〝はっはー!お前もその程度か?リオン!〟


『黙ってくれ、キミみたいな生きてるだけで近所迷惑な雑音が耳に入ってると気持ちが良くないんだ』



私のできることは、その名の通り、インフィニティ。



私の周囲を舞う“幻影結晶”で変幻自在・無尽蔵に操り、作り、命以外の物を形成できる。


そして魔法に使用するマナを素早く結晶で作り出すのとで私は無限に攻撃ができる。


しかしながらまともに攻撃が効かない彼女では私は歯が立たない。理由は単純で、“皮”が強い。


いくら戦闘が下手でもチーターに変わりなく、

私は彼女に傷一つつけられていない現状。


言うならば彼女の無双ゲー、だ。


〝どうしようって、考えてるでしょ?無理だって〟


『さぁどうしたものかね…キミがいれば、らくしょーなんだけどな』


〝あいにく私は敵サイド!おつ!〟


『ふふふ…悔しいよ』


圧倒的に不利な状況で、思わず笑けてくる口。


余裕などない。


そして、良き友人であり良き姉を私は亡くした。



泣きたい。


精一杯、彼女に謝りたい。


話したい。


もっと彼女に寄り添いたかった。




そう感情に浸る間もなく、

攻撃を仕掛けられ守るので手一杯だ。


もう…私もダメなのか?


ダメだ。


冷静になれ。私の取り柄だろ?






…カナが危ない!





〝欲しいのこれ?〟


!?


『や…めろ!離せ!』


乱暴に髪を掴まれるカナ。

気を失っているのか、抵抗がない。


〝ころしちゃおっかなー?〟


『くっそ…。…何が狙いだ?』


〝話が早いようで何よりだ。…お前はカナの未来が見える。そうだろ?〟


『どういう勘違いかわからないが、未来を見れる能力を持つ奴はいない。私たちが未来を決めているわけじゃない』


〝ほう…そう。でも、私なら…?〟


『…バカ!やめろ!カナがお前に何をした!?なんの恨みがあって…!?』


〝だってこいつが私を…。私がこいつに「バラバラに血飛沫を舞わせて死ぬ」って願えば、そうなるんだからね〟


『…』


なぜ…そこまで。


今田カナに、執着する?


〝少しばかり、遊び道具として面白いからね〟


『死ね…!』




〝わかった…じゃあ、私はもうあなたに殺される〟


『…は?』





〝嘘じゃないよ、そのまんま。でも、…その代わり〟





〝私がこの手で、カナを殺してから〟


『…』


どうしても、彼女はカナを殺したいらしい。


こいつを放っておけば、世界が危ない。




なら、カナ一人で被害が済むなら、


そうするべき。




ヤオヨロズはこっぴどく、彼女に思いを寄せていた。



それは恋愛感情からでもあるが、エリゼの行方不明以降、何より擬似的に孤独だった私たちの友達…親…色々な代わりになる存在だった。



私は彼女が好きだ。



気も体も何もかもが打たれ弱く、


でも誰かを大切にする気持ちは誰よりもある。


時に自分が危ない状況でも、


彼女は他の危ない子のために動く。




今思えば恥ずかしいが、私は仕事もそっちのけで

彼女の様子を四六時中見ていた。



こんなにも、人として完成された人間が。









こう、初めて考えた。


自分が一番の決断者だと、勘違いしていた。










さあ。


“カナなら、どうする?”




『そうだな…ならば、世界をもう一回作り直すかな』


〝…往生際が悪いものを作ったんだな、この身体は〟


カナは投げ捨てられ…!?


『カナ!?』


「大丈夫リオンさん!集中して!」


空中でカイが出現、飛ばされるカナを受け止める。


『感謝するよー!カ〝油断禁物!〟


彼女はいきなり瞬間移動し、私の間合いに入る。


警戒していないとでも?


『せっかちだなぁ、感謝の言葉くらいは述べさせてくれよ』


〝…ちっ〟


距離を取り、数え切れないほどの結晶を連射し続ける。


さっきから見ているが、あることに気づく。


効いてない、というより。


再生が早い。


空いた傷口が追撃をする前には身体が復活している。







ずっと見てきた、お母さん。



私にとって、私たちにとっての、お母さんは、

何でもできる人だった。故に、攻略法が分からない。


〝なぁんかつまんない。どうせ勝つしなぁ〟


『どうかな?』


〝さっきからずっと、同じ攻撃をちまちまちまちま…〟


『なんでだと思う?』


口角を上げ、クエスチョン。


〝口数と手数だけは減らないな…〟


『じゃあ、答え合わせといこうか』






〝!?なんだ…!?ものすごいマナの循環が…〟


「やほなのだ!色々あーしの友達がお世話になったみたいなのだ」


ナユタはふわりふわりと例えは悪いがビニール袋のように舞い、私と同じ幻影結晶を使い一気に間合いを詰め近接戦へ。


戦況はほぼ互角だ。流石“ロリアテ”とエリゼにあだ名をつけられただけある。


「そこ!ロリアテって言うな!うるさいのだ!」


「あはは…ごめんね!じゃあ支援しちゃうよーん?」


〝さぁすがに2対1じゃきついかな?…1人ずつやってくか…じゃあね!〟


逃げる判断だけは一人前だ。瞬く間に姿を消した。


「こんなあっさり…いやなのだ!久々にもっと暴れたいのだー!」


『じゃあ森の木なら10本くらいはやっていいよ』


「それじゃあ0.1秒も楽しめないのだ」


『生物兵器ですかあなた』



こんなにもあっさり…終わった?



〝1人ずつ〟って、言ってた。


近い未来に、またあいつは必ず来る。



私は覚悟し、唾を飲んだ。






『おはよ』


「お、意識がしっかりしてる」


『ったりめぇよ!何度気失ったと思ってるんだぁぁ!』


ベッドを飛び起きて、私の部屋の勉強机で冷静に自分の分析するリオンの肩を揺さぶる。










『あ…ヤオ…は?』





「それについてなんだが…彼女は…」






『…そっか』





彼女と過ごした日々は、たしかにここに残ってる。


「カナ」


今でもこうやって、私を呼ぶ声が。


「カナー」


ダメだ。もう、彼女はこの世界には…


「ここにいるわ消し飛ばすわよ」


『?』


「私は、ヤオ。ニューボディよ」


『??』


「あははー。理解できないよね」



リオンは笑い、簡単な説明を。


私たち神(正確には神はエリゼでその側近がリオンたちだから神ではないとかどーとか話してたけど結局神には変わりないらしくてどっちだよって思った)は死なない。


しかし致命傷を負えば、再生まで時間がかかる。


1週間前のヤオみたいにね。


『え?』


「何かわかんないところあった?」


『あれかイッシュウカンモ?』


「ウラシマ現象はまた今度!」



まぁ簡単に言えば身体が再生するまでそのボディで頑張れって感じ。


その間の負界のエネルギーは再生途中の身体が補ってくれるとかどうとか。


ちなみに負界の制御者がいなかったあの日、犯罪件数が10倍以上にも膨れ上がったそうで、全世界抗議デモ、なんて言われていたらしい。


私の知らない間にエグいことが…


「人間の体って、こんなに動きづらいのね」


『なんかヤオ、若く感じるね』


「当たり前よ。カナと同じ高校1年生の体を造ってもらったもの」


『へぇ』




それってつまり…





「登下校もいっしょね…!」


『そうっすよね』


鼻息が荒い女神様に愛されて眠れません。


私ってこう…人じゃない友達が多い気が…


「だから私から人になってあげたわ、感謝することね」


『あ…あざ…ます…』






違う、そうじゃない。