どんな君でも僕が受け止めるから。 -2ページ目

どんな君でも僕が受け止めるから。

気ままに小説書こうと思います٩(。•ω•。)و

久々の投稿です٩( 'ω' )و
よければ読んでやってください!

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ゆっくりと、日が沈み始めていた。
自転車を引く君と、その少し後ろを歩く私の影を
夕日が延ばしていく。


「久々に帰ってきたけど、意外と変わってないもんだな。」

夕日が眩しい。
どこか遠くを見つめるその表情は、よく見えなかった。


「そうだねぇ、あの駄菓子屋もまだあったしね。」


買ったばかりのパピコの片方を差し出す。

さんきゅ、
ぶっきらぼうにそれを齧る横顔も、あの頃と変わらない。

「最近どう?なんか変わったことあった?」

「特に何も。そっちは?」


君は目を伏せて髪をかきあげた。



「…何もないなぁ。」


嘘をつくときに、目を合わせない癖も、髪を触る癖も、
そのままだった。

夏風が二人のあいだを吹き抜ける。

私は笑いながら
髪を耳にかけた。


「そっか。まぁ、そんなもんだよなぁ。」


君もまた、柔らかく微笑んだ。

ふと、二人の足が止まる。
目の前には別れ道が迫っていた。



「…嘘つくときの癖、変わってないのな。」



君が見つめるのは、私の右手の薬指。




「結婚、するんだろ?」


私の知らない、笑顔だった。

"好きだ"と言ってくれたあの頃とは、もう違う。
変わっていないなんて、

そんなことある筈ない。



「…うん。」

「おめでとう。幸せになれよ。」

大きな右手が、優しく頭を撫でた。



「…そっちこそ。彼女とお幸せに。」

いたずらっぽく、笑って見せる。

ばれてんじゃん。

眉を下げて、君は笑った。




例えば、
今までありがとうとか、
幸せだったよとか、
行かないで、とか

それから、今でも君が――


なんて。そんなことが言えたなら。

今ここに在る現実は
違う未来に変わるのだろうか。



「じゃ、そろそろ行くよ。」


自転車に股がる後ろ姿。

「うん、今日はありがとう。」

「あぁ。」

君は、私の瞳を見つめる。





「さよなら。」






前へ向き直った後ろ姿は
どんどん遠ざかっていく。


いつもの"またね"
じゃなくて
"さよなら"と告げたのは
きっと君の優しさ。




「…ありがとう。」




もう一度呟いたその言葉は
もう届くことはないけれど。


いいの、これで。




うつむいた顔を上げて、
胸いっぱいに夏の香りを吸い込む。





今さら溢れ落ちた涙に夕日が反射して
茜色を閉じ込めた。