切迫早産
〈病態〉 妊娠22週以降37週未満の時期に簡潔的な下腹部痛、性器出血、破水などの症状が認められ、内診で子宮口開大や頸管の進展などの頸管熟化所見がみとめられる場合を、早産の危険性が高い状態。妊娠22週以前の場合同様の症状が見られる場合は、切迫流産となる。・リスク因子 社会的因子 人種、若齢、高齢妊娠、社会的・経済的貧困、低教育 現病歴 細菌性膣症、頸管短縮、多胎、前期破水、頸管無力症、妊娠初期の出血、短い妊娠間隔、常位胎盤早期剝離、前置胎盤、貧血、羊水過多、抗リン脂質抗体症候群 既往歴 円錐切除後、後期流産、死産・早産既往、習慣性流産、複数回の中絶、子宮頸部・子宮奇形、高血圧、糖尿病 生活・環境因子 喫煙、低栄養、低身長、貧困、家庭内暴力 精神的因子 うつ病、不安、慢性的ストレス 職業因子 長時間勤務、休憩がとれない その他 歯周病 〈診断〉 入院の必要性の有無を見るトコライシス・インデックスを用いる。 2点までは自宅療養、3点以上は入院対象、5点以上は早産にいたる可能性が高い。 頸管長3㎝以上ない場合、切迫早産と診断される。 0 1 2 3 4 子宮収縮 無 不規則 規則的 破水 無 高位 低位 出血 無 点状 出血 子宮口開大 無 1㎝ 2㎝ 3㎝ ≥4㎝ 〈症状〉 切迫早産に特徴的な症状はなく、正常妊娠でも見られる症状がある。① 自覚症状 子宮収縮の自覚、月経痛のような下腹部痛、背部痛、膣分泌物も増加、恥骨部痛、血性帯下、性器出血① 他覚所見 子宮収縮の存在、内診における子宮口開大、頸管熟化所見 〈検査〉 破水・感染兆候の有無と常位胎盤早期剥離などとの鑑別が必要となる。 ・膣分泌物検査 破水の有無、細菌培養、がん胎児性フィブリネクチン、頸管粘液中エスタラーゼ・超音波検査 経膣超音波:子宮頸管長、頸管腺の有無、ファンネリング(内子宮口の開大と胎胞の侵入型)の状態 経腹超音波:胎児、胎盤、羊水所見の検索・NST:胎内感染が見られる場合は胎児頻脈が見られる。・血液検査:WBC、CRPの上昇がみられる。 〈治療法〉胎児の状態が良好であれば妊娠の延長ができるようにし、胎児の成長を促す。子宮収縮抑制薬として、リトドリン塩酸塩、マグネシウム硫酸塩を投与する。抗菌薬の投与や抗炎症作用のあるウリナスチン膣洗浄・膣錠の投与を行う。妊娠34週までに早産リスクのある場合は、児の呼吸急迫症候予防のために副腎皮質ステロイドの投与も検討される。〈よく使用される薬剤〉・ウテメリン 子宮収縮抑制作用がある。 通常、1回1錠(リトドリン塩酸塩として5mg)を1日3回食後経口投与する。症状により適宜増減する。投与禁止: 妊娠16週未満の妊婦、授乳婦、強度の子宮出血、子宮内胎児死亡、子癇、重篤な過敏症、 重篤な心疾患、重篤な糖尿病、重篤な肺高血圧症(肺水腫のリスク増加)、常位胎盤早期剥離、妊娠の継続が危険、重篤な甲状腺機能亢進症、期破水での子宮内感染がみられる場合副作用: 動悸、頻脈、顔面潮紅、ふらつき、嘔気、不整脈、心室性期外収縮、AST上昇、ALT上昇、血小板減少 振戦、しびれ、腹痛、過敏症、発疹、紅斑、唾液腺腫脹、高アミラーゼ血症、唾液腺型アミラーゼ増加、胎児頻脈、胎児不整脈、新生児頻脈、新生児低血糖症重大な副作用: 横紋筋融解症、筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中ミオグロビン上昇、尿中ミオグロビン上昇、汎血球減少、血清カリウム値低下、高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、血糖値の急激な上昇、糖尿病悪化、新生児腸閉塞・マグセント 子宮収縮抑制作用がある。また、重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療の効果もある。切迫早産への本剤の投与は、副作用等によりリトドリン塩酸塩の投与が制限される場合、又はリトドリン塩酸塩で収縮が抑制されない場合に投与する。原則として、妊娠35週以下又は推定胎児体重2500g未満の切迫早産に使用することが望ましい。マグネシウムイオンが胎盤を通過するため、分娩前24時間以内に投与した場合は、新生児に呼吸障害、筋緊張低下などの高マグネシウム血症を引き起こすことがある。*投与方法:初回量として、40mL(硫酸マグネシウム水和物として4g)を20分以上かけて静脈内投与した後、毎時10mL(1g)持続静脈内投与を行う。なお、子宮収縮が抑制されない場合は毎時5mL(0.5g)ずつ増量し、最大投与量は毎時20mL(2g)までとする。子宮収縮抑制後は症状を観察しながら漸次減量し、子宮収縮の再発がみられないことが確認された場合には中止する。持続注入ポンプを用いて投与する。 *副作用:マグネシウム中毒(眼瞼下垂、筋緊張低下、心電図異常)、呼吸困難、横紋筋融解症、肺水腫、イレウス 無力症、意識障害、肝機能障害(AST、ALTの上昇)、振戦、めまい、熱感、倦怠感・リンデロン(ベタメタゾン) 妊娠34週未満の早産リスクのある場合に胎児の新生児呼吸窮迫症候群を予防するために投与される。 投与方法:12~24時間ごとに2回、筋肉注射を行う。〈よく行われる検査〉・エラスターゼ 羊水に含まれる顆粒球エラスターゼを見る。顆粒球エスタラーゼが頸管粘液中に1.6μg/ml以上見られる場合早産リスクとされる。・癌胎児性フィブロネクチン 破水の有無を確認する方法。膣分泌中から採取し、卵膜の炎症をみる。妊娠22週以降で陽性であれば早産リスクとされる。・チェックプロム 膣分泌中のヒトインスリン様成長因子結合蛋白質1型の検出を行う。スワブに検体をつけ、10-15秒おき結果を見る。破水の有無を確認し、陽性であった場合は早産リスクとされる。正期産の場合や明らかな破水の所見がみられるときはBTBを使用する場合もある。〈看護〉①安静 ・医師の指示のもと安静度を設定する。 ・起き上がりの動作は腹圧がかかりやすい為、ベッドコントローラーを使用しておきあがる、横を一度向いてから起き上がるように指導する。 ・硬便、便秘になると怒責をかけることが多くなるため飲水や食事、薬などを使用して排便コントロールを行う。・安静入院時のスケジュールをわたす。・自宅安静の場合は妊娠の生活背景を考慮して具体的なアドバイスを行い、家族の協力が得られるように指導する。・経産婦、上に子どもがいる場合は抱っこなどの腹圧をかける行動であることを伝える。②清潔・安静度に応じた清潔の保持に努める。 完全臥床:全介助による清拭、足浴などの部分浴、ベッド上洗髪、陰部洗浄 シャワー・洗面のみ可能:シャワーまたは清拭・外陰部の清潔を保つようにする。 トイレの際にウォシュレットで陰部を洗う等③面会 長期入院になることが多いため、家族との面会ができるように調節を行う。④観察 ・出血の有無、量、性状、排出物 ・破水の有無、量、性状、臭い、色 ・下腹部痛・子宮収縮の強さおよび頻度 ・胎児心拍の聴取 ・胎児心拍モニタリング ・排便状況 ・検査所見:膣培養・エスタラーゼ結果、血液データ、エコー所見、内診所見⑤輸液管理 ・リトドリンなどの輸液管理。⑥精神的援助 ・早産児を出産してしまうかもしれないという不安・心配が生じる。緊急時の説明などに対して心理的に追い込まれてしまう場合があるため、ゆったりとした雰囲気で傾聴する姿勢を持つ。 ・妊婦の意向に沿いながら分娩に対する心の準備や予期ガイダンスとして病院のシステム等の情報提供も行なっていく。 ・日々の妊娠継続を確認し、パンフレットや日記などを活用して精神的な支援を行う。 ・胎児が胎外環境に適応できる時期(34-36週頃が目安)までは不安が強くなりやすい。そのため、丁寧な対応や傾聴が重要となる。 ・必要に応じてNICUの見学も行い、出生後のケアが十分に受けられると伝える。