⒎
⑴
裕の弟で、高校一年生の敬介(もりすけ)が帰宅する。
も「ただいまー」
も「友達と遊園地のお化け屋敷に行ってきたわ」
楽しかったようで、幽霊の変装グッズをたくさん買ってきた。
も「兄ちゃん、うどん屋でもお化け屋敷をしようよ」
裕「アホなこと言うな!」
⑵
レ「…!」
令が閃く。
レ「これですよ!」
レ「幽霊になって、地上げ屋を追い払いましょう!」
裕「…そやな。やるか!」
も「それやったら、俺も頑張るわ!」
も「奥でメイクしてくるから、着替えてて」
白装束を着て幽霊になる、裕と令。
⑶
そこに、景子が戻ってくる。
景「お母さん、全然言うこと、聞いてくれへん!」
景子は幽霊姿の裕を見て、驚く。
景「キャーッ!」
裕の頭をドリザッパで叩く。
裕「景子ちゃん、俺や、俺!」
裕の顔をしっかり確認する、景子。
景「…」
なぜか、裕の頭を再びドリザッパで叩く。
景「なんや、裕君か…」
裕「最後、なんで叩いたん?」
⑷
奥から、白装束で、顔を真っ白に塗った敬介が現れる。
裕「千と千尋の『カオナシ』やん!」
も「…」
も「あ…」
も「あ…」
景子にも作戦を説明し、幽霊になってもらう。
⒏
⑴
地上げ屋を驚かせる練習をすることに。
令が曲を流す役になり、
その曲を合図に、物陰に隠れた皆が出て行くことにする。
⑵
裕が令に、
裕「出易い曲を頼むわ!」
令「了解!」
練習スタート。
皆が所定の位置に着き、令が音楽を流す。
流れてきたのは、AKB48『会いたかった』の替え歌。
『♪うらめしや うらめしや うらめしや Yes!』
皆が一斉に出て、陽気に踊る。
『♪うらめしや うらめしや うらめしや Yes!』
『♪君に~』
裕「ストップ、ストップ!」
裕「なんやねん、この曲ー!」
レ「出易い曲です」
裕「確かに、出易かったけどー!」
裕「楽しい感じじゃなくて、怖がらせる感じのやつやー!」
⑶
皆が所定の位置に着き、令が音楽を流す。
流れてきたのは、『仁義なき戦い』のテーマ曲。
皆が睨みながら登場する。
景子が椅子を持ち上げ、うどん屋の壁を椅子で叩きながら、叫ぶ。
景「うらめしや、こらーっ!」
敬介も叫ぶ。
も「うらめしや、出さんかい!」
も「うらめしや、いてまうぞ!」
裕「ストップ、ストップ!」
裕「『うらめしや、出さんかい!』って、どういう意味や?(苦笑)」
裕「ほんで、景子ちゃん、怖すぎ!(苦笑)」
裕が令に対して、
裕「怖がらせる言うても、ヤクザじゃなくて、お化けの方やー!」
⑷
皆が所定の位置に着き、令が音楽を流す。
流れてきたのは、『オバケのQ太郎』の曲。
『♪Q Q Q オバケのQ』
『♪ぼくは オバケのQ太郎』
誰も出て行かない。
裕「ストップ、ストップ!」
裕「どのタイミングで出て行ったらええか、わからんわー!」
レ「4回目のQです」
⑸
裕「お化け屋敷で流れるような曲、ない?」
レ「こんなんしかないですけど…」
令が音楽を流す。
『♪ドロロロロ~』
一般的なお化け屋敷の曲が流れる。
裕「最初から、これでええんや!」
一先ず、練習が終わった。
⒐
⑴
雰囲気作りのため、うどん屋の照明を暗くする。
舞台は青暗い照明になる。
皆が所定の位置に着き、地上げ屋の登場を待つ。
裕「10分経ったし、そろそろ地上げ屋が現れる頃やな」
⑵
景子の母の日和子が現れるが、
お店の照明を暗くしているため、
裕達には相手の顔が分からず、足音しか聞こえない。
裕は地上げ屋が現れたと勘違いし、令に小声で合図を送る。
裕「今や!」
令がお化け屋敷の音楽を流す。
裕達が日和子の前に出て行く。
裕「うらめしや~」
守「ギャーッ!!」
日和子が倒れる。
裕「よっしゃ、成功や!」
お店の明かりを点け、倒れている人の顔を確認する、裕。
裕「お母さん!」
⑶
日和子が怒る。
守「一体、どういうことよ!」
裕「違うんです!」
裕「幽霊に変装して、地上げ屋を追い返そうとしていたんです!」
守「…地上げ屋?」
⑷
そこに、地上げ屋の津田・別府が現れる。
津「今の話、聞いたで」
津「俺らを追い返すやと!」
津田は怒り、景子を人質に取る。
津「土地を譲らんと、この女、殺すぞ!」
⑸
裕が津田達の前に出ようとするが、敬介が制止する。
も「兄ちゃん、俺に任せろ!」
敬介が津田達の前に出る。
津「殺すぞ!」
敬「…殺すな!」
裕「どんな返しやねん!…気持ちで負けてないか?(苦笑)」
結局、あっさりやられる、敬介。
⑹
裕が津田達の前に出る。
裕「その子は、俺の命よりも大切な人なんや!」
裕「その子だけは離してくれ!」
津「ほな、土地を譲ってもらえるかな?」
裕「…」
裕「…分かった」
⑺
その時、日和子の大きな声がする。
守「待ちなさい!」
津田達の前に出る、日和子。
ファイティングポーズを取り、
守「かかってきなさい!」
津「お望み通り、やったらあ!」
津田が殴り掛かるが、日和子は攻撃をスルスルとかわす。
そして、天を突くような綺麗なアッパーカットで津田を倒す。
別府も殴り掛かるが、自ら倒れた。
⑻
津田と別府が日和子に恐れをなして、逃げ去っていった。
守「これで、解決ね」
⒑ 終
⑴
裕が日和子に謝る。
裕「景子さんを危険な目に合わせて、すみませんでした」
⑵
日和子が裕に語り掛ける。
守「謝るのは、こちらの方です」
♪ピアノの演奏が流れる
守「あなたは、店を売り、体を張って、景子を守ろうとした」
守「私の考えが間違っていたようです」
守「失礼なことを言って、すみませんでした」
裕「お母さん…」
景「お母さん…」
レ「おじさん…」
裕「見た目で言うな!」
皆が敬介の方を見る。
も「あ…」
裕「やっぱり?(苦笑)」
も「あ…」
も「あ…」
も「あーあ」
裕「なんやねん、『あーあ』って。(苦笑)」
⑶
景子が母親に対して、
景「私達の結婚、認めてください!」
守「…」
守「認めま~す♪」
裕「…キャラ、変わりましたね」
守「内心、二人はお似合いだと思ってたの~♪」
守「気持ちを抑えてたの…その反動~♪」
裕「…面倒くさい人やな」
裕が母親のためにうどんを作ると言う。
守「食べる、食べるぅ~」
⑷
日和子がお化けの件を思い出す。
守「私、幽霊だけは苦手なのよ」
守「お店には出ないわよね?」
守「出るなら、結婚は認めませんからね?」
その時、舞台上手奥から、
白装束で長髪で髪の隠れた女性?のお化けが現れる。
守「出たーーっ!」
⑸
裕「出っ、出るわけないでしょ!」
裕が幽霊のもとに駆け寄る。
裕「どういうことや?」
幽「…」
幽「…」
幽霊が前髪を上げると、現れた顔は、地上げ屋の別府。
別「すぐ、そんなこと言うやろ~♪」
裕「お前かーい!」
終。
17/06/10~11
【漫才劇場・吉本極新喜劇】 完