Q.ある本を自分のブログで紹介しようと思うのですが、その際にその本の表紙画像を掲載することは問題ないですか?



A.原則として、その本の表紙の著作権者(表紙のデザインを作成したイラストレーター等)から許可を得る必要があります。但し、その本の出版社にとって不利益にならない使い方なら問題ないとする考えもあります。










今回は、前回の記事「amazonが提供している画像について 」の続きになるような形となります。



前回、本の紹介をブログなどでする際に、amazonが提供している本の表紙画像を使うことについての問題点などを説明したので、今回は更に掘り下げて、amazonに限らず本の表紙画像の使用についてを説明致します。



しかしですねえ・・・今まで本の表紙画像をブログ等に掲載したことで事件(裁判など)になったというケースがないので、明確に「こうである!」というように言えない部分もあるのですが、まあ、私なりの見解を示します。








【本の表紙の著作権者は?】




まず、本の著作権者と本の表紙の著作権者は別々であるということを前提に考えなければなりません。



本の著作権者(執筆者)が本の表紙も制作したというのなら、本の著作権者と本の表紙の著作権者は同一になります。



しかし、通常、本の表紙はイラストレーターなどが制作することが多いので、本の著作権者と本の表紙の著作権者は異なることになります。



よって、ある本をブログなどで紹介したい場合にその本の表紙画像を使用したいなら、出版社や本の著作権者ではなく、本の表紙の著作権者に許諾を得る必要があります。



但し、契約関係によっては出版社がイラストレーターから著作権を買い上げているケースもあるので、その場合は出版社から許諾を必要がございます。








【引用に該当すれば問題ないのでは?】




著作権法には、引用という概念があり、これは裁判例でも認められております。

(著作権法32条)



引用とは、他人の論文などの一部分を自分の論文のなかで利用するなど、他人の著作物を自分の著作物のなかで利用することを言います。


引用するためにはいくつか要件があるのですが、今回はそのあたりは割愛します。



で、本の紹介文という自分の著作物のなかに本の表紙画像という著作物を引用することは問題ないのではないかという疑問が出てきます。



しかし、先ほど「本の表紙の著作権者は?」でも説明しましたが、本の著作権者と本の表紙の著作権者は別々になるので、それぞれ別々の著作物であると考えられます。



ということは、本の表紙について書評などをするなら本の表紙画像を引用することはできるのですが、普通に本の中身の書評などをするなら本の表紙画像は引用できないと考えられます。



但し、上記の考えは一部の学説で支持されている考えであり、裁判例などで示された考え方ではないということを付け加えておきます。








【じゃあ本の書評雑誌などはどうなるんですか?】




「本の表紙について書評などをする場合のみ本の表紙画像を引用することはできる」という考えに基づくなら、本の書評雑誌については「著作権者や出版社にとって宣伝になるから黙認しているだけである」といえます。



実際、ブログなどに本の表紙画像を掲載して本の紹介をしている人が、著作権者や出版社から警告を受けたという話は聞いたことがないです



よって、著作権者や出版社にとって不利益にならない使い方・・・もっといえばその本の宣伝になるような行為については、著作権者の何らかの利益を侵害しているとはみなされず、概ね問題になることはないのではと考えます。







【結論】




本の紹介をするために本の表紙画像を使用するためには、確実なのは本の表紙の著作権者に許可を得ることですが、実際上、それは難しいとも考えられるので、少なくともその本の出版社に確認をとった上で、使用するということが望ましいでしょう。



今回、本の表紙についての説明となりましたが、今回の内容はCDのジャケットやゲームのパッケージなどにも同様にあてはまるものと考えて頂ければと思います。



2010/8/16 この件について再度考察をしました

書籍レビューで表紙画像を掲載するのは引用にあたるか




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