ここからが長い。
は?
部分的な麻酔といえど準備に2時間程、処置に1時間、薬が効き始めるのに1時間程かかるという。
麻酔開始まで痛みに耐える。
無痛分娩といえど念には念を入れ勉強しておいたソフロロジーの呼吸法で何とか耐えれそう。
そしてついに無痛の処置開始。
分娩台で横たわった状態で先生が来るのをしばらく待つ。
背中に針を刺される際に少しチクッとするが陣痛に比べれば蚊に刺された程度だ。
麻酔が効くまで分娩台で引き続き待つ。
しばらくするとさっきまでの痛みが嘘のように何も感じない!
助かった!
そう思った。
陣痛部屋に戻って少し経つと配偶者がやってきた。背中に無痛分娩の針が刺さっており、そこから自動的に一定時間ごとに麻酔が体内に入っていく仕組みになっているので、動くことはできないが痛みがない分久方ぶりに会話が弾む。
思えば一昨日の破水からずっと痛みに耐え続けていた。やっと痛みから解き放たれ、感動の出産の瞬間をむかえられる。
無痛の処置をした後は必ずその日中に分娩出来るよう強力な陣痛促進剤を点滴で入れていく。
でももう大丈夫。なんといっても無痛の処置は済んでいる。そう思った矢先ーーーー
痛い。
またにわかに痛みが始まった。
始めは徐々に。
しかし確実に!
配偶者にその事を訴えるも、無痛じゃないともっと痛いから我慢するよう諭される。
痛すぎるのでもう子宮口が全開に近いのではないかと思い看護師さんに調べてもらうもまだ5センチ。麻酔の量を増やしてもらう。
それでも痛みは収まらないどころか、どんどん加速していく。看護師さんを呼び再び子宮口を調べてもらうもまだ変わらず。
「無痛ってまあまあ痛いんですね」
「無痛分娩の痛みは人によるんですか?私はだいぶ痛いです」
身をよじりながらも悪態をついていると、看護師さんも異常を感じ始めた。
その後更に麻酔を多くしてもらう際、信じられない一言を呟いた。
「あ、針抜けてる…」
は?
急いで医師に指示を仰ぎに行き、すぐに分娩室へ。麻酔に長けた医師が常駐していないのか、しばらく分娩台で地獄の苦しみを味わう。
通常徐々に強まる陣痛が、無痛から一気に過渡期の痛みに転落したので気が狂いそうなほど痛かった。ソフロロジーも何の意味も持たない。痛みだけではなく、予測不可能な事態になっている事の恐怖もあった。
永遠とも思える程の時を経て(実際にはたぶん30分くらい)医師が到着する頃には子宮口既に7センチ。無痛の処置パート2終わってもすぐには痛みは無くならない。唸りながら待ち、やっと痛みが引いてきた頃には子宮口9センチだった。
無痛分娩やる意味ほぼなかったやん。
言い知れぬ怨みが、医師、看護師に対して湧き上がってくる。人の痛みを大した事ないようあしらった配偶者に対しても。
極め付けは、そんな痛みを経て産んだ赤子の顔はは苦手な義母にそっくりだった。
肉体的、精神的ダメージを受け混濁する意識の中、我が子を愛せるか不安を抱えながら眠りに落ちた。