それは
老いさらばえた老人の
髪の毛と息を止めた
子どもたちの真っ赤な涙
それでも
この国が滑り落ちても
支え合えるだろうか
それは
沈まぬ太陽だったのに
綺麗な摩天楼に隠さ
れてしまいそうだ
それでも
日本の言葉の景色が
色鮮やかに励まして
くれるだろうか
それは
原発は反対するけれど
被災者への涙は枯れて
いく人たち
それでも
舞妓さんの白塗りと
真紅の唇のように
気品とはじらいを
取り戻せるだろうか
引き返すバイタリティもない
前へ進む道標も今はない
でも人は過去へは歩けない
ゆったりとした時間を泳ぎながら
小さな街で平凡に生きる尊さを
少し感じられるようになってきた
霊峰富士が吹きさらす風に
任せて目の前の未来まで
少しは歩いていけるだろうか
絶望に屈服せずほかほかの
お弁当を食べて少し
考えてみたい
