傍聴記録のまとめ


俺を含めて、すべての人が被害者になる可能性があるのと同様に、犯罪者になる可能性があるように思われる。ストーカー行為や強制わいせつなど、人間としてムラムラしてしまうことが引き金になっている。そこで、未成年を「合意の上」とはいえ自己の身勝手な欲の対象にしたあたりが卑怯に思えるのだが、うっかりすると自分も過ちを犯してしまう可能性があるようにも思えた。

麻薬について。自分の弱さを理由に麻薬を違法摂取するのはいかんだろ。確か生活に困窮するくらいの経済状況だった被告が、なんで1グラムの覚せい剤に3万円も出せたのかがわからない。降って湧いてくるお金なら俺にも渡してほしいところである。


離婚について。俺も既婚者であるが、離婚を意識したことは一度や2度では済まない。だが、うちは法廷にまでもつれ込むほど複雑にはこじれていない。被告に隠し子がいたこと、その子が血の繋がっていない子であることなどはなかなかお目にかかれない状況である。だが、離婚が権利として保障されている以上は、今の婚姻関係にある妻との間で起こりうる問題として意識していきたい。


インサイダー取引について。よく金融犯罪が発覚したときにガサ入れする一団がいるのだが、彼らは証券取引等監視委員会の人たちである。彼らは優秀なプロである。彼らの頭脳や執念を超えるほどの知恵が自分に備わっているとはとても思えないので、金融犯罪には手を出せない。





人間の欲にはいろいろある。性欲、物欲、名誉欲、いろいろである。それぞれが一定のルールにのっとっているのであるが、それを逸脱した時には裁かれることを常に意識しておく必要がありそう。


うっかり、ばれない、知らなかった、などと言わないような生活を送りたいと強く思う。
②覚醒剤

被告は40代男性。前科2犯で2年と9年の服役歴がある。今回はこれまた出会い系サイトで知り合った女性が覚せい剤をやるのを見て、その入手ルートで覚せい剤1グラム3万円で入手。場所は上野公園の京成上野駅から上がるところの階段付近。外国人の売人と思われる男性に

「Sはあるか?」

と隠語を用いて尋ねたらしい。

なんせ、入手場所が皆の知っている上野公園のあの場所なだけに、こんな身近なところで覚せい剤が取引されていたのかと思うとショックであった。

本職は不動産業。キャリアもあるし人脈もあるらしいが、前科があったりで正社員として就職できずに菓子職人として働いていたとのこと。なかなか正社員に登用されない不安や、疲れから抜け出すために覚せい剤に再び手を伸ばしたとのこと。

裁判長に、なぜ前科のあるあなたがまたやってしまったのかを問われた時、

自分の弱さ

を口にした。みんな、あんたでなくったって弱いもんだよ。逃げるもんだよ。でも、覚せい剤はいかんっていうルールだがな。服役中、何してたの?口だけかよ。法廷を侮辱してるなと思った。


③強制わいせつ

被告は20代半ば男性。ムラムラしてしまうことの多かったころ、チャリで街を物色してターゲットを狙い定め、獲物を見つけると徒歩で追尾。マンション階段など人目の付かないところで犯行に及んだとのこと。その手口で2件の立件。

朝5時台に一人歩きしている女性が狙われた。そんな早朝にもかかわらず強制わいせつ事件が発生するんだね。俺もよくムラムラするけど、そんなに朝早くはムラムラしない。

法廷に入ってくるときには、他の被告と同様に腰には紐、両手首は手錠があった。開廷のときには腰紐も手錠も外されるのであるが、同じ人間が目の前でつながれているのを見ると、犯罪の重たさを実感することとなった。

傍聴席や被告人席に向かって深々と礼をしていた。一見すると、ごく普通の若いサラリーマンの印象である。だが、彼は被告である。


④離婚

民事裁判である。刑事裁判と違ってごく普通の会議にでも出るような感じであった。別に警備の男性が横に付いているわけではないし、被告の男性は開廷前は控室で俺の向かいに座っていた男性であったくらいである。原告は奥さん、とても頼りない弁護士さんと一緒に無表情で入ってきた。被告には弁護士が付いていない。

この夫婦は三田にある超一流私大出身である。一度この二人は結婚し、その後、すぐに離婚した経緯がある。被告が婚姻関係になることを嫌ったとのことだが、それなら婚姻届を出すなよ。

原告である奥さんと被告の旦那さんとの間には9カ月になる娘さんがいるらしい。その養育費を巡る裁判である。

凄いと思ったのは、この男性には隠し子が二人いて、過去にその二人を略取して逮捕された経緯があると言うこと。その母親がされなのかは定かではないが、原告がネットで被告の名前を調べたところ、同姓同名の男性が自分の子供二人を略取(未成年者略取)したことで逮捕された記事を見つけたらしい。それを二人でいるときに話したところ、その二人は自分の子であること、また、被告ならそうやりかねないと原告が被告に対して言ったらしい。ちなみに、その記事にあった容疑者(当時)がまさか目の前にいる夫だとは思っていなかったとのこと。

さらに凄いと思ったのは、その二人の子供が実は被告の子ではないということ。明確な血縁がないのだが、自分の子として一時期育てていたとのことである。だが、血のつながりがないとわかったとき以来、すっかり親としての責任を放棄したらしい。

さて、超一流大学出身の夫婦のうち、原告である奥さんは被告に対し、月30万円の養育費を求めている。原告の年収は650万円。住民税逃れのために住民票を韓国に移すなどかなりのやり手である。自分が受けてきたのと同様の教育を娘にも受けさせたいとのことで月30万円なり。

一方で被告は今はハロワ通いを経て職業訓練中。だが、新宿に実の母親らと共同でマンションを現金で購入したらしい。原資は、自分がかかわった会社の創業者利得とのこと。



⑤インサイダー取引

新聞報道でも記憶にあった裁判である。俺も関わっている金融業界のことである。罪状は

「金融商品取引法違反」

である。その中のこれはインサイダー取引である。

上場会社の秘書として勤務している被告が、会社同士の業務提携にかかわる極秘情報を入手、それに基づいて自己の計算で(自分のお金で)株価を買い進めて、業務提携発表の会見前に1700万円の資金投入の結果、会見後には4300万円にまで私腹を肥やしたとのこと。

社長から言われていたらしい。この情報はインサイダー情報に当たるので留意するようにと。

それに対して、被告はインサイダー情報の重要性やインサイダー取引の違法性を認識していなかったとの主張。

判決は有罪。

俺を含めて、金融業界にいるほとんどの人がインサイダー取引について認識しているはずである。ライセンスの取得時には試験があり、更新講習などもある。それにも関わらず違法性を認識していなかったと主張するには無理があるとのこと。

①ストーカー

被告は20代半ば。大学時代に知り合った女性と、別れやヨリ戻しを繰り返す仲。出会い系サイトで知り合った女性100人くらいと関係を持った(未成年を含む)。

その女性が被告から殺意を宣言されて告訴に至ったらしい。仕事場まで押しかけて帰宅途中に暴行したことが逮捕のきっかけ。

公判で証人3人。一人は母親、もう一人は幼なじみ、もう一人は会社の上司。

母親。宣誓の後、被告との関係を問われて「母です」と。憔悴しきっている。自分の腹を痛めて産んだ子が今、裁かれている。罪は争わないようであった。情状酌量を狙った戦略かと思われる。なんでも、罪を犯した息子の更生のために40年以上勤めた会社を退職して監視するとのこと。40年以上勤めた会社を辞めるということが重たい。被告はそれを聞いて涙していた。灰色のスウェットの袖が濡れていた。

幼なじみ。被告とは保育園の頃からのつきあいで、被害者の女性のこともよく知っているらしい。被告が出会い系サイトを利用して好き勝手にしているのをやばいと思っていたらしい。今後の更生は自分をはじめ仲間たちで責任を持つつもりとのこと。

会社の上司。まじめな勤務態度で信頼が厚いとのこと。よく聞く話だ。会社の規程で有罪となったら解雇となるらしいが、同僚などからの解雇回避の嘆願があったとのこと。規程上は解雇は避けられないので再就職で口利きをするとのこと。

大学時代に知り合ったという被告の女性はいわゆる風俗嬢で、その財布の中に人工中絶のレシートがあったらしい。それをみた被告が他の男性の存在をねたみ、ストーカー行為に及んだとのこと。

うっかり恋愛もできないのか。特に相手が未成年だと事に及んで何かと問題が残る。合意の上とはいえ、あとあと問題が起こることを想定していたとは思えない。

したい盛りであることは間違いないのだが、そのはけ口や発散の仕方に問題があったと思われる。