お店を出た2人は一瞬時が止まっていた。その近くを町の人があっちこっちと行きかう。
「「あれ?」」
「俺たちさっきまで、本屋にいたよな??????」
「うん、ここって家の近くの公園よね。」
2人はお互いの顔を見合い揃って後ろを向くが、在るのは一本の大きい木のみ。
「・・・」
「勝手に移動した????」
「すげーーーーーー!!!!おもしれ―!!」
「今度ショウゴにやり方聞こうぜ!!」
「そだね。てかお腹空いた!!家にそろそろ帰ろう。遅くなっちゃたからばばに怒られる。」
「あ、やべー!!!!買い物頼まれてたの忘れてた!!!早くいくぞ!!」
「ああああ、もう!!!」
あーでもないこーでもないと言いながらも無事に買い物を終えた2人は家に着くと靴を脱ぎながら大きい声で言った
「「戻ったよーー!!」」
待ってましたと言わんばかりにバタバタと足音を立てて妹弟たちが寄ってくる。
「「「お兄、お姉お帰り!!」」」
いつもニコニコの妹弟たちを思いっきり撫でていると後ろからゆっくりと杖をつきながらいつもの白いエプロンをしたばばが歩いてきて言う。
「お二人さんお帰り。早かったね。空いていたのかい?」
「「?????」」
「さーーて、昼ご飯にするよ。皆、ごはんの準備してね。リゲルとスピカはこっちに来て手伝ってちょうだい。買ってきてもらった、イモを使って2人がすきなスープを作ってあげよう。」
スピカとリゲルは時の流れの違和感を感じた。しかし、魅力的な提案を目の前にしてその違和感が一瞬で消えた。
「よっしゃー!!!」
「ばばさいこう!!」
・・・
2人が住まうのは孤児院でその食堂は、にぎやかだ。大きい部屋には長い机がいくつも並んでおりそこには子どもたちでいっぱい。
そこに大きな鍋をもったスピカとリゲルが食堂に入るとと子どもたちは一斉に集まり列を作り、慣れた手取り足取りでそれぞれのお皿に注き、席に戻っていく。
リゲルとスピカの後ろから見守っていたばばは、皆んなが席についた事を確認し自分も腰を下ろす。
その合図を待っていたかのように、炊事当番のリーダー・レンジが両手を合わせる。すると子どもたちは声をそろえて――
「「「ぱちん!!!」」」
この孤児院だけに受け継がれてきた“食材への感謝と食事の始まりのしるし”
軽やかな声が食堂いっぱいに響くと、食卓がにぎやかに動き出した。
・・・
しばらくして食事を終えた妹弟たちは、食堂の端の窓辺に置いてあった茶色い物体をジーっと見ては投げたり舐めなりしていた。
「これなーーにー?」
「美味しいのかな?」
「これ、石かな?」
ちょうど本を取りにきたリゲルはそんな状況目の当たりにして冷や汗をかきながら言う。
「ああああ、ちょっとちょっとちょっと、やめろー!!それは俺のだぁ!」
帰ってきてからすぐ読もうと食堂に持ってきたのをリゲルは後悔しながらも同じ事は繰り返しさせまいと説明した。
「これは本って言うんだぜ!これは俺のだから見たい時は俺に言ってくれ!!分かったか?約束だ!!」
「うん!!やくそくー!」
「やくそく!やくそく!!」
ほっと胸を撫で下ろしたリゲルは提案した
「よし、外に行ってみんなで本読むか!!」
ぞろぞろと引き連れてリゲルが妹弟たちを連れるのをみてスピカは叫ぶ
「あ!!リゲル!!これ、片付けなさいよ!!あああ、ちょっと待っててば!!」
大声をあげつつも、手の残存がかろうじて見えるほどの手際で片付けており、あっという間に綺麗になっていた。
自覚は無いがスピカは家事がとても丁寧かつスピディーなのだ。
•••
孤児院の庭では、リゲルを中心に妹弟たちが目をキラキラさせながら集まっていた。
リゲルはそんなワクワクを誇りに思いながら本を開いた。
しかし、そこには何も書かれていない。
「まっしろしろー」
「え、いや、違っ!」
「ほんってなにー」
「え、えっと、、」
「よくわかんなーい」
「あああ、ちょっと待てちょっと待て!!」
「つまんなーい」
「飽きたー!あっちで遊ぼう!(((そーしよー!!)))」
「あーー!ちょっとー!!」
1人残されたリゲルはシュンとしていた。
何も書かれていない事をすっかり忘れていたのだ。
「なんで忘れていたんだ?てか、この本ってそもそもなんだ??」
数刻ほど睨めっこしていたが何も変わらない。
その日はそのまま自室に帰ることにした。
その後も1週間は毎日本を見ては念をこめてみたり、話かけてみたり、水をかけたり、脅してみたり色々と試した。しかし、変化のない本は2週間、3週間と時の流れと共に部屋の隅っこの机の上に置きっぱの事が多くなり、ついには薄い埃の帽子を被っていた。
一月後のある日の夕方、リゲルは窓より気持ちよく干されてる洗濯物とその周りをゆらりと飛ぶ赤い蝶を眺めていた。突如そんな状況に空気を読むことを知らない雨が容赦無く洗濯物に降り注いだ。
リゲルは急いで洗濯係と共に取り入れた。
乾いているものそうでないものを分けていた。
「おわっ!!なんか出てきた!!」
リゲルは一瞬だった為ハッキリとは見えなかったが、小さく赤い何かがの隙間に入っていくのを見た。
「なんか赤い奴が椅子の下に入ったぞ!!」
「え!やだ!!そこお気に入りの場所なのに!しかも、得体のしれないものが家の中にいる何て信じられない!みんなで大捜索よ!」
なんだが楽しそうな事をしていると子どもたちが続々と集まってきた。そして事の成り行きを聞いて声を揃えて言う。
「探すぞー!!えいえいおーー!!!」
一致団結したリゲルとスピカをはじめとする子どもたちは皆で探すことに。
場所決めはじゃんけんで決めることになった。妹弟たちはリビングなどの共用スペースを。スピカとリゲルはそれぞれ子ども部屋の担当になった。
・・・
「ぜんっぜん、見つからない!!てかもう、私お腹すいた!!もう、探すのやめるわ。リゲル、後は任す!!」
「え、ちょっとあと、5部屋も残ってるんだけど!!!」
「私たちの部屋には居なかったからもういいわ〜、後は男子部屋でしょ!!なら、居ても居なくても大丈夫でしょ!!」
「いや、そう言う問題じゃ、、、」
言い終える前にスピカの姿は見えなくなった。
「あいつは腹が減ると適当になるのどうにかならないのか。。」
ため息と愚痴を吐いて少しすっきりし残りの部屋を遠目に見ていると、石でできている廊下に似つかわない赤細い線が見えた。
その線の先をみると赤く小さい何かが首をフリフリと小さく振っていた見えた。
(トカゲだったのか?!!)
「見つけた!!!」
その声に驚いたのかトカゲは近くの部屋に入って行った。
「あ!おい!ちょっとまて!!」
リゲルは追いかけ部屋に入る。見慣れた部屋だった。
ベットの下、棚の上、壁とトカゲは移動した。それに応じてリゲルも捕まえようと追いかけっこする。
そして、本の上にちょこんと乗ったトカゲはスッーと姿を消した。
「え、、、」
その直後本から火が出てきた。
「うぇぇあおぉぉぉぉぉー!!!やべー!!!!!!消さないと!!!!」
火はなぜかすぐ消え、本の中に戻って行った。
ゴクリと唾を飲み込むと手を伸ばした。
「あったかい。」
1ページ目をめくるとそこには「我の契約者となれ。」と書いてあった。
リゲルはハッした。目を擦っても消えないのである。
「え!!!!!すげぇぁあぇぇぇぇ!ついにか!!!」
後ろからドタバタと足音が聞こえた。
「何!!!どーしたの?!!」
急いでリゲルは後ろに本を隠した。
「あ、いや、、、、ってなんだスピカか」
「何それ、叫び声が聞こえたから何かあったらとかと思ったのに、さいてー!!」
「ああ、悪い悪い、そーゆー意味じゃなくて。これ、見てくれ!!文字が浮かび出て来たんだ!!」
「え???何言ってるの?何にも書かれてないじゃない。」
「え??」
「ご飯もうすぐだから、見つけるなら見つけて、早くこっちを手伝ってよね!」
そういってバタンと扉を閉めて出て行った。
スピカが出て行った後。再度本に目を落とすが、文字は消えていない。
(我と契約してくれマ、、ごほん、我と契約してくれ。)
リゲルしかいない空間に低い声が響く。
なんだか分からないが、気づいた時には口にしていた。
「契約するにはどうしたら良い?」
その言葉を発してから新しい文字が次々と本に浮かぶ。
(我の名を呟くと良いマン、、我の名を呟くと良い)
「名前?」
ふと頭にその名がよぎる。
人外であると理解したリゲルは畏敬の気持ちを込めて告げる。
「サラマンダーさん、契約お願いします!!」
次の瞬間、不器用にフカッフッカと宙に浮かんだ後。本から勢いよく炎が燃え始めた。しかし、不思議とその炎は暖かくリゲルは懐かしさを感じずにはいられなかった。
その火が小さくなると、そこには勇ましい姿の犬がいた。
(犬???)
拍子抜けしていると低い声が響く
「よろしくたのマンダー」
「、、、」
低く渋い声に似合わない語尾に驚愕したと同時に、同時に尊敬の文字が砕ける音が聞こえた気がした。
「きこえているマンダー?」
「あ、すまん。何であんた俺の名前何で知っているんだ? 俺、あんたに会ったことがあるか?」
「おおおお、覚えているのでマンダーな!!」
「あれは、、、いつマンダーか?忘れたマンダーなのだ。だか、あん時のお前はそれはそれはもう、、、感慨深いマンダー」
ぐすんと涙ぐむ表情で話す。
「いったい何の話?まぁ、いいや、で、ここにきてからこれまで1回も姿を現さわなかったのはなんだ?寝てたのか?」
「それはあの御方が、、、あ、いや、なんでもない。いや何でもないわけではないんだが、、、。まぁ、いつかは分かるであろう。その時まで待て。」
(あ、今普通に話した!!語尾なしでも話せるのかい!)
リゲルは大人なので口には出さなかった。
「まあ、それは良いとして、リゲルよ魔法はまだ使えるマンダーか?」
「魔法かぁ、全然使えない!小さい時一回使ったことがあるんだけど、、ってまだ??」
「うむ、やはり我が近くにいないと使えないマンダーか。よし、特訓だ。明日からはじめマンダー!」
「お、おう!!!それは嬉しいけど、どういうことだ?さっきから話がよく分からないんだけど。」
「うむ、今は何も言わず付いて来るマンダー。今度話すマンダーよ。」
納得いかないが、聞いて来るなオーラに負けてしまいいつか話してくれるなら良いかと考えを少し曲げてあげることにした。俺は偉いと何度もリゲルは心の中で繰り返し言い聞かせた。