激暑の最中、

亀とともに歩く俺は、

異様な風体であった。


亀は、

とりあえず、

世田谷通りに出た。

「どこへ行こうといているのか?」と聞くと

「ええとこでっせ」と何故か、関西弁で亀は答えた。


ああ、喉も渇いてきた。

コンビニに寄った。

俺はアクエリアスを買った。

亀はよだれをたらして、

魚肉ソーセージの前に佇んでいた。

聞くと腹減ったという。

図々しいやつだな、と、

イラっとしたが、

ショーがない、買ってやった。


俺はアクエリアスを飲み飲み、

亀は魚肉ソーセージを食いながら、

延々歩いた。


時計を見ると、

もう夕方であった。


渋谷まで出たところで、

俺は、思いきって切り出した。

「おい、亀さんよ、

このまま歩き続けるのか?」

「他にええ方法ありますか? 」

「ばかやろー、ここは21世紀の東京だ!

交通手段はいくらでもある」

「あ、そーですな」

「まず、どこへ俺を連れて行くつもりか言え!」

「あっ。晴海ですわ !」

「あ、テメエ、さては、ホテル浦島に行こうとしてやがるな!」

亀は黙った。


俺は、間違いないと確信したので、

渋谷から、晴海行きの都営バスに乗った。


ああ、なんて涼しいのだろー。

こんなことなら、最初から、

公共交通機関を使えばよかった。

俺はもっと近場だと思っていたのだ。

まさか、晴海まで行くとは・・・。


都営バスは晴海に着いた。

そして、亀は案の定、

ホテル浦島へ。


フロントの前で、

「ちょっと待ってておくんなはれ」と亀。


暫くすると、

部屋の鍵を括りつけられた状態で、

戻ってきた。


亀に連れられて、

その部屋に入った。

なんつーことない、ただのシングルだった。

(続く)