お店を出た2人は一瞬時が止まっていた。その近くを町の人があっちこっちと行きかう。

「「あれ?」」


「俺たちさっきまで、本屋にいたよな??????」

「うん、ここって家の近くの公園よね。」

2人はお互いの顔を見合い揃って後ろを向くが、在るのは一本の大きい木のみ。

「・・・」

「勝手に移動した????」

「すげーーーーーー!!!!おもしれ―!!」

「今度ショウゴにやり方聞こうぜ!!」

「そだね。てかお腹空いた!!家にそろそろ帰ろう。遅くなっちゃたからばばに怒られる。」

「あ、やべー!!!!買い物頼まれてたの忘れてた!!!早くいくぞ!!」

「ああああ、もう!!!」




あーでもないこーでもないと言いながらも無事に買い物を終えた2人は家に着くと靴を脱ぎながら大きい声で言った

「「戻ったよーー!!」」


待ってましたと言わんばかりにバタバタと足音を立てて妹弟たちが寄ってくる。

「「「お兄、お姉お帰り!!」」」

いつもニコニコの妹弟たちを思いっきり撫でていると後ろからゆっくりと杖をつきながらいつもの白いエプロンをしたばばが歩いてきて言う。

「お二人さんお帰り。早かったね。空いていたのかい?」


「「?????」」


「さーーて、昼ご飯にするよ。皆、ごはんの準備してね。リゲルとスピカはこっちに来て手伝ってちょうだい。買ってきてもらった、イモを使って2人がすきなスープを作ってあげよう。」


スピカとリゲルは時の流れの違和感を感じた。しかし、魅力的な提案を目の前にしてその違和感が一瞬で消えた。

「よっしゃー!!!」
「ばばさいこう!!」






・・・



2人が住まうのは孤児院でその食堂は、にぎやかだ。大きい部屋には長い机がいくつも並んでおりそこには子どもたちでいっぱい。
そこに大きな鍋をもったスピカとリゲルが食堂に入るとと子どもたちは一斉に集まり列を作り、慣れた手取り足取りでそれぞれのお皿に注き、席に戻っていく。
リゲルとスピカの後ろから見守っていたばばは、皆んなが席についた事を確認し自分も腰を下ろす。
その合図を待っていたかのように、炊事当番のリーダー・レンジが両手を合わせる。すると子どもたちは声をそろえて――

「「「ぱちん!!!」」」

この孤児院だけに受け継がれてきた“食材への感謝と食事の始まりのしるし”
軽やかな声が食堂いっぱいに響くと、食卓がにぎやかに動き出した。




・・・




しばらくして食事を終えた妹弟たちは、食堂の端の窓辺に置いてあった茶色い物体をジーっと見ては投げたり舐めなりしていた。
「これなーーにー?」
「美味しいのかな?」
「これ、石かな?」

ちょうど本を取りにきたリゲルはそんな状況目の当たりにして冷や汗をかきながら言う。
「ああああ、ちょっとちょっとちょっと、やめろー!!それは俺のだぁ!」

帰ってきてからすぐ読もうと食堂に持ってきたのをリゲルは後悔しながらも同じ事は繰り返しさせまいと説明した。

「これは本って言うんだぜ!これは俺のだから見たい時は俺に言ってくれ!!分かったか?約束だ!!」

「うん!!やくそくー!」
「やくそく!やくそく!!」

ほっと胸を撫で下ろしたリゲルは提案した

「よし、外に行ってみんなで本読むか!!」

ぞろぞろと引き連れてリゲルが妹弟たちを連れるのをみてスピカは叫ぶ

「あ!!リゲル!!これ、片付けなさいよ!!あああ、ちょっと待っててば!!」

大声をあげつつも、手の残存がかろうじて見えるほどの手際で片付けており、あっという間に綺麗になっていた。
自覚は無いがスピカは家事がとても丁寧かつスピディーなのだ。



•••



孤児院の庭では、リゲルを中心に妹弟たちが目をキラキラさせながら集まっていた。
リゲルはそんなワクワクを誇りに思いながら本を開いた。
しかし、そこには何も書かれていない。
「まっしろしろー」
「え、いや、違っ!」
「ほんってなにー」
「え、えっと、、」
「よくわかんなーい」
「あああ、ちょっと待てちょっと待て!!」
「つまんなーい」
「飽きたー!あっちで遊ぼう!(((そーしよー!!)))」
「あーー!ちょっとー!!」

1人残されたリゲルはシュンとしていた。
何も書かれていない事をすっかり忘れていたのだ。
「なんで忘れていたんだ?てか、この本ってそもそもなんだ??」

数刻ほど睨めっこしていたが何も変わらない。
その日はそのまま自室に帰ることにした。

その後も1週間は毎日本を見ては念をこめてみたり、話かけてみたり、水をかけたり、脅してみたり色々と試した。しかし、変化のない本は2週間、3週間と時の流れと共に部屋の隅っこの机の上に置きっぱの事が多くなり、ついには薄い埃の帽子を被っていた。

一月後のある日の夕方、リゲルは窓より気持ちよく干されてる洗濯物とその周りをゆらりと飛ぶ赤い蝶を眺めていた。突如そんな状況に空気を読むことを知らない雨が容赦無く洗濯物に降り注いだ。
リゲルは急いで洗濯係と共に取り入れた。
乾いているものそうでないものを分けていた。

「おわっ!!なんか出てきた!!」

リゲルは一瞬だった為ハッキリとは見えなかったが、小さく赤い何かがの隙間に入っていくのを見た。
「なんか赤い奴が椅子の下に入ったぞ!!」


「え!やだ!!そこお気に入りの場所なのに!しかも、得体のしれないものが家の中にいる何て信じられない!みんなで大捜索よ!」
なんだが楽しそうな事をしていると子どもたちが続々と集まってきた。そして事の成り行きを聞いて声を揃えて言う。

「探すぞー!!えいえいおーー!!!」

一致団結したリゲルとスピカをはじめとする子どもたちは皆で探すことに。
場所決めはじゃんけんで決めることになった。妹弟たちはリビングなどの共用スペースを。スピカとリゲルはそれぞれ子ども部屋の担当になった。



・・・



「ぜんっぜん、見つからない!!てかもう、私お腹すいた!!もう、探すのやめるわ。リゲル、後は任す!!」

「え、ちょっとあと、5部屋も残ってるんだけど!!!」

「私たちの部屋には居なかったからもういいわ〜、後は男子部屋でしょ!!なら、居ても居なくても大丈夫でしょ!!」

「いや、そう言う問題じゃ、、、」

言い終える前にスピカの姿は見えなくなった。

「あいつは腹が減ると適当になるのどうにかならないのか。。」
ため息と愚痴を吐いて少しすっきりし残りの部屋を遠目に見ていると、石でできている廊下に似つかわない赤細い線が見えた。
その線の先をみると赤く小さい何かが首をフリフリと小さく振っていた見えた。

(トカゲだったのか?!!)


「見つけた!!!」

その声に驚いたのかトカゲは近くの部屋に入って行った。

「あ!おい!ちょっとまて!!」

リゲルは追いかけ部屋に入る。見慣れた部屋だった。

ベットの下、棚の上、壁とトカゲは移動した。それに応じてリゲルも捕まえようと追いかけっこする。
そして、本の上にちょこんと乗ったトカゲはスッーと姿を消した。

「え、、、」

その直後本から火が出てきた。

「うぇぇあおぉぉぉぉぉー!!!やべー!!!!!!消さないと!!!!」
火はなぜかすぐ消え、本の中に戻って行った。
ゴクリと唾を飲み込むと手を伸ばした。
「あったかい。」
1ページ目をめくるとそこには「我の契約者となれ。」と書いてあった。
リゲルはハッした。目を擦っても消えないのである。
「え!!!!!すげぇぁあぇぇぇぇ!ついにか!!!」

後ろからドタバタと足音が聞こえた。
「何!!!どーしたの?!!」

急いでリゲルは後ろに本を隠した。
「あ、いや、、、、ってなんだスピカか」

「何それ、叫び声が聞こえたから何かあったらとかと思ったのに、さいてー!!」

「ああ、悪い悪い、そーゆー意味じゃなくて。これ、見てくれ!!文字が浮かび出て来たんだ!!」

「え???何言ってるの?何にも書かれてないじゃない。」

「え??」

「ご飯もうすぐだから、見つけるなら見つけて、早くこっちを手伝ってよね!」

そういってバタンと扉を閉めて出て行った。
スピカが出て行った後。再度本に目を落とすが、文字は消えていない。

(我と契約してくれマ、、ごほん、我と契約してくれ。)

リゲルしかいない空間に低い声が響く。

なんだか分からないが、気づいた時には口にしていた。
「契約するにはどうしたら良い?」

その言葉を発してから新しい文字が次々と本に浮かぶ。

(我の名を呟くと良いマン、、我の名を呟くと良い)

「名前?」

ふと頭にその名がよぎる。
人外であると理解したリゲルは畏敬の気持ちを込めて告げる。
「サラマンダーさん、契約お願いします!!」

次の瞬間、不器用にフカッフッカと宙に浮かんだ後。本から勢いよく炎が燃え始めた。しかし、不思議とその炎は暖かくリゲルは懐かしさを感じずにはいられなかった。
その火が小さくなると、そこには勇ましい姿の犬がいた。

(犬???)
拍子抜けしていると低い声が響く

「よろしくたのマンダー」

「、、、」
低く渋い声に似合わない語尾に驚愕したと同時に、同時に尊敬の文字が砕ける音が聞こえた気がした。

「きこえているマンダー?」

「あ、すまん。何であんた俺の名前何で知っているんだ? 俺、あんたに会ったことがあるか?」

「おおおお、覚えているのでマンダーな!!」

「あれは、、、いつマンダーか?忘れたマンダーなのだ。だか、あん時のお前はそれはそれはもう、、、感慨深いマンダー」

ぐすんと涙ぐむ表情で話す。

「いったい何の話?まぁ、いいや、で、ここにきてからこれまで1回も姿を現さわなかったのはなんだ?寝てたのか?」

「それはあの御方が、、、あ、いや、なんでもない。いや何でもないわけではないんだが、、、。まぁ、いつかは分かるであろう。その時まで待て。」


(あ、今普通に話した!!語尾なしでも話せるのかい!)
リゲルは大人なので口には出さなかった。

「まあ、それは良いとして、リゲルよ魔法はまだ使えるマンダーか?」

「魔法かぁ、全然使えない!小さい時一回使ったことがあるんだけど、、ってまだ??」

「うむ、やはり我が近くにいないと使えないマンダーか。よし、特訓だ。明日からはじめマンダー!」


「お、おう!!!それは嬉しいけど、どういうことだ?さっきから話がよく分からないんだけど。」

「うむ、今は何も言わず付いて来るマンダー。今度話すマンダーよ。」

納得いかないが、聞いて来るなオーラに負けてしまいいつか話してくれるなら良いかと考えを少し曲げてあげることにした。俺は偉いと何度もリゲルは心の中で繰り返し言い聞かせた。
 

・・・

 

ショウゴたちの姿が見えなくなった頃の書店は、もはや面影はなく草木も生えており一部の書物棚を残して一変していた。

異なる光がフワフワ浮いていたり、鳥が棚の上で鳴いていたり、リスが木の実を頬にため込んだり。

そんな場所には似合わないような声が響く。

その声を心地よく聞く精霊、眠たそうにしている動物、どこからか悪口も響いている。様々な感情が書店に溢れている。

そんな状況も知る間もなく、声の持ち主は続ける。



「さて、お腹も満たしただろう。キツネども会議だ。」

キツネはそれぞれの定位置に体を収めショウゴを見ている。

そして手足が青いキツネが最初に口を開く
「さっきの少年についてだよね。おい、引っ張るでない!赤いの!」

そんな青と赤色のキツネがじゃれ合っているのを見ながらショウゴは言う。
「あぁそうだ。あのリゲルという少年本の文字が読めないらしい。ここに辿り付けた時点でその辺りはどうにかなるもんじゃなかったのか?ショウ。なんか知っているか?」

今度は茶色キツネが短い首を傾げながら答える。
「うん、そのはずなんだけどね~。なんでだろうね~。さっきのはグレンのとこの精霊~?」

赤いキツネは口に加えていた青い尾を名残惜しそうに話すと、今度は自分の赤い尾を床にポンポンと軽く叩きながら答える。
「うん、そうだね。あの子は最近生まれた子だと思うぞ。名前は何だっけなぁ。えーーっと・・・忘れちゃったんだぞ。」

茶色が続ける。
「うーーん。あの子が意地悪して見えなくさせているとかかな~?でもあの子がリゲルに決めたんだもんね~。」


「「「うーーん」」」
赤・青・茶の三匹が考え込むとショウゴは口を開く。

「まぁ、自分と同じ系統の火の契約者だろう。その内見えるようになるだろう。」


「「「・・・・・(大丈夫だね)」」」


「まぁ、ショウゴが言うならそうなるな。」


「なんでだ?そういうものなのか?」

この会話の直後、少し離れた村での話だが、とある少年はこれまでどう足掻いても白紙だった本の文字がいきなり浮かび上がってきて驚いていた。
その事実をショウゴが一生気が付くことはないだろうが億が一でもそんな事にはなりませんようにと心からキツネたちは願った。


会議だと言っているのにいつまでも寝ているキツネと食べているキツネを見てショウゴは言う。

「そして、いつまで寝てるんだリク。おい起きろ。そしてお前もだジン、いつまで食べている。参加しろ。」

いつも以上にクリクリした目で手足が緑色のキツネは言う。
「ええ~ちゃんと聞いてたじゃーん。リゲルの話でしょう・・・(zzz)」

「この肉すんげえ美味しんだ!!!!これ残っているから食べていい!!!?」
と食い意地の張っているキツネのグレーの耳はソワソワと動いている。

「おい、寝るなリク。ジン、それはダメだ。それは俺の夜ご飯分だぞ。おいやめろ、よだれ垂らすな。」


・・・


収集が付かない二匹に気を取られているショウゴに隠れるように3匹のキツネがこそこそと何かを話し始める。

「おいお前たちは、あのリゲルとスピカの二人をどう見る?」
「そうだね、まずショウゴにとって悪い存在にはならないとおもうな~。」
「しかし、あの子らは人間だ。ショウゴの秘密がばれたらどうなるのか分からないのが怖い。」
「でも、ジョウゴはショウゴだぞ。」
「うん、どう考えてもバレることはないと思うよ~。」
「そうだね、なら味方にしちゃうんだぞ!」
「それがよいな。それなら我らの目にも届くしな。」
「「うん!決まり!!!」」


小さな重要会議が終わると同時に我らが主人の声が響く。

「はぁ、世話の焼けるキツネどもだ。リクそしてジン!特にお前たちは人に頼りすぎだ。それでも精霊を名乗るものだろう、威厳をもて。そしてお前らは俺が楽に生活出来るから契約しろと言っていただろう!!これではまるで子守ではないか。」




「「「「「・・・(守っているのは私たちなんだけどね~)」」」」」

と守護対象のショウゴに知られてはならない秘密を心で呟いた。


この後キツネたちは機嫌取りのために五匹で順番にショウゴの体をフニフニとマッサージしました。


・・・
 

「いらっしゃい」

店内に声が響く。その声は持ち主は直ぐに手元の本に目線を戻す。
本屋だと思ったリゲルは並んだ本を一冊ずつ興味深そうに見ながら店内をゆっくりと歩く。スピカはそんなリゲルの後に続き何冊ここにあるのだろうと1冊2冊・・・と数えていく。

リゲルはその中の一冊から目が離せず手に取った。なぜ惹かれるのか分からないまま、リゲルは表紙をめくった。
白紙だ。
パラパラとページをめくると風に遊ばれたように紙が鳴り、白い中に淡い文字が薄っすら滲み出してきた。それからどのくらい時間が経ったののだろうかいきなり我に返った。
無意識にぼーっとしていたのだ。どこまで読んだんっけと本に目を戻すと白紙のまま。
(なんだ気のせいか。)
リゲルは何だったんだろうと思いつつその本を元の位置にしっかり戻したことを確認した後、スピカの声がする方へ向かった。






・・・





リゲルは本に集中しているが、今、目を見張ることが起こった。
なんと店員らしき青年の手元にあった数冊の本が飛んで勝手に棚戻ってそれと入れ違いで本がこっちに飛んできたのだ。
目を奪われたスピカは青年に引き寄せられるように近づいた。
「ねぇ、今のは何!?本が動いたんだけど!!」
「・・・」
何か考えていそうな、いなさそうな顔で目も合わせようとしない。スピカは聞こえなかったのかなとさらに大きい声で言う。
「ねえ聞いてる??」
青年はゆっくりと顔をあげて口を開く。
「いきなり大声で何ですか。」

スピカは同じことを言うのはあまり好きじゃなので簡潔に言おうとした。
「本が飛んで向こう言ったと思ったら、次はまた違う本がこっちに飛んできたのよ、あれ何?」

悔しいけど簡潔に言えなかったので少し冷たく言ってやった。と謎の達成感を噛みしめながら青年が答えるのを待った。
「・・・●●●●」
「え??なんて言った?」
青年の言葉が上手く聞き取れなかった。
苦笑いした青年がまた何か言いかけた時、横からリゲルが歩いてきて言った。
「・・き「ねぇ、スピカ。ここの本なんだか変だよ!」
青年はまた黙り込んでリゲルを見た。
スピカは何か不満げにリゲルに言った。
「何が変なのよ。」
リゲルはなんでそんな怖い顔をしているだと思いながら口を動かす。
「本に何も書かれてないんだ。本ってこういうものだったけ?」
「そんなの知らないわよ!本なんて持っていないもの。」
「・・・確かにそうだな。」
神妙な顔をしてリゲルは言った。

リゲルとの会話が終わったのでスピカは今度こそさっきの事を聞こうと思ったが、目の前の青年は何か話しかけづらい雰囲気を纏っていたので諦めて出口の方へ体を向けて歩きだす。

その後にリゲルが続く。


出口へ向かっている途中、すぐ後ろでバタッと音がした。リゲルとスピカがギョッとした目で振り返るとそこには一冊の本が落ちていた。スピカは首を傾げていたが、リゲルはこの本の表紙に見覚えがあった。
「さっき戻した本だ。ちゃんとしまえてなかったみたいだ。店員さんごめんなさい!」





・・・





この店員とみられている青年は本を読み終えたのでいつものように本を机に置いて次の本を手に取ると、手元の読み終えた本と読みたい本を取り換えるため、右の小指でちょんちょんと机に触った。
そうして次の本の世界に入り込んでいる最中に大きい声がしたので頭を上げると先ほど店に来た少女が眉毛を眉間に寄せて立っていた。
「いきなり大声で何ですか。」
思っていることを口に出すと、少女は私が使った魔法に興味があるらしい。しかし少女の言い方が気に食わなかったので早口で言ってやろうと思い伝えた。
案の定上手く聞き取れなかったらしい。その姿を見て、年下の少女に向けて大人げない事をしてしまったと思ったので今後は普通に伝える。
しかし、その言葉は少女に届く前に青年に遮られてしまい、伝えるタイミングを逃してしまったのでこの二人が帰る前に何かしてあげようと決めた。

2人の会話からこの少女はスピカと言うらしい。そして、なぜか2人にはここ本の文字が見えないらしい。なぜだろうと考え込んでいた。
 

 

そこにバタッと音が聞こえてはっとした。
顔を上げると2人がいなかったので、2人を探すと出口の方に向かっていたらしい。2人の近くに本が落ちていた。この音かと理解すると同時に何故か謝罪された。
どうやらさっきまで青年が読んで本いたらしい。頭の中で小さな声が響いた。
この子にする。この子にする。この子にする。
どうやら少年が落とした訳ではなく自ら落ちたらしい。よっぽど少年の事が気に入ったみたいだ。
2人がここに辿り付いた時から何となく分かっていたが、火だ。相性が良いのは納得か。
「その子はあんたを気に入ったらしい。そこの少年。名前は?」
「リゲルです!」

その子との契約を解除しリゲルに設定したところで伝えた。
「リゲルか、タダでくれてやる。その子を頼んだぞ。」
「え??頼んだって何!?てか店員さんは名前教えてくれないの?」
懐かしい人と重ねながら人懐っこい少年だなと思い、長い付き合いになりそうだと思ったので自分の名前を伝える。
「ショウゴだ、よろしくなリゲル。そしてスピカも。」
スピカは何で自分の名前を知っているのかと驚いているようだが、2人はショウゴに大きい声で返してきた
「「よろしく!!」」
「いつでも待っている。また来てくれ。」
そう伝えると二人は笑顔で頷き、鈴の音を残して出て行った。


ここからだと気を引き締め、残りのコーヒーを飲み干し人差し指をくるりと回すと、カタカタという音と同時に5冊の本が落ちた。それらは床に付く直前でそれぞれキツネになった。


「あーー我慢した!狭すぎるよ!」
「おい!誰だ!しっぽ踏んだぞ!」
「あの子たち可愛かったねー」
「背中痒いかいてー!」
「お腹すいたーー」

などといってキツネがそれぞれが我先にと話始めるからうるさくてしょうがない。
うち一匹が短い脚で背中を搔きたいが届かないとドンくさいことをしていた。仕方がないなと思いそのドンくさいキツネを呼ぶ。
「ジンおいで。」
トコトコと歩いてきたのでしゃがんで背中を掻いてあげたらウルウルした目でこちらを見て喉の奥をキュルルルと可愛らしく鳴らす。

シャンシャンと音が聞こえそうな足取りで残りの4匹がショウゴの元に集まる。
順番に撫でながらショウゴは思う。

(スピカに悪いことをしてしまったのに謝罪の意を伝えられなかった。美味しいものが好きな気がするから次会った時に美味しものでもあげよう。)

しばらくしてキツネたちも気分が良くなったのを確認してショウゴは立ち上がる。
「さて、あのリゲルをどうしたものか。キツネどもいくぞ。」

「「「「「はーーい」」」」」

キツネたちはショウゴの後を従順についていき書店の奥の部屋へ向かって行った。

ショウゴたちが去った書店は色の違う無数の光がフワフワと飛び神秘的な光景を作っていた。

 

 

「魔法書店」の看板を入口に飾り、最後に入口の扉に鈴を付け、ようやく準備ができた。

この日は開店日なのだ。

「やっとだな。」

声を久しぶりに発した店主は朝の光に照らされると瞳の下に薄墨の影が浮かんでいた。

 

・・・

待てども客はこない。そんな状況に慣れる様子で最近お気に入りの魔法書をめくっていた。

(眩しいな。)

 

傾きかけた陽が小さな窓から差し込み、顔を照らしている。壁に掛かった時計に目を向けると、どうやらかなりの時間没頭していたらしい。そんなことを考えていると扉が小さく鳴り、柔らかな鈴の音が広がった。

 

(どうやら、初めてのお客が来たらしい)

扉の方に目をやると目をキラつかせた土まみれの少年と少女が店内を見回していた。

「いらっしゃい。」

そういうと店主は目線を手元に戻した。

 

 

・・・

 

俺はリゲル!この村の一番の魔法使いだ!俺様の力があれば大概のことは解決できる!

が口癖のリゲルは不安をかき消すように大声で

「安心しろ!この俺様はなんと3歳の時に手から火が出てきたんだぞ~!この森なんて屁でもないぜっ!」

ツンと鼻を空にあげて少年は言う。

「そんなこと言って私の前で一度も使ったことじゃない!」

疲れ切った表情で言葉を発している少女はリゲルの幼馴染である。

 

「スピカといるときは、たまたま発動しないんだよ!!」

言い訳というにはかなり苦しいものである。そんな様子に慣れたようにスピカは言う。

「どうするのよ。もうこの森に入って半日よ。お腹も空いた!!」

 

事の発端は、町で買い物をしていた時リゲルが急に「あの森の先に流れ星が落ちたのを見た」という訳の分からないことを言い出し、近くにいたスピカの腕を掴み走り始めたことだ。

(スピカは何も悪くない!)

と心で繰り返しているものの腕を掴まれた時、振りほどく事が出来たのにしなかったのは、スピカもまた好奇心旺盛であり「流れ星が落ちた」というリゲルの言葉に無意識に心を躍らせいたのだ。そう二人して流れ星の欠片を探しに来たのであったが、迷子になってしまったのだ。

2人であーでもない、こーでもないと騒ぎながら道を進んでいると、リゲルが急に立ち止まり真剣な眼差しで辺りを見渡した。

スピカは何か危険が迫っているのでは無いかとワクワクしながらも一応リゲルの後ろに隠れた。

リゲルが言った。

「なんか道がおかしくないか?」

そういうとスピカは何を言ってるのよとイライラしながらリゲルの見つめる先をみた。道なんてないし何もおかしくない。木々が生い茂っているだけ。だが、リゲルのそういう勘は何故か当たるのだ。スピカはそれが何故か悔しかったので、

「ほんとだ」と一言発した。

その瞬間、森の木々が一斉に風に揺れ、小さな鈴の音がかすかに響いた。

2人は何かに取り憑かれたように好奇心旺盛な表情を纏いつつ速足で森をかき分けて進んでいく。

気が付くと森は開けていて目の前には時代遅れの小さな木造の家がポツンと建っていた。

その家の入口には何か分からない文字が書いてある。入っていいのかと考える間もなく、リゲルは掌に汗を握りしめ高鳴る胸の音を抱えながらをゆっくりと扉を押す。

一度消えたはずの鈴の音が再び鳴り響いた。

 

そこには外観からは想像できぬほどの分厚い本が意思を宿すかのように堂々と並んでいた。その奥にはこの世では珍しい黒髪の青年が本を読んでいるのが見えた。

(なんて物語めいた光景なんだろう)

とリゲルとスピカは思った。

 

「いらっしゃい。」

初めて聞いた声はどこか懐かしく美しい響きを持っていた。

 

 

こんにちは、月詠ゆのです

「月詠の魔法書店」へようこそ。

 

ここは冒険や魔法に包まれたも物語を集める小さな書店です。

本棚には、私が紡ぐ創作の短編や、魔法・冒険にまつわる小話、日常のちょっと不思議な瞬間を綴ったページが並んでいます。

 

このブログを通じて読んでくださる皆さんが少しだけ魔法の世界に触れワクワクやドキドキを感じてもらえたら嬉しいです。

これから少しつづ並べていくので、どうぞゆっくり店内をめぐる気分で楽しんで頂けると嬉しいです!