以前、プーさんのホラー映画についての記事をAll Aboutにて書かせて頂き、その後、Yahooニュースにも掲載されました。
このAll Aboutの記事では、プーさんのホラー映画は原作を翻案して制作されたというが、あまりにも改変しすぎていて日本だと著作権法60条(著作者の死後の改変についての規定)に違反する可能性もあるのではないか、ということを書かせて頂きました。
要は、プーさんのホラー映画は、あまりにも改変しすぎていて、原作者であるA・A・ミルンが生存していたならば間違いなくこのような改変は認めないだろうから、原作者であるA・A・ミルンの遺族が日本で著作権法60条を主張して映画の差し止めをすることも理論上は可能ではないかということです。
日本をはじめとする多くの国では、著作者の死後の著作物の改変について一定の制限が課せられている場合が多く、日本ですと、著作権法60条において、もし著作者が生存していたならば許可しなかったであろう改変はしてはならない旨が定められております。そしてこの著作権法60条は、パブリックドメインになっても適用されると解釈されております(著作権法逐条解説)。
しかしですね、このプーさんのホラー映画、見てみるとわかるのですが、原作の世界観をほとんど再現していないので、「原作を利用した作品」かと言われると少々首をかしげる部分もあります。
プーさんのホラー映画は原作を無視していると言える
そう、このプーさんのホラー映画なのですが、一応「百エーカーの森」というキーワードや、「クリストファーロビン」というキャラクターは出てくるものの、設定みたいなものがほとんどオリジナルなのです。
挙句の果てには、「プーさん」という存在が生まれた理由を完全オリジナルで映画では描いています。原作に全くない設定や展開なのです。プーさんのビジュアルもクマさんというよりは、ブギーマンとかジェイソン等の古のホラーキャラクターのビジュアルにだいぶ近いので、正直なところ、プーさんの原作小説をもとに作ったというよりは、ブギーマンやジェイソン等の古のホラー映画の設定やキャラクターをもとに作ったという方が近い感じがします。
一応「プー」と名乗るジェイソン風の恐ろしいキャラクターが映画では暴れているのですが、「くまのプーさん」に出てくる「プーさん」とは全く設定もキャラクターも違うものなので、果たしてこれで「くまのプーさん」の原作小説を翻案して制作した映画といえるか微妙な感じはあります。
そう、原作小説を利用していないという解釈もできるのです、このプーさんのホラー映画は。
そうなると、著作権法60条の問題は解消されます。なぜなら原作小説を利用していない完全オリジナルのホラー映画という扱いになるからです。
この解釈もあり得るなと思いますね。正直、プーさんのホラー映画についての法的問題点はあまり議論されずにきていると感じることがあるのですが、今後、このプーさんのホラー映画の制作陣は色々なパブリックドメインをホラー映画化していくようですから、どこかのタイミングでしっかりとした議論が交わされるとよいなと思います。