つい先週まで、たとえ転職失敗して餓えて死のうとも、この田舎を脱出すると、特高志願兵みたいな悲壮な覚悟で、日々過ごしていたのに、たった一言、他人から認めてもらえただけで、あ、別にいいや、となるから人って不思議である。

 

別にいいやと思えたおかげで、転職も踏みとどまり、久しぶりにすごく穏やかに仕事ができた。

今まで「来月には離職を切り出すぞ・・・切り出すぞ・・・緊張で吐きそう、いっそここで殺せ」

くらいに、一人で勝手に己を追い詰めるドエムプレイに勤しんでいた。

私は仕事が好きではないし、なんなら労働は人類の原罪と割り切っているので、特にやりがいとか感じていなかった。しかし、真面目系クズで石橋は叩きすぎて壊す慎重さに定評のある(当社比)自分には、離職を切り出すという試練は、めちゃくちゃハードルが高かった。ママチャリでマッドマックスのイモータン・ジョーに戦いを挑むようなものだ。ぜったい死ぬ、主にメンタルが。

これが、生きる金を稼ぐために働いているのに逆に生命を脅かしてきやがるブラック企業とかだったら、何の気兼ねもなく「あばよブラック!」と、辞めていっただろうが、今のところ心身は健康で、一人暮らしを維持できる程度の金は稼げる職場なので、やっぱり、惜しい。

 

何より、田舎社会のなんとなくの生きづらさと、実家が近くにあることのしんどさが、離職して都市部へ移住したいことの理由だったので、正直に言えないし、説明できない。「なんて言おう、結婚するつもりの人が向こうにいて、とか適当にウソつくしかないか、けどそしたら、ものすごい勢いでいろいろ追求されるよな・・・無理だろ・・・ウソつき通してポーカーフェイス保つとか、そんな芸当、ビビりのメンタルがもたなぁい・・・しかし、やるしか・・・!」と一人勝手に、背水の陣で追い詰められていた。

 

結局、田舎の辛さと、実家が近いしんどさが解消されたおかげで、自然とこの悩みも解決されたわけだけど。

解消されたといっても、何かが変わったわけではない。

 

他人や親に何言われても気にすることないんだと、自分がやっと、そう思えただけだ。

てか、よく考えたら,、そらそうだ。結婚も出産も個人の問題なんだから、それに口出ししてくる方がどう考えたっておかしい。

「少子高齢化のご時世に」とか言ってくる奴には「国のために子ども生むとか戦時中じゃないですか!富国強兵政策はもう終わりましたよ、まさか、また戦争がはじまるんですか!?だから産めよ増やせよとか言うのですか!それで年寄は口減らしとかいって、山に捨てられるんでしょ!ああ、なんて悲惨な!人類はなんて愚かな!」とか、言い返したらよかったんだ。たぶんもう二度と話しかけてこなくなる。

実家と距離を置きたければ、より遠い場所にアパートでも貸家でも借りればいい。

 

まあ実家の方は、結婚と出産の話題を出されるたびに、思春期の中学生でも、もっと大人だよな、というレベルで不機嫌爆発させていたら、最近は何も言ってこなくなった。孫が見たいという話を出された際は「そんなに子どもが欲しいなら、父ちゃんが産めばいいじゃん。腸内に卵子を着床させる方法なら(以下略)」と答えたら良い。絶句して、今後一切、この手の話題を出さなくなる。

 

 

ところで我が地元は、日本に数ある過疎地域の中でも、ダントツ若い人の流出率が高いが、少しでも人にいてもらいたかったら、官民一体となって結婚しろと圧力かけるより(官民一体って大概何も一体になっていないときに使われる言葉だけど、これに関してだけは無駄に一体となっている気がする)、「独身者よ、生きていていい、好きにしろ。あと土地めっちゃ安いから家とか建てやすいよ」とかアピッたほうがいいんじゃないか。

田舎で独身だと火あぶりにされる、好きに生きたら村八分にされると絶望している人の中には、誰かが「それでいいじゃん!」って気づかせてくれるだけで、ここにいてもいいかなぁ、何もなくてつまんないけど、好きに生きていいなら、まあいいかなぁって、思う人がいるかもしれない、私みたいに。