷…敬次郎の借金取り

要は、敬介の時と同じシチュエーション・台詞を三人に叩き込む。


信濃が耕一を呼び、耕一が現れたら、撮影をスタート。
敬次郎から順番に現れることを取り決める。

安尾がカメラをセッティングし、
敬次郎・真希・帯谷には、一旦、外で待機してもらう。

 
 


信濃が耕一を呼び、耕一が現れる。

撮影スタート。

ピンクのジャケットの敬次郎が現れる。
次「親父!」
烏「敬次郎!
びっくり


耕一と敬次郎が向き合う。
烏「お店を継ぐのが嫌で…」
烏「『東京で俳優になって、輝かしい人生を送るんや!』、言うて」
烏「…家を出て行って、もう10年か
えー
烏「何しに帰って来たんや?
えー

次「今日は、親父に紹介したい人がいるんや」

敬次郎が外に呼びかけると、真希が現れる。
真「妻の真希です」


敬次郎が耕一に対して、
次「五年前に俳優になる夢を諦めて、ラーメン屋で…」

敬次郎が信濃に確認する。
次「…ラーメン屋で合ってます?
キョロキョロ笑い泣き
信濃が慌てて首を縦に振る。
烏「…『合ってます』?
キョロキョロ

次「ラーメン屋で働き始めた」
次「それから…色々あったんや
アセアセ笑い泣き

信濃が耕一に聞こえないように、
信「元々、俳優目指してたのに、演技下手くそやな。(苦笑)」


次「今日は結婚の報告に来たんや」
烏「10年間、顔も見せんと、今更…
えー

真希が感情を込め(少しヒステリックな感じも出しながら)、
真「『家出した手前、一人前になるまで帰ることはできないっ!』…」
真「彼はそう言っていましたっ!」
真「彼は必死で働いてっ、やっとお店を持つことが出来たんですっ!」

信濃は皆に聞こえないように、
信「演技、上手すぎる。(苦笑)」

烏「…」
耕一は何も言わず顔を背ける。

信濃の順番。
信「立ち話もなんなんで、お茶にしませんか?
ウインクアセアセ


ポットのお湯を入れようとするが、
ポットが見当たらない。

白スーツの男・帯谷が現れる。
帯「邪魔すんでー!
ニヤリ
信「邪魔すんやったら、帰ってー!」
帯「あいよー!…って、何でやねん!」
帯「こっちは、用があって来とんや!」

耕一が帯谷を見て、
烏「ポット、ありました
口笛
と、ポットネタのくだり。


敬次郎が帯谷に、
次「帯谷さん、どうしてこんなところに?」
帯「お前に金貸しとったな
ニヤリ
次「借金はきちんと返済しましたよ」
帯「元金はな
ニヤリ
帯「ただ、利息分が残ってたんや
ニヤリ
次「そんな…
びっくり
帯「100万円や
ニヤリ
次「そんな大金、無いです
アセアセ

帯「ほな、ラーメン店の土地の権利書を貰おうか!
ニヤリ
真希が感情を込め
(少しヒステリックな感じも出しながら)、

真「お店はっ、主人の努力の結晶なんですっ!」
真「主人のお店だけは、奪わないでくださいっ!」

真希の熱演を見た信濃は、皆に聞こえないように、
信「朝ドラか!(苦笑)」

帯「取り敢えず、事務所に来てもらおうか!
ニヤリ
と、敬介の肩辺りを掴み、無理矢理連れて行こうとする。


その時、耕一が
烏「待ってください!」

帯「なんや?」
烏「借金は、私が肩代わりします」

耕一は奥の部屋から金庫を取り出すが、動きが止まる。
信「…どうしました?」
烏「お金、無いです
アセアセ
信「えっ!
タラー
烏「さっき、100万、渡したんで
アセアセ

信「こうなったら、封筒だけ、渡しましょ!
ウインクアセアセ笑い泣き
烏「…えっ?封筒だけ?キョロキョロ
烏「中身が無いのに、何の意味があるんですか?」
信「取り敢えず、試しに渡してみましょ?
ウインクアセアセ
烏「…?」

耕一が封筒を渡すと、帯谷は何も無い中身を一応確認し、
帯「確かに」
笑い泣き
烏「なんで行けたん?」

帯「このオッサンに感謝するんやな
ニヤリ
帯谷は敬次郎にそう言い、去って行った。


敬次郎が耕一に感謝する。
次「親父、ありがとう」
烏「…勘違いするなよ
えー
烏「あんなんが店に来たら迷惑やからや」
次「…
ショボーン

次「お金は親父に必ず返すから!」
次「あっ、封筒は親父に必ず返すから!」
笑い泣き

信「そこは言い直さんでええから!(苦笑)」


敬次郎が真希と去ろうとする。
次「…真希、行こうか
ショボーン

少しずつ遠くなる息子の背中を見ている耕一。

耕一が敬次郎に声を掛ける。
烏「待て。…遠くから来て、疲れてるやろ」
烏「少し、奥で休んでいったら?」

烏「…後でお前の話、聞かせてもらうわ
照れ

次「親父…」

敬次郎は耕一の前まで戻ってきて、泣き崩れる。
次「親父…うぅ…(泣)」

烏「こんなところで泣く奴があるか
照れ
敬次郎の頭を思い切り叩く、耕一。
良い音が響く。
信「相変わらず、ええ音、さすなあ。(苦笑)」
笑い泣き

耕一・敬次郎・真希が奥の部屋に消えた。

 
 


なんとか、意図した場面を撮りきった、信濃。
信「よっしゃ!バッチリや
爆  笑
ま「プロデューサーも大喜びですね
爆  笑

信「みんな、お芝居、頑張ってたな」
ま「一回データが消えたの、プロデューサーにバレずにすみますね
口笛


プロデューサー・中條が現れる。
中「さっきの映像、見せてくれる?」

ヤラセの映像を見せる、信濃。

中條は満足げに見ていたが、安尾は余計な場面まで撮影していた。

『よっしゃ!バッチリや
爆  笑
『プロデューサーも大喜びですね
爆  笑
『みんな、お芝居、頑張ってたな』
『一回データが消えたの、プロデューサーにバレずにすみますね
口笛

中「…」
中「ヤラセやないか!
ムキー
中「信濃!覚悟しとけよっ!!
ムキー


信濃がまりこと安尾に泣き付く。
信「みんな、何か言うて…」

ま・安「…」
ま・安「さっ、仕事、仕事!
口笛

暗転。
 
 
その5に続く