飲み込みから考える“本当の予防法”


誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という言葉を、

一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。


特に高齢者の肺炎は、その多くが誤嚥性肺炎です。

しかし実はこの病気、

「年を取ったから仕方ない病気」ではありません。


誤嚥性肺炎は、

飲み込みの機能低下が積み重なって起こる“予防できる病気”

なのです。


この章では、

  • なぜ誤嚥性肺炎が起こるのか
  • 何が一番の原因なのか
  • どうすれば防げるのか

を、飲み込みの視点からわかりやすく解説します。


■ 1. 誤嚥性肺炎の正体は「食べ物」ではない


多くの人が誤解していますが、

誤嚥性肺炎の原因は 食べ物そのもの ではありません。

実は最も多い原因は、

唾液+口腔内細菌

です。


● なぜ唾液が原因になるのか?

私たちは1日に

600〜1000回 も唾液を飲み込んでいます。


健康な人は、この唾液を

無意識に・安全に・確実に

気道に入れず処理しています。


しかし飲み込みの力が弱ると、

  • 唾液が喉にたまりやすくなる
  • 夜間に誤って気道へ流れ込む
  • 細菌を含んだ唾液が肺に入る

この状態が繰り返されることで、

誤嚥性肺炎が起こります。


つまり、


「むせていなくても、肺炎は起こる」


これが誤嚥性肺炎の怖いところです。


■ 2. 誤嚥性肺炎は「静かに進行する」

誤嚥性肺炎の初期には、

はっきりした症状が出ないことも多くあります。

  • むせない
  • 咳が出ない
  • 熱も出ない

それでも、

  • 食後に声がガラガラする
  • 痰が増える
  • 朝、喉がイガイガする
  • 食事に時間がかかる

こうしたサインは、

飲み込みが弱ってきている合図です。


■ 3. 誤嚥を防ぐカギは「4つのブロック」

安全な飲み込みには、

4つの防御機構(ブロック) が必要です。

● 第1ブロック:軟口蓋

   鼻へ逆流しないように塞ぐ

● 第2ブロック:喉頭蓋

   気道にフタをする

● 第3ブロック:声門閉鎖

   声帯が閉じて空気の通り道を遮断

● 第4ブロック:喉頭挙上+食道入口部の開大

   食べ物を食道へ安全に送る


このどれか一つでも弱ると、

誤嚥は起こりやすくなります。


特に重要なのが 第4ブロック(喉頭挙上) です。


■ 4. なぜ「喉頭挙上」が弱るのか?

喉頭挙上が弱る最大の理由は、

  • 飲み込みの回数が減る
  • 舌を使わない生活
  • 口呼吸
  • 猫背・スマホ姿勢
  • 唾液量の低下

です。

つまり、


飲み込まない生活が、飲み込みを弱らせる


という矛盾が起きています。