右腹腔鏡下付属器切除術
というやつです。
卵巣を残したい。
外来の時に伝えていたので
手術前日に
執刀医の先生がもう一度、
取る・残すの
メリット・デメリットを説明してくれた。
手術はその日の2番目だったので、
当日、朝8時まで悩んでいいと
先生は言ってくれた。
残すメリットは
ほとんどない。
44歳という年齢、
皮様性嚢腫という種類、
腹腔鏡手術、
再発の可能性や
ガンだった場合の危険性、
執刀医の先生も
病棟でのカンファレンスも
全員一致で卵巣摘出が望ましい、
とのことだった。
それでも。
それを聞いても。
私は残したかった。
何度考えても。
何度卵巣に聞いてみても。
答えはいつも
『残す』
だった。
残す一択しかなかった。
でも。
残すメリットが
ほとんどない。
卵巣を取った方がいいことが
100%わかる。
反対の卵巣は残せるから
機能は失われない、
妊娠の可能性も残せる。
それでも。
いくらいろんな
いい可能性も悪い可能性も考えても。
『残したい』
それしか思えなかった。
45年近く、
一緒に生きてきた。
途中、何度も
女性であることを恨んだり憎んだりした。
それでもなにも言わず、
ただ黙々と
自分の仕事をしてくれた。
結婚して妊活し始めてからは。
明らかに頑張ってくれてるのがわかった。
ずっとないがしろにしてきたのに、
妊娠したいという私に、
文句も言わず付き合ってくれた。
2年間。
頑張ってくれたんだよ。
本当に頑張ってくれた。
だから残したかった。
どうしても残したかった。
でも。
残す理由が見つからない。
理由が、なかった。
あるのはただ、私の
『残したい』
という想いだけだった。
一晩、ほぼ寝ずに考えた。
考えても考えても
答えは同じ。
取った方がいいのはわかる。
でも残したい。
堂々巡りだ。
いろんなものを天秤にかけ、
いろんな未来を想像し、
過去の想いを掘り起こし、
こうなった理由を考え、
自分に、卵巣に、
手をあて続けた。
100%取った方がいい。
でも
100%残したい。
そのせめぎ合い。
悩んで悩んで、
生きてきた中で一番悩んだ。
こんなに自分の意思だけで
決めたことはなかった。
そして。
100%後悔するのをわかった上で、
右の卵巣を取ることに決めた。
8時に先生が来るから、
7時に旦那さんが来てくれて、
決断したのは
ギリギリ、
8時10分前だった。
今でも
残したかったと思う。
卵巣の声を
聞いてあげれなかった自分の弱さを、
卵巣の声を
信じてあげれなかった自分の弱さを、
私は一生、後悔するのだろう。
それでも。
後悔することも含めて
『取る』
という決断をした自分のことだけは、
信じていこうと思う。
あの時、あの決断しかできなかった。
どう考えても、あの決断になった。
残してあげられなくてごめん。
本当にごめんね。
今まで、ありがとう。