従来の「論語シリーズ」を発展させこのたび「古典は語るシリーズ」としました。このブログにて古今東西の文学、歴史、哲学、芸術から、珠玉の一節をご紹介していきます。各回の紹介順序は一見不統一ですが、実は内容的にchain式(あるいは双六式というべきか)に、

前後相関連するようにしています――(要は、古典とは古今東西互いうに通底するものだという命題を再確認する意図です)。

 第一回は、NHK大河ドラマのテーマから。


1什(じゅう)の誓ひ   

ならぬことはならぬものです (Never is never ! ) 

 会津藩の言行一致の精神は幕末まで続く。「朱子学」という言葉にある朱子は、明代の役人にして読書人。しかし、読書人といっても書斎の人ではない。朱子は書斎の人ではない。科挙に合格し、地方勤務をするも、地方の農政、税制、軍事各般にわたり、人民とともに苦労する言行一致の人である。その事績について、師山崎闇斎から聞いた初代会津藩主保科正之は、社倉法(窮民発生にそなえた備蓄米による有利子融資)を藩内に実行。また、その精神を家訓十五か条にも明記。「社倉は民のためにこれをおく永利のためのものなり。歳餓えればすなわち発出してこれを救うべしこれを他用すべからず」さらに後代、会津藩では6歳になると、どこの子も地区のグループに入って、次の言葉の訓練が義務付けられていた。現代生活の中でも充分にあてはまる――

「什(じゅう)の誓ひ」

一、年長者の言ふことには背いてはなりませぬ。

一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ。

一、虚言(ウソ)を言ふ事はなりませぬ。

一、卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ。

一、弱いものをいぢめてはなりませぬ。  ほか

 そして念のために付言する。 「ならぬことはならぬものです」

  (久井 勲)