「超音速滑空体(HGV)とは? 日本も2026年に配備予定の最新兵器を徹底解説!」前編
超音速滑空体(HGV: Hypersonic Glide Vehicle)とは?超音速滑空体(HGV, Hypersonic Glide Vehicle)とは、極超音速(マッハ5以上)で大気圏内を滑空しながら飛行する兵器または技術実証機のことを指します。主に軍事用途として開発が進められ、従来の弾道ミサイルとは異なる飛行特性を持つことが特徴です。近年、日本でもHGV技術の開発が進められており、「極超音速誘導弾(HVGP)」の配備が予定されています。1. 基本構造と飛行特性超音速滑空体は、ロケットなどで打ち上げられた後、大気圏内を高速で滑空することで、従来の弾道ミサイルにはない機動性とステルス性を備えています。基本的な飛行プロセスは次のようになります。(1) 打ち上げフェーズ(Boost Phase)ロケットなどの推進装置を用いて発射され、**大気圏上層(約40〜100km)**まで到達。この段階は弾道ミサイルと似た軌道を描くが、HGVは宇宙空間には出ないか、出たとしても短時間で大気圏に戻る。(2) 滑空フェーズ(Glide Phase)最高高度に到達後、ロケットブースターを分離し、超音速で滑空を開始。揚力を利用しながら緩やかに降下し、ジグザグ軌道をとることで迎撃を困難にする。空気抵抗があるため、通常の弾道ミサイルより加速は難しいが、機動性が高い。(3) 終末誘導フェーズ(Terminal Phase)目標に向けて最終的な軌道修正を行い、衝突または弾頭を分離して攻撃。従来のミサイル迎撃システム(ABM, Anti-Ballistic Missile)では迎撃が極めて困難。2. HGVの特徴と利点(1) 高速・機動性マッハ5(約6,125 km/h)以上で飛行し、一部のHGVはマッハ20にも達する可能性がある。変則的な軌道をとることで迎撃を回避。弾道ミサイルのような単純な放物線軌道ではなく、左右へのジグザグ飛行が可能。(2) 迎撃困難弾道ミサイル防衛(BMD)システムは放物線を描く弾道ミサイルの迎撃に最適化されているため、軌道が予測しにくいHGVの迎撃は困難。イージス・システムやTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)では、HGVの不規則な飛行には対応しづらい。(3) ステルス性低高度を飛行するため、敵の早期警戒レーダーによる探知が難しい。地平線の下を飛ぶことでレーダーの死角を利用可能。(4) 多様な弾頭の搭載核弾頭だけでなく、通常弾頭や電子戦兵器も搭載可能。「超音速滑空爆撃機」としての運用も理論上可能。3. 主な超音速滑空体の開発国と実例現在、HGVは米国、ロシア、中国を中心に開発されており、各国が競争を繰り広げています。(1) ロシアアバンガルド(Avangard)ロケット「UR-100NUTTH(SS-19 ステレット)」に搭載。マッハ20以上、核弾頭搭載可能。2019年12月に実戦配備。(2) 中国DF-ZF(東風ZF)マッハ5〜10で飛行し、DF-17ミサイルに搭載。2020年に運用開始。WU-14(実験機)2014年に試験飛行。(3) 米国AGM-183A ARRW(エアロウ)B-52H戦略爆撃機から発射。マッハ20を目指すが、試験で問題が発生し開発が遅延。C-HGB(Common Hypersonic Glide Body)陸軍・海軍・空軍共用のHGV技術。2020年代後半に配備予定。(4) 日本極超音速誘導弾(HVGP)防衛省が開発中の国産HGV。第一弾は2026年度に実戦配備予定。島嶼防衛(南西諸島など)を目的とし、長射程型の開発も計画中。既存の迎撃システムでは防ぎにくい中国・ロシアのHGVへの対抗策として導入。(5) その他の国々北朝鮮:2021年に「火星-8」と呼ばれるHGVを試験発射。