「頑張ってるから」と言うことで、出張に連れて行ってもらうことに。
なぜご褒美が出張なのがいまいちわからないまま出発。
まあ、中国国内旅行と思うことに。
メンバーは陳曉麗(総経理、姐御)、張志華(副総経理、若頭)、 アタイ。
つまり、CGC貿易、No1,2 とぺーぺー日本人というチーム。
順調に客先をまわり、蕪湖で何朝雨(営業部長)と合流。
実は・・・・・・・・この何部長がよその会社から
引き抜きを受けていることが発覚し、それを阻止するために、
蕪湖に呼びだしたのだ。
ぺーぺーが一緒に居ては話がしづらいであろうということで
姐御が「2~3時間、蕪湖を観光してきたらどう?」
ということで一人、街へとくりだした。
ウシシシシシシシ。
今日こそあの計画を実行する絶好のチャンスだ!
安慶に昼間は散髪屋(洗髪屋)、夜は怪しいピンク色で
店内が覆われるという、店がある。
いかにも、男の性欲をくすぐる妖しい様子で、
あたりが暗くなると中からオンナが
「イラッシャイ、イラッシャイ」 「おいでおいで」
とやっている。
きっと、この蕪湖にもあるだろうということで
裏路地を中心に歩き始めた。
もともと、裏路地やいかにも危ないところが大好きなことと
地理に関する動物的<感>で探し回った。
こういう感は東京で身に付けた。
大阪から上京して間もない頃、右も左もわからない東京で
「道に迷っても絶対にUターンしてはならない」
という掟を友達と頑なに守り、
二年後には大阪上京組みは東京人よりも東京の地理に詳しくなった。
さてさて、話を戻すと。
30分ほど歩いて、ピンク色を放つ店を2~3件発見した。
だがそこで、老板に、(中国語で店長、店主、オーナーの意味)
「おい、そこのニイちゃん、オンナ探してんのかい?」
と、話し掛けられると、ビビって
「いえいえ、滅相もございません」と小物丸出しの返事をしてしまう。
1~2時間歩き続け、言い訳と妄想を繰り返す。
ボラれたらどうしよう、
非合法だしな~、
姐御にばれたら、確実に消される。
怖いお兄ちゃんとか出てきたら嫌だな~
病気とかも嫌だな~、
警察に捕まり、
強制送還され、
母親に泣かれ、
姐御にタマを狙われつづける想像を何度も繰り返す。
だがここまで来て何もしないのも日本男児がすたる。
(もう既に男らしさのかけらも無い)
だがそろそろ、タイムリミットだ、焦る。
期待と恐怖にさいなまれ、
ドキドキで、脈打つ心臓とムスコを抑え、探しつづける。
くらい一本の路地裏に、ピンク色を発見。
時間が押し迫っているため、これが最後と決断する。
いかにも関係ありません、オンナなんかいりませんという風に、
チョ~自然な感じを装い、素早く、周囲と、ガラス戸の店内をうかがって店を素通り。
女がソファーに寝転んでいる。
よし、なかなか可愛い!十代か?
店と道路を挟んだ向かいに、屋外ボクシングジムのようなものがあり、
オッサンが一人、一心不乱にサンドバックを叩き続けていたのが気になったが、
東京で苦労を共にした友との固い掟を破り、引き返す。
そして、動悸を抑えながら、ついにピンク色のガラス戸に手をかける。
まだ開いてる?緊張をおさえつつ、いかにも慣れてる風を装って聞いた。
店内はピンク色で薄暗く、散髪用か化粧台のような物の上に、
化粧品や、空き缶などが散乱し、
シミだらけの壁には色褪せたポスターが雑然と張られている。
ソファーから起きようとせず怪訝そうにオレを観察しながら
女が訪ねる。「*****?」
聞き取れなかった。
「そうそうそう。」 適当に相槌を打ちながら、
空いている椅子に腰を下ろす。
よく見ると、女は最初の印象よりも少し歳をとっているが、
別に、老けている訳ではなく、それでも、22,3歳だろう。
ベルボトムのジーパンに10月だというのに、キャミソール。
細い。
ストレートの髪を少し茶色に染めてるように見える。
(店内は薄暗いピンク色のため、色はハッキリ判別できない)
「わかった、ちょっと待ってってね。」 聞き取れた。
ふ~、胸をなでおろす。
が!なんと!そのとき!!
女がスッと店の外に出て、向かいでサンドバックに
ラッシュを繰り返すオヤジに声をかけたのだ!!
おいおいおいおいおいおい!!ヤバイ!おいおいおいおい!
逃げるか?!おい!どうする?!
動悸が激しくなる
考えてるうちに、逃げるタイミングは無くなった。