『うどん屋・お化け大作戦』
[セット紹介]
うどん屋。
舞台中央奥に、調理場のあるカウンター。
舞台上手奥に、休憩場所等へと続く通路。
舞台下手に、お店の入り口。
という、典型的な新喜劇のセット。
漫才劇場の新喜劇は、毎回、このセットです。
[物語]
(敬称略)
⒈
⑴
舞台は、うどん屋『花月うどん』。
開店前に、大将の裕(吉田裕)がテーブルを拭いている。
裕「掃除はこんなもんかな」
うどん屋の入り口の方を気にする素振りをして、
裕「それにしても、遅いなあ」
裕「アルバイトの面倒の時間、過ぎてるけど…」
⑵
軽薄な感じの男性・令(レイチェル)が来店する。
レ「チーッスッ!」
裕「…食事ですか?」
レ「いや、アルバイトの面接に…」
裕「なら、帰ってもらえますか?」
レ「…とか言っちゃって♪」
裕「…?」
裕「帰って!」
レ「…そんなこと言っちゃって♪」
裕「帰れ!」
レ「…とか言っちゃって♪」
裕「それ、やめろー!」
⑶
令は裕の胸を触り、
レ「良い体してますね♪」
レ「まさに…」
レ「♪ダイナマイトなバティ でも品が無い」
裕「品をくれ!」
⑷
裕に謝る、令。
レ「すみません!」
掌を広げ、裕の頭を押さえ、自分のスマホに話し掛ける。
レ「OK,Google. 記憶を消して!」
裕「そんな便利な機能、付いてないわ!」
⑸
レ「すみません、採用してください!」
レ「頑張りますんで!」
頭を下げる、令。
裕「…しゃあないなあ!ちょっと様子、見たるか」
裕「採用や!」
レ「ありがとうございます!」
⒉
⑴
裕「早速、今日からお願いするわ」
裕が自己紹介する。
裕「大将の吉田裕や」
レイチェルも自己紹介するが…
レ「俺の名前は…」
ボイスパーカッションを始める。
レ「♪~トゥクトゥクトゥク トゥートゥクトゥクトゥク トゥー」
裕「全く、分からんわ!」
レ「…とか言っちゃって♪」
裕の肩にもたれ掛かるように、
レ「楽しい~」
裕「楽しんでるの、お前だけや!」
⑵
レ「僕の名前も、『吉田』って言うんです」
レ「…ってことは、タメ口でいいですよね?」
裕「なんで、そうなんねん!」
レ「…令です。(苦笑)」
⑶
裕が令に勤務時間等を伝える。
裕「朝10時~夜6時」
裕「休憩は1時間ね」
レ「では、行ってきます」
令がうどん屋入り口の方に向かう。
裕「どこいくんや!」
レ「休憩」
裕「あかんやろ!」
令が椅子に腰掛け、
レ「あ~あ~、ブラック企業か~」
裕「どこでもや!」
令もエプロンを着け、早速、働くことになった。
⒊
⑴
裕の彼女の景子(松浦景子)が現れる。
景「裕君、おはよう」
レ「こんな可愛い彼女、どこで、捕まえたんですか?」
裕「失礼やな。紹介されて、知り合うたんや」
レ「そういう意味じゃなくて、物理的に…」
レ「出っ歯で?」
裕「出っ歯で捕まえる奴、おるか?」
レ「大将、『顔面ブルドーザー』みたいだから」
レ「初めて聞くわ、その例え。(苦笑)」
⑵
景子が裕に対して、
景「裕君、こちらの方は…」
レ「♪トゥットゥク トゥーク トゥットゥットゥッ トゥーク…」
裕「もう、ええって!」
景「えー、今日から入ったアルバイトの令さん?」
裕「景子ちゃん、凄いな!今ので、よう分かったな!」
景「…とか言っちゃって♪」
裕「景子ちゃんもー!?」
⒋
⑴
今日は、裕が景子の母親と初めて会うことになっていて、
母親は、駐車場に車を止めに行っているという。
裕「お母さんに、うどんを食べてもらうんや!」
レ「食べログの評価、『1.2』ですけど、大丈夫ですか?」
裕「マジでっ!」
裕「評価の方がおかしいんちゃうか?味には、自信あるぞー!」
⑵
裕は緊張気味。
裕「景子ちゃんのお母さんは、吉本商事の社長やねん」
レ「あの、大会社の?」
裕「そや。…なんか、緊張するなあ」
令が勇気づける。
レ「いつものお前で行けば、いいんだよ」
裕「お前とは、3分前に知り合ったばっかりやないか!」
⒌
⑴
景子の母親・日和子(守谷日和)が現れる。
あまりの見た目に、
レ「雄のゴリラやん」
守「酷い!」
守「でも、そんなこと言われると、ゴリラになっちゃいそう」
守「あ~、ゴリラになっちゃう」
守「ゴリラに、ならー…ない!」
裕「ならんの?」
守「ギリギリのところで、ならない!」
⑵
裕が景子の母親に挨拶する。
裕「景子さんとお付き合いさせてもらっている、吉田裕と申します」
裕「景子さんと結婚させてください!」
守「二人の結婚は認めません!」
守「こんな小さなお店では、景子が可哀想よ」
裕「お店は小さいかもしれませんが、景子さんに対する気持ちは誰にも負けません」
裕「お願いします!」
頭を下げる、裕。
守「頭を下げても無駄よ!」
日和子が去って行った。
裕「…」
⒍
⑴
日和子と入れ替わりで、チンピラ風の地上げ屋、
津田(マルセイユ・津田)と別府(マルセイユ・別府)が来訪する。
津「邪魔すんでー」
裕「邪魔すんやったら、帰ってー」
津「あいよー」
津「って、なんでやねん!」
津「用があって来たんや」
⑵
津田が裕に土地買収の話を持ち掛ける。
津「この一帯がマンションの建設予定地になっとってな」
津「兄ちゃんとこの土地、売ってもらえんかな?」
裕「親父から受け継いだ店やし、売るわけにはいきません」
津「売らん、ちゅうんか?」
津田が別府に対して、
津「この兄ちゃん、ビビらせたれ!」
別「分かりましたー」
⑶
別府が裕の前に行き、大声で、
別「わっ!!!」
裕「ビビるわ!」
裕「ほんで、ビビらせるって、そういう意味?(苦笑)」
別「すぐ、そうやって言うやろ~♪」
裕「…?」
⑷
別府が裕にお願いする。
別「蕎麦を食べる真似をしてもらえますか?」
裕が渋々、蕎麦を食べる真似をする。
別「すぐ、そうやって食うやろ~♪」
レ「…とか言っちゃって♪」
別「すぐ、そうやって言うやろ~♪」
裕「何の言い合いや!」
レ「すぐ、そうやって言うやろ~♪」
別「…とか言っちゃって♪」
裕「逆になってるぞ!」
別府と令が裕の肩にぶら下がるようにして、
「楽しい~」
裕「気、合わすなよ!」
⑸
津田が裕に対して、
津「どうや、売る気になったか?」
裕「なるわけないでしょ?」
景子が津田の前に出る。
景「こんんこと、やめてください!」
津「女は引っ込んどれ!」
景子を突き飛ばす、津田。
裕「景子ちゃん、大丈夫か!」
⑹
裕「警察呼びますよ!」
津「…分かった。出直してくるわ」
裕「今度は、いつ、来るんですか?」
津「10分後や!」
裕「それ、出直す意味、あります?」
津田と別府が去って行った。
⑺
景子が母親の説得に向かった。
悩む、裕。
裕「結婚は反対されるし、地上げ屋は来るし」
裕「俺はどうしたらええんや…」
令が慰める。
レ「こんなときこそ…」
レ「♪何も言わずに 突き刺すよ 君の眼球」←『サンキュ.』の替え歌
裕の眼球を指で突き刺そうとする、令。
裕「びっくりするわ!」
裕「来るなら、来るって言えよ!」
レ「元気、出ました?」
その3に続く