このところ文学に関する解説動画を観なくなった。
以前までは用事の傍らに視聴するなど、知識を蓄えるに余念なかったものだが、文学に関する出来事、詩人や訳者の人名に至るまでいくつかの事実の誤認が気になりはじめたら、述べられている数々の事柄に『それって本当だろうか⁉』と自分のなかで疑念を差し挟むようになってきた。
いわゆるただ愉しむだけの小説から一歩踏み込んで、文学という括りの小説に執心出来るようになったのは、この動画拝聴がきっかけとなったのは過言ではないが、素人の手づくり動画といえど視聴者の数に関わらず、事実は正しく述べた方がいい。
なので、教養を得ようと観ていたものが原因となって、それらの類の解説を当てにしなくなった。
何とも皮肉なことである。
谷崎潤一郎といえば「春琴抄」「刺青」「痴人の愛」などのいくつかの高名な短篇、長編を読んでいるまでで、決して分かったようには話すことができないのだが「蘆刈」に見る舞台と符合したささやかな幻想性に、私自身が今まで通読した谷崎文学のうち、もっとも好きなものになった。

読みやすさ・持ち運びの利便性から、主に文庫本ばかり蒐めているが、折角だからと少々の傷みやくすみは気にせず、初版本を所蔵しそれを読む拘りがひとつの愉しみになっている。


