MrKのぼやき

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正直、ドラマネタか医療ネタしかありません

2026年2月のメディカル・ミステリーです。

 

2月7日付 Washington Post 電子版

 

 

Medical Mystery: A baby with high fevers, hair loss and finally, a rare diagnosis

メディカル・ミステリー:高熱と脱毛を伴う乳児、そしてついに下された稀な診断

A child's years-long medical mystery was finally solved.

何年も続いた一人の子供の医学的謎がついに解明された。

 

 

 

(Bianca Bagnarelli/For The Washington Post)

 

By Rachel Zimmerman

Marilyn Medina(マリリン・メディナ)さんは妊娠38週の時、胎児が超音波検査で小さく見えたため医師により陣痛誘発が行われた。生下時の Amiah(アミア)ちゃんの体重は5ポンド(約2270g)だったが、軽度の黄疸がある以外は健康だった。

生後数ヶ月の間、Amiah ちゃんは年齢の割に小さめだったが、「医師は一度も懸念を示しませんでした」と、現役の海兵隊員である Medina さん(34歳)は言う。「食事も母乳も問題なく摂れていました」。

生後8ヶ月のある夜、その赤ちゃんが目を覚ましたとき 104度(摂氏40度)の高熱と腫れて赤くなった発疹が体中にみられた。当時 South Carolina(サウスカロライナ)州 Beaufort(ビューフォート)に住んでいた両親は心配して Amiah ちゃんを地元の病院に急いで連れて行くと、救急車で Charleston(チャールストン)のより大きな施設へ救急車で搬送するよう指示された。Amiah ちゃんはそこに1週間入院し、川崎病、嚢胞性線維症、様々な癌などを調べるために数多くの検査を受けた。彼女の母親によると、いずれの検査も確定的ではなかったという。

さらなる検査の結果、この子には肺炎がみられ肝酵素がきわめて高いことがわかった。子供は抗生物質を処方されて自宅に帰り、消化器専門医に紹介された。

それがその先何年も続く医療の長い旅の始まりだった。Medina さんと夫の Brandon(ブランドン)さん(彼もまた当時現役の海兵隊員だった)は、新たな様々な症状が現れるたびに、ほぼ毎週のように Amiah ちゃんを病院や小児科医、あるいは血液検査のための検査室に連れて行った。Amiah ちゃんは頻繁に中耳炎や気管支炎にかかり、食欲が低下した。彼女が2歳になる頃には、髪の毛が抜け始めた。

「髪をとかすと束になって抜けていました」と Medina さんは言う。そして新たな症状が出るたびに、新たな専門医を受診した。

Medina さんによると、Amiah ちゃんは皮膚科、免疫科、血液科、そして呼吸器科に紹介されたという。

 

 

8ヶ月の Amiah Medina ちゃん、病院にて(Marilyn Medina さん撮影)

 

「それから、2ヶ月咳が続いた時に ENT(耳鼻咽喉科医)が関わることになりました。…私たちはそれぞれの症状に対して別々の専門医にかかっていたのです」。Amiah ちゃんは血液検査を何度も受けたため「血管がつぶれていました、彼女はそれほど身体が小さかったのです」。

Medina さんはついに、採血が指示されるたびに子供に付き添ってくれるよう夫に頼むことにした。Amiah ちゃんが苦しむ姿を見るのがあまりにも辛くなったからだった。「娘が泣けば、私も泣いてしまいます」と Medina さんは言う。「そして、なぜ彼女を押さえつけなければならないのか、なぜ採血をしなければならないのかについて、謝り続けるのです。時には大人3人で彼女を押さえつけることもありました」。

しかし骨髄検査やその他の検査でも決定的な答えは得られなかったため、医師たちはさらに別の専門医を紹介した。その医師が最終的に Amiah ちゃんの様々な症状の原因を突き止めることになる。この時点で肝障害も症状に加わっていた。

「診断にこんなに時間がかかったことに動揺はありましたが、あまり怒りは感じませんでした。だってこんなにめずらしい病気なのですから」と Medina さんは言う。「ただ、すごく罪の意識を感じました」。

 

The journey to an answer 答えへの旅

 

Medina 夫妻も、11歳になる長男の Sebastian(セバスチャン)も、深刻な健康問題を抱えていなかったことから、Amiah ちゃんの持続する症状はなおさら不可解だった。それでも家族は娘に普通の生活を送らせようと努め、頻繁な医療的治療が必要だったにもかかわらずデイケアやその他の活動に通わせた。

2019年8月、Amiah ちゃんが1歳半の時、医師たちは異常を呈する可能性のある遺伝子変異の検査を開始した。小児消化器科医が数百種類の遺伝性疾患を調べるパネル(検査対象となる遺伝子のセット)検査を依頼した。その結果、3つの遺伝子変異(遺伝子上の変化)が確認されたが、その意義は“不確定”と判断された。

「何度も決定的な結果が出ない検査を繰り返すばかりで、本当に打ちのめされる思いでした」と Medina さんは言う。「彼女にも私たちにも大きな負担でした」

同じ年の後半、Amiah ちゃんの診療記録によれば、肝生検の結果『軽度の炎症活動性を伴う慢性肝炎および初期の bridging fibrosis(架橋線維化:線維化が肝内の門脈領域から隣の門脈領域に拡大すること)』が確認された。患児の肝臓には既に瘢痕組織の長い帯を形成する瘢痕化がみられており、これはステージ2から3と分類された。つまり、軽度ではない状態だった。

数ヶ月後には超音波検査で Amiah ちゃんの肝臓が腫大していることが確認された。

彼女の病歴から持続的な炎症が示唆されたことで自己免疫性肝炎の可能性が高くなったため、免疫異常の追加検査を受け、その後さらに遺伝子検査が実施された。医師らはこれらの検査結果から重要な手がかりを得たと考えた:それは“diskeratosis congenita(先天性角化不全症)”に関連する遺伝子の変異である。この疾患は骨髄不全や肝疾患を含む様々な問題を引き起こす可能性がある。

2020年9月、Amiah ちゃんの診断を確定するための追加検査の最中、Brandon さんと Marilynの Medina夫妻は軍から North Carolina(ノースカロライナ)州 Jacksonville(ジャクソンビル)への転属命令を受けた。

そこで、当時3歳半だった Amiah ちゃんは、Chapel Hill(チャペルヒル)にある University of North Carolina Medical Center(ノースカロライナ大学医療センター)の小児遺伝学者 Michael Adams(マイケル・アダムス)氏に紹介された。その頃、Marilyn Medina さんは三人目の子供を妊娠していた。

Adams 氏はこれまでの検査結果を追跡するためいくつかの検査を指示した。その結果、DKC1遺伝子が原因ではないことが判明した。そこで彼は Amiah ちゃんとその両親に〝whole exome sequencing(全エクソーム解析“を受けさせた。これはタンパク質をコードする個人の DNA領域全体を読み取り、希少疾患を引き起こす可能性のある変異を特定する遺伝子検査である。

結果が戻ってきた時「それは私にとっては驚きでした」と Adams 氏は言う。

彼は2021年12月7日に Medina家に電話をかけた。医師から検査で診断が確定したと伝えられたが、それは治療法のないものだと言われたことを Marilyn Medina さんは思い起こす。

Amiah ちゃんは検査で Shwachman-Diamond syndrome(SDS:シュワッハマン・ダイヤモンド症候群)が陽性だった。これは約7万から10万人に1人しか発症しない稀な疾患である。SBDS遺伝子と呼ばれる遺伝子の変異によって引き起こされるこの疾患は、多種多様な症状を呈しうる。障害として、膵臓の発達異常による脂肪やその他の栄養素の吸収不良;循環血液細胞の減少を招く骨髄機能不全;さらに肝臓の異常、そして小児期における低身長や標準以下の体重につながる異常な骨成長などが挙げられる。

 

「信じられない思いでしたし、もちろん泣きました」と Medina さんは言う。「『私なの?私が彼女にこんなことをしたの?私は健康な子供を授かる運命にないの?何か悪いものを食べた?』という気持ちになりました」。

Amiah ちゃんの診断への道のりがこれほど長く続いたのは、肝臓疾患、特定の白血球の低値、そしてその他の様々な症状が組み合わさったことが「まれな疾患の非典型的な症状のあらわれ方」を示したからだと、Adams 氏は言う。

Medina さんとその夫(海兵隊で13年間勤務した後、名誉除隊となり現在は Jacksonville でフレンチフライバーを経営)は二人ともこの遺伝性疾患の保因者であることが検査で判明した。これは、二人の子供がこの疾患を持って生まれる確率が4分の1であることを意味する。

 

Moving forward 前に進む

 

Shwachman-Diamond 症候群は依然として不治の病ではあるが、その診断が明確さと安堵をもたらしてくれたと Medina さんは言う。娘の症状を効率よく把握し、適切な治療をより迅速に受けさせられるようになったという。また、SDSの子を持つ親のオンラインコミュニティに参加したことが非常に助けになったと付け加える。参加者同士が医療的助言を共有し、互いにアドバイスや支援を提供し合っているという。

現在5歳になる Medina 家の3人目の子供 Sophia(ソフィア)ちゃんは、これまでこの疾患の症状を全く示していない。しかし4人目の子供 Gabby(ギャビー)ちゃんは生後8ヶ月でSDSの検査が陽性だった。

Amiah ちゃんは現在7歳の小学2年生で、体操とダンスが大好きだが、予後は依然として不透明である。現在は薬を服用していないものの、頻回に中耳炎をおこし聴覚に障害があり、呼吸器感染症にかかりやすい状態が続いている。

Adams 氏によると、特定の合併症、特に白血病のリスクがあるが、この診断は、新たな症状が現れた際にそれらを説明する体制を臨床医が得たこと意味するという。

「この診断は家族を支援ネットワークにつなぐのです」と Adams 氏は言う。「新たな治療法や遺伝子治療が発見されたとき——それは必ず訪れる——それらのネットワークに属する家族が真っ先に知るでしょう。つまりそれは Amiah ちゃんのような子どもたちが、より早期に、まだ幼いうちに恩恵を受けられる可能性があることを意味します」と彼は言う。

Medina 夫妻は子供たちにはただ普通の生活を送れることを望んでいる。

「みんなが楽しむことを彼女たちも楽しめるようもっと彼女たちを擁護できるようになりたいのです」と Marilyn Medina さんは言う。「そして、他の人たちが診断を得るまでにこうした遅れや、親や子供が経験するすべての血液検査や苦痛を我慢しなくていいようにしてあげたいのです」。

 

 

恥ずかしながら初めて耳にする病名である。

 

Schwachman-Diamond syndrome(SDS:シュワッハマン・ダイアモンド症候群)の

詳細については以下の各サイトをご参照いただきたい。

 

 

小児慢性特定疾病情報センター

 

遺伝疾患プラス

 

 

SDS は膵外分泌の異常、血球減少と骨格異常を特徴とする

常染色体劣性遺伝性疾患で、タンパク質を合成する

リボソーム(RNA・タンパク複合体)の生成に関与する

SBDSタンパクの異常である。

SBDSタンパクはリボソームの生成のほか、

細胞の有糸分裂の際の紡錘体の安定化に関わっているとされる。

患者の90%で7番染色体の7q11.21と呼ばれる領域に存在する

SBDS遺伝子の変異が認められている。

その他、EFL1、DNAJC21、SRP54などに遺伝子変異が認められる症例もある。

原因遺伝子変異が不明の症例も10%にみられる。

 

世界における推定発症率は 75,000~80,000人に1人とされ

本邦では20家系程度の報告がある。

男女ともに発症するが男性に多いとの報告がある。

多くは小児期までに発症する。

 

臨床症状

膵外分泌異常、血球減少、骨格異常を主な症状とする。

膵外分泌異常により栄養やビタミンの吸収障害を来し

低体重・低身長がみられる。

骨髄の異常により好中球が減少し細菌感染やウイルス感染が

起こりやすくなる。また貧血や血小板減少もみられる。

骨格異常では、低身長、肋骨の異常による胸郭の変形、全身の骨減少症、

骨幹端軟骨異形成症、骨の成熟の遅れなどが認められる。

その他、肝障害、皮膚の症状(湿疹・魚鱗癬など)や

歯の異常(虫歯、歯の萌出の遅れ)、精神運動発達遅滞が

見られる場合がある。

 

治療

根本的治療はなく対症療法となる。

十分な栄養吸収を確保するために食生活の調整が重要である。

膵酵素・脂溶性ビタミンの補充が行われる。

貧血・血小板減少に対しては輸血、好中球減少に対しては

G-CSF 投与が行われることもある。

重症例では造血幹細胞移植が考慮される。

15〜30%において骨髄異形成症候群(MDS)や

急性骨髄性白血病(AML)を発症するため注意が必要である。

 

それぞれ関連のなさそうな多彩な症状がみられることから

診断に困難さを伴うであろうことは予想できるが、

本症候群の存在、その症状を理解しておくことが最低限必要だろう。