主人がリハビリ病院に入院当初は、
経済的な不安の中、会社に残れるようひたすら心理戦のような報告をしていた。

嘘は言わない。
でも、言葉を選んだ。

必死で「身体」の回復に努めている旨を報告し続けた。

所詮、出社してからワカルことだが、
とにかく会社もどんなに時間がかかっても、本人の最善の立場を守り、治療優先で、年俸も保障してくれていた。

どうにかして、会社も、家族も、医師も
彼が奇跡的に復活することを祈っていた。


彼の尊厳を守り、
彼が一生懸命生きてきた証である人望を失わないよう、
努力の積み重ねである実績を後任に引き継ぎ、応援していることを伝えた。

とにかく、数ヶ月も病状について箝口令を出してもらい、面会も遮断していた。

それでも、少しずつ、会社関係者や取引先との面会の日程調整をして、時間前から身だしなみを整え、返答を練習させ、必ず私が立会い、変なことを言いそうになると、話題を変えたり、疲れが出ると言いながら短時間にして、失礼のないようにお見送りした。

お見舞いの全てに手書きの返事を書き、
いつか、恩返しできるように精進する旨を伝えた。

ある日、わたしは、疲れから彼の病室ベッドで五分ほど添い寝してしまった、、

看護師さんの検温が重なり恥ずかしい思いもしたが、そのエピソードが伝わり、
医師も、PTもOTもSTも、
皆んなが、彼への家族の愛情を感じとってくれ、とにかく応援してくれていた。


彼の人生を守りたい。

どうか、彼の人格まで神さま奪わないで。

当初、わたしは、彼が左半身麻痺でも嫌じゃなかった。リハビリ以外の時間はマッサージを続け、脳に刺激を与えると聞くことはトライしていた。

高次脳機能障害で、
どんなに、暴言を吐かれていても、
どんなに、奇行があっても、
どんなに、変なことばかりしても、

病気のせいで、彼のせいではない。

それは判っていた。

でも、彼の両親の無理解が、私にとって辛く、彼にぶつけるしかなかったのか、、、
いつしか、嫌悪感が生まれてきた。

主人は高次脳機能障害で、焦りからリハビリが進まない。
それを緩めようと投薬があれこれ重なってきた頃、何となく、ぼんやりしはじめた彼の表情が一気に印象を変えた。

薬で穏やかにしようとしても、、、
一長一短かもしれないけど、、、

正解がなかった。

逃げ出しても、連れていくところがなく、
守秘義務がある相談相手にしか実状を口にできない。

期待 するしかなく
期待していたかった。