【奮月藩(ふんづきはん)】、
 【妙月藩(みょうづきはん)】、
 【復月藩(ふくづきはん)】、
 ――はいずれも【闘月藩】とは距離があるので、町人達にとっては【対岸の火事】として認識されていた。
 だが、いつまでもそのままでは居られないと言う不安もあった。
 【魔神教徒】は強力で、多くの武将達が、討ち死にしていると噂に聞いているのだ。
 町人達にとって見れば関わりたくない事だった。
 だが、何故、その様な噂と【辻斬り】が結びつくのだろうか?
 それは役人がもみ消しているとされているが、【遺体】の側には、【魔神教徒】の証である【魔神紋(まじんもん)】が記されていたからである。
 本物かまがい物かは定かでは無いが、その噂で町人達は戦々恐々としていた。
 とてもじゃないが、【庄助】捜索の協力を得られる様な状況では無かったのだった。
 【お美津/千愛姫】が、変装させた護衛と共に町に繰り出し、町を通っても、いつもの様に、
「お、【おみっちゃん】今日も元気だねぇ」
「あらっ、
 【おみっちゃん】。
 ちょいとこれ、試食しておくれよぉ」
「今日も綺麗だねぇ、【おみっちゃん】。
 俺と付き合わないか?」
 ――と言う台詞は返ってこない。
「あ……
 【おみっちゃん】……
 こんにちは……」
「あ……
 【おみっちゃん】……
 ごめんね。
 今、そんな気分じゃないんだ……」
「【おみっちゃん】かぁ。
 俺が死んだら骨は拾ってくれるかい?
 はぁ……」
 と言う返事が返ってきた。
 いつもと全然違う。
 明らかに町民達の元気が無い。
 みんな、自分が明日殺されるかも知れないと怯えているのだ。
 これでは、【庄助】の事を聞くに聞けなかった。

続きます。