「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症」:COVIDー19

 

1月に中国武漢での集団発生が明らかとなり、

1月21日には、WHOのレポート#1が発行されました

 

その時点の感染確認数は、中国で278人

中国以外では、タイ、韓国、日本の3ヶ国計の4名のみ

亡くなられた方は、中国の6人のみでした

 

それから約5ヶ月が経過し、感染は地球規模に拡大し、

6月22日現在、世界で8,860千人の累計感染確認者に

上っています

 

日本では、感染は終息に向かっているように感じますが

マスコミは、「一日数十人という多数の感染が続いている」、

「世界全体では、感染はさらに過去最大規模で拡大している」

と報道されています

 

これらは、それぞれ事実でしょうが、何となく定性的な表現が多く

全体感がつかみにくいように感じます

 

そこで、現在(2020年6月22日)の感染確認状況をまとめてみます

 

まず、直近2ヶ月の累計感染確認者数推移を、全世界とエリア別で示します

 

表1 世界の感染確認数 累計(単位:千人)

 

 

先に述べたように、全世界で、約9百万人の感染確認数(累計)となっています

感染確認数の約半分が、アメリカ大陸、約3割がヨーロッパの諸国となっています

 

従って現時点の確認感染者全体の8割がアメリカ大陸とヨーロッパ諸国の発生に

よるものです

 

上記のエリア分類はWHO(世界保健機構)によるものですが、

通常の分類と少々異なっているので少し説明します

 

日本は、西太平洋エリアに分類されますが、ここは中国、韓国、日本から

シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ラオスを経て

オーストラリア、ニュージーランドに至るエリアです

何故かインドネシアは含まれません

 

東南アジアエリアは、そのインドネシア、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ

に至るエリアですが、パキスタンは含まれず中東エリアに入っています

 

西太平洋と東南アジアを合わせたものが、私たちがイメージするアジアに

オセアニアを加えたという感じです

 

従って、アジア・オセアニアでの累計感染者は

全体の約1割に止まっています

 

中東はいわゆる中東諸国ですが、イスラエルのみヨーロッパに

含まれています

 

アメリカは、北米、中南米諸国、

ヨーロッパ、アフリカは、ヨーロッパにイスラエルが含まれている以外は

通常分類される国々です

 

WHOの分類は、多少政治的、宗教的な意図が含まれている

感じもしますが、おおよその傾向としてみれば良いかと思います

 

次に、この感染症による死亡者数はどのようになっているでしょう

 

やはり病気でも事故でも、如何に死亡者を減らせるかが

最大の目標なので、死亡者数はより重要な指標です

 

表2 世界のCOVID-19による死亡者数 累計(単位:千人)

 

 

死亡者数については、世界全体で466千人

その48%がアメリカ大陸、42%がヨーロッパで

この2つのエリアで9割を占めています

 

アジア・オセアニアの合計は 5%

 

いずれも、感染確認者数の割合以上に顕著なエリアによる

傾向を示しています

 

感染確認者も死亡者も、当然ながら累計数は

右肩あがりとなりますが、

現在という意味で、今現時点の一定期間での増減は

どうなっているでしょうか?

 

ここでは、当日前1週間の感染確認数の推移を見ていきます

 

表3 世界のCOVID-19による前7日間 感染確認数の推移(単位:千人/7日間)

 

 

6月22日の直近7日間の全世界の感染確認者数は、1,000千人/週を

超えるレベルに達しており、8週間前(4月27日)と較べて1.8倍に増加しています

 

また、直近7日間の感染確認数は、その57%がアメリカ大陸によるものです

 

中国、日本、韓国を含む西太平洋圏とヨーロッパは、4月27日から4割減少して

いますが、その他のエリアは増加しており、増加の幅も2~7倍と非常に大きい

レベルです

 

増減の目安のひとつであるK値でみると、以下のようになります

 

表4 世界のCOVID-19による前7日間確認数の割合(K値)の推移

   (K値=7日間感染確認数/総感染確認数)

 

 

全世界では、K値は 20%から12%に減少、

確認数は増加を続けているものの、

K値としては感染拡大はピークを過ぎつつあることを示しています

 

但し、1週間で全体の1割を占めるレベルで

増加しているので、終息の目安と言われる5%以下までは、

まだまだ時間がかかるものと思われます

 

西太平洋圏とヨーロッパは、5%を切る水準まで減少し、

全体的には終息に向かっています

 

その他のエリアもK値の減少が見られ、拡大はピークを過ぎたと

言えなくもありませんが。アメリカ大陸で14%、東南アジア22%

アフリカ22%、中東15%と、終息目安の5%までは遠く

これらのエリアも、終息まで時間を要すると思われます

 

ひとつ気になるのは、アメリカ大陸が、直近1週間がその前週から

増加してきていることです

感染がある程度進行した場合、終息末期をのぞけば、

K値が上昇するのは珍しく、アメリカ大陸では、感染の再拡大が

発生しているようです

 

次に、直近7日間確認数及び死亡者数の推移を、感染の

レベルに応じて示します

 

 

図1 COVIC-19 全世界の1週間感染者数の推移 (単位:千人)

 

 

図2 COVIC-19 アメリカ大陸とヨーロッパの1週間感染者数の推移 (単位:千人)

 

アメリカ大陸の増加は、ブラジルとUSAによるものが主要因

6月22日の直近7日の確認者数で、ブラジル 217千人 USA 183千人

それに続いて チリ 68千人、メキシコ 33千人、ペルー 26千人

コロンビア17千人、アルゼンチン 11千人と続いています

 

ヨーロッパで現在、感染確認数が多い国は、6月22日直近7日間

ロシア 55千人、スペイン 13千人、ポルトガル 12千人、トルコ 9千人

で、当初感染拡大した国は、ほぼ終息に向かっています

 

尚、米国の感染状況は特殊で、第2波というよりは、

4月4日頃からの第1波のピークを継続している状況で、

直近では、暫減から転じて、再上昇の傾向を見せています

 

参考に、アメリカの現在までの日当たり7日間平均の

確認数と死亡者数を示します

(注 このグラフは1日あたりの人数になっています)

 

図7 COVIC-19 米国の日当たり感染者数の推移(前7日間平均人数)(単位:人/日)

 

 

 

図3 COVIC-19 中東、東南アジア、アフリカ、西太平洋圏の1週間感染者数の推移

 (単位:千人)

 

まず、念のために言いますが

このグラフは累計ではなく、1週間あたりの感染確認数です

従ってこのグラフの上位3エリアは、今まさに日々の発生が

増加しながら、感染が拡大している真っ最中です

 

図3の中で一番多い中東エリアにおいて、6月22日直近7日間 確認数の

多い国は、パキスタン 37千人、早い時期から感染拡大のイラン 18千人

サウジアラビア 13千人、エジプト 11千人、カタール 8千人

と広い範囲での拡大がみられます

 

東南アジアも増加傾向ですが、直近の増加国は、インド 93千人、

バングラデシュ 25千人、インドネシア 8千人が主なものです

 

次に、直近7日間死亡者数の推移のグラフを示します

 

 

図4 COVIC-19 全世界の1週間死亡者数の推移 (単位:人)

 

死亡者については、全世界では一定数でピークを迎えたように見えます

 

 

図5 COVIC-19 ヨーロッパとアメリカ大陸の1週間死亡者数の推移 (単位:人)

 

ヨーロッパは、死亡者もピークを過ぎて減少に向かっています

アメリカ大陸は、高い水準でピークが続いています

 

 

図6 COVIC-19  東南アジア、中東、アフリカ、西太平洋圏の1週間死亡者数の推移 (単位:人)

 

東南アジア、中東は、死亡者も日々増加のペースが上昇中です

アフリカも、まだ人数は比較的低いですが、増加ペースが上がっています

 

 

以上の結論としては、以下の通りです

 

・ 世界全体としては、日々の感染確認数が拡大しており、

  まだ終息の傾向はみえない

・ 現在の感染拡大は、アメリカ大陸が主体である

・ USAは、第2波というより、4月4日頃からの第1波のピークが

  現在に至るまで継続しており、直近では上昇傾向である

・ 中東、東南アジア、アフリカは、今感染速度を上げながら拡大の真っ最中である

・ 感染が終息に向かっているのは、中国、韓国、日本を含む北東アジアと

  ヨーロッパのみである

 

世界全体では、日々の感染数が拡大している状況であり、

現時点で感染終息の予測は困難な状況です

 

感染が始まってから、現在5ヶ月が経過しているが

各国の事例をみても、拡大からピークまでの時間より

ピークから終息までの時間の方がかかっており、

地球規模での終息までは、かなりの期間を要する事も

考えられます

 

マスコミなどでよく「コロナと戦う」とか「コロナ禍」という

言い方がされていますが、これは極めて欧米的な考え方で、

日本としては「戦う」というよりは「共存する」という方向で

考える方がうまくいきそうな気がします

 

日本人は、自然に対しては打ち勝つのでなく、

「自然を尊重し、共に生きる」とことが、いにしえから

持っていた価値観です

 

感染症に対しても、これをベースとした基本施策を組み立て

諸外国に示していければ良いのにと思います

 

海外にそれを強制する必要はありませんが、

何でも欧米の考えに追随するのでなく、

日本という国はこう考えるという姿勢を

自信をもって示していけるような国に

なって欲しいと思います

 

そう言った意味で、今回の感染症に対して

スウェーデンとシンガポールの態度は興味深いです

 

これについては、また別な記事で書きたいと思います

 

使用したデータはWHOのSituation Reportから取っています
もし数値引用間違いなどお気づきになりましたらご指摘ください

↓世界保健機構 新型コロナウイルス感染症 日報リポートへのリンク
WHO COVID-19 Situation Report