前回に引き続き専属マネジメント契約書に関する相談例です。

 

 

今回は、物販売上についてのご相談例です。物販売上とは、所属タレント等(特にアイドル系)の物販即ちグッズ類の売上ですね。この物販売上をその物販対象のタレントに支払うのか、また支払うとしたらどのぐらいの歩合率なのかといったことがこのご相談内容です。

 

 

タレントとりわけアイドル系は、この物販売上が結構大きなものだったりします。昨今は、ライブやイベント会場で販売している従来的なグッズ類だけでなく、いわゆる「チェキ」と呼ばれる、そのアイドルと撮影できるサービスというものもある意味物販売上に含まれるものとして大きな利益の出るものとなっております。

 

 

物販売上の定義はやや難しい部分もありますが、レコード会社が販売するCDや映像作品、出版社が販売する書籍類(写真集等)以外のタレント(アイドル)に関する商品類(ライブ会場、イベント会場、ウェブサイト等で購入できる商品類)の売上といったところになるでしょうか。そのタレント(アイドル)のプロデュース商品・コラボ商品なんかも物販売上に含まれるようには思いますが、プロデュース商品・コラボ商品については他の物販売上とは別枠にして歩合率等も別に設定するというのも見受けられるところです。

 

 

この物販売上というものは、上記のようにタレント(アイドル)によっては大きな利益の出るものになりますので、その利益をどうタレント(アイドル)に分配するのかということが、専属マネジメント契約を締結する際の報酬の取り決めの中でも重要なポイントとなります。

 

 


 

 

【物販売上について契約書に記載した方がよいでしょうか】

 

 

これも結論から申し上げますと、専属マネジメント契約書ないし別紙報酬覚書に記載した方がよいでしょう(前回の記事で書きましたが、タレントへの報酬は、専属マネジメント契約書若しくは別紙報酬覚書に記載するというやり方がよく見受けられ、むしろ別紙報酬覚書に記載するパターンの方がやや多いと見受けられるぐらいです)。

 

 

なぜなら物販売上は、そのタレント(アイドル)が生み出す金銭的利益の中でも、場合によっては結構大きめな割合を占めることがあります。そうした大き目な割合の売上について何ら言及をしないというのは、好ましいとは言えません。またトラブルになったときに、プロダクション・タレント双方にとって予期せぬ結果となり得ます。

 

 

例えば、契約書に書いていないからといってタレント(アイドル)に支払わなくてよいという話しにはなりません。契約書に書いていないというこは、その事柄についての取り決めがないというだけですので、何も決まっていないというだけのことです。よって、専属マネジメント契約書ないし別紙報酬覚書において、物販売上のタレント(アイドル)への分配について何ら記載がないからといって、そのタレント(アイドル)に対して何も支払わなくてよいという話しにはなりません。

 

 

上記のとおり、記載がないということは、単にそのタレント(アイドル)への物販売上の分配についての取り決めがない、何も決まっていない、というだけのことなのです。繰り返しますが支払わなくてよいということにはなりません。よって何も記載がない状態でトラブルになったとしても、プロダクション側はタレント(アイドル)に支払わなくてよいということにはなりません。

 

 

そのため、支払わないなら支払わないということを専属マネジメント契約書ないし別紙報酬覚書に明記しなければなりません。そして物販売上から一定の歩合率でタレント(アイドル)に報酬を支払うのならば、それも専属マネジメント契約書ないし別紙報酬覚書に明記しなければなりません。

 

 

尚、物販売上についてのタレント(アイドル)への報酬の歩合率は、10%~15%といったところと見受けられますが、そこらへんはプロダクション側が物販に対してどの程度の経費を持つのかといった問題とも絡んでくるため一概には言えない部分もあります。

 

 

また「チェキ」の場合はいくら、これこれこういう商品の場合はいくらといったように、商材に応じて歩合率を設定することも見受けられます。

 

 

 

いずれにせよ、専属マネジメント契約書ないし別紙報酬覚書において、物販売上のことはしっかりと明記すべきと考えます。尚、物販売上からプロダクションの経費を差し引いてその上で残った金額の何割かをタレント(アイドル)に支払うということでしたら、そのように記載する必要がある点に注意です。

 

 

 
専属マネジメント契約書の作成、チェック、修正、ひな形提供その他のご相談については、当事務所(藤枝法務事務所)ウェブサイトの専属マネジメント契約書のページをご覧頂ければと思います。